2009年 09月 25日
『それからはスープのことばかり考えて暮らした』(吉田篤弘)
これはとても気持ちの良い小説。
世間の片隅にひっそりと暮らす人々のささやかな想いを、そっと掬い上げて、瀟洒な器に盛り付けたような物語。
味付けは、これ以上薄くすることは出来ない程淡泊。
悪い人間は出てこない。
お腹が空いているときには向かないけれど、「最近、少し何かが足りないな」、と空を見上げながら感じる秋の昼下がりなんかに読むと、心にすとんと落ちてくる。
勿論寄席の切符を買うために並びながら、時々街を行く人々を眺めつつゆっくり読むのに、こんなに相応しい物語はない。