2009年 10月 14日
白洲次郎が語らなかったこと
戦後の米国による占領期を舞台に吉田茂のブレーンとして、憲法改正、日米安全保障条約の成立に向け暗躍する白洲は、今持て囃されているような単なるダンディな男ではなく、時に相当危ない裏社会(下山事件の黒幕とも言われるキヤノン機関との関わりもドラマで示唆されている)との繋がりを持ちながら、危うい均衡を保ちながら歩く男のえぐみと苦みを漂わせ色気が漂う。
妻の白洲正子もまた、青山二郎により徹底的に鍛えられ酒を煽り悔し涙を流す。中谷美紀の演技は壮絶であり、特に晩年の姿は大地に足を踏ん張るように立つ後ろ姿まで、白洲正子に成り切っている。
最後は白洲正子の描く西行の引用により、白洲次郎の生きざまが、俗を離れながら権力との微妙な位置関係を噂されてきた西行の人生と重ね合わされる。
西行が最後は俗を離れ、彼の望み通り桜の咲く季節に逝ったように、白洲次郎も権力に固執する吉田茂に潔い退陣を求め、それが入れられないと知り、公職を離れ百姓に戻ると語る。
晩年次郎は、占領期の極秘資料を自宅庭で焼き、何も語らぬまま逝った。
白洲正子も逝った今、僕らには二人の伝説だけが残された。
そろそろ綺麗事を拭い去り、闇に満ちた二人の姿が描かれても良い時期が来たようだ。
今回のドラマ「白洲次郎」三部作は、そのためのスタートラインだと思う。
おそらく二人はあちらの世界で「余計なことしやがって」と苦笑しているだろうが。
この二人は夫婦というくくりでは決して捉えられない
何というのか・・・・表現力のない私には言葉が見当たりません。
初夏の頃、鶴川の白洲邸を訪ねてみました。
憧れだけではあんな生き方は真似できないと思いました。
maruさんのこの記事は目からウロコが落ちるように
思わず、なるほどと膝をたたきました。
コメントありがとうございます。私も昨年武相荘に出かけ、その意志ある生き様を目の当たりにしました。あの書斎には正子の魂が今も宿っていると感じ、慄然としました。