2010年 04月 22日
今日読了した本(4月22日)
※20世紀が、戦争と虐殺と暴力の世紀だとするなら、21世紀はいまだその傷痕が癒えないにも関わらず(少なくとも日本においては)一見平穏な日常が惰性のように続いている。しかし水面下では、社会、政治、人の心は病から癒えずにもがいているようだ。
村上春樹はそうした現代に降ろされたカナリアのように、孤独な人々の閉塞感と暴力を描く。
『1Q84』は、その読みやすい外観とは事なり、難解な小説である。
このBook3でも、Book1.2で示された謎が全て解決するわけではない。謎は依然として謎のままだ。
しかし一つの大きなカタルシスが最後にやってくる。
それは、あえて一言で表現するならば、現代の社会を覆う暴力の前で人は無力だが、例えばそれは砂浜に落とした片耳のイヤリングを探すように困難な事であっても、この世界に美しい事は存在する、という作者の確信から来るのかも知れない。
その確信の根拠がどこから来るのかはわからない。しかし、少なくとも僕はそれを信じたいと思う。