2010年 05月 05日
『今、ここからすべての場所へ』(茂木健一郎)
しかし、その後あまりにメディアへの露出が多く、すっかり読まなくなってしまった。
先日友人のblogで紹介された『今、ここからすべての場所へ』という本は、久しぶりに初期の茂木健一郎の著者の雰囲気があり、購入してみた。
確かにこの本には、静謐で粘り強い思考の軌跡が記録されている良いエッセィだ。
例えばこんな文章。
「桜の花びらが風に吹かれて散り、やがて地上に落ちる。踏みつけられ、雨に打たれ、朽ち果てて土へと還っていく。そこにあるのが生命の喪失ではなく、生命と非生命を分け隔てなく包む時間というものの絶対的な作用であるとするならば、私たちは長い間随分と考え違いをしてきてしまったのではないか。」
ここには科学と文学の言葉や、論理と直感の幸福な融合がある。
できうるならば、しばらくメディアへの露出を控え、本来の仕事に帰り、この本のような仕事をしてほしいと願うのは僕だけではないはずだ。
今日の権太楼「百年目」はよかったです。