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『今、ここからすべての場所へ』(茂木健一郎)

かつて茂木健一郎の『脳とクオリア』を読み、この人は小林秀雄を継ぐ大変な知性であると感じた。
しかし、その後あまりにメディアへの露出が多く、すっかり読まなくなってしまった。

先日友人のblogで紹介された『今、ここからすべての場所へ』という本は、久しぶりに初期の茂木健一郎の著者の雰囲気があり、購入してみた。

確かにこの本には、静謐で粘り強い思考の軌跡が記録されている良いエッセィだ。

例えばこんな文章。

「桜の花びらが風に吹かれて散り、やがて地上に落ちる。踏みつけられ、雨に打たれ、朽ち果てて土へと還っていく。そこにあるのが生命の喪失ではなく、生命と非生命を分け隔てなく包む時間というものの絶対的な作用であるとするならば、私たちは長い間随分と考え違いをしてきてしまったのではないか。」

ここには科学と文学の言葉や、論理と直感の幸福な融合がある。

できうるならば、しばらくメディアへの露出を控え、本来の仕事に帰り、この本のような仕事をしてほしいと願うのは僕だけではないはずだ。
Commented by saheizi-inokori at 2010-05-05 22:25
私も「クオリア、、」は興奮して読んで後は、、何冊か買っただけで読んでいません。
今日の権太楼「百年目」はよかったです。
Commented by k_hankichi at 2010-05-06 07:39
この本、茂木さんの、今、ここ、生きる、時間、世界、というような観念の解釈力が、素晴らしいと想いました。なにかをつかみかけている。
by maru33340 | 2010-05-05 21:43 | お勧めの本 | Trackback | Comments(2)

音楽・本・映画などについての私的な感想


by maru33340
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