2011年 01月 10日
『倍音』(中村明一著、春秋社)
いろいろな所で話題となっているようで、書店の音楽書コーナーでは平積みになっている。
著者によると、我々の聞いている音は、ひとつの音として聞こえる場合でも、実は複数の音から成り立っており、さまざまな音がどのように含まれているかによって音色がつくられる。
その音色をつくっているのが「倍音」である。
そして「倍音」には「整数次倍音」と「非整数次倍音」がある。
「整数次倍音」は、声や弦楽器、管楽器の中に自然に含まれているもので、硬いギラギラとした音に聴こえる。
その効果として、荘厳な雰囲気や宗教性、カリスマ性を感じる。
お寺の鐘やクラシック音楽を聴いているときは、この「整数次倍音」を聴いている。
この音を声に含む代表的な歌手は、美空ひばりや郷ひろみと聞くとイメージしやすいかもしれない。
一方、「非整数次倍音」は、自然に含まれ、声にこの音が含まれると、親しみや重要性を感じる。
楽器では尺八、琵琶、三味線にこの音が含まれている。
歌手では、森進一、宇多田ヒカルの声にこの音が含まれている。
この本では理論的な考察とともに、現在の代表的な歌手や芸能人の声を、「倍音」で分類し、そのもたらす効果も具体的に分析しているのが非常に興味深い。
この本を読んでから、歌を聴いたり、映画やドラマでの役者の台詞を聞いたりすると、今まで以上に楽しむことが出来る。
話題になるのもうなづけます。