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小津安二郎の『浮草』

友人が送ってくれたDVDで、小津安二郎の映画『浮草』を観る。

随分以前にこの映画を観たけれど、異色の映画という記憶はあったけれど、改めて観て、こんなに凄い映画だったのか、と感服した。

いわゆる「小津」調を裏切るような、大映映画らしい華やかさ、宮川一夫のカメラの鋭さが、異化作用とでもいうべき緊張した美をこの映画に与えている。

豪雨の中、中村鴈治郎と京マチ子の道をはさんでの激しい罵倒のやりとりのシーンは、本当に凄い。

そして特筆すべきは、女優の艶めかしさ。

京マチ子のあだっぽい視線の強さ、若尾文子のこぼれるような色香に降参してしまう。

何度も映される、杉村春子の家の庭の花の赤さも妖しいまでに美しく、小津がカラー映画をとても楽しみながら撮影しているのが伝わってくるようだ。

ラストシーンもしみじみと胸に迫る、今観ても全く古さを感じさせない名作でした。
Commented by k_hankichi at 2012-02-12 10:13
そうなんです。京マチ子のあの視線のしっとりと濡れるようななまめかしさは凄いです。そして煙草をすーっつと手にして口にくわえるまでの動きの滑らかさは自分の心のモラリティを打ち崩すほどの域にあることを感じます。

京マチ子も、若尾文子も、その和服や浴衣の着こなしといったらこの上なく、美しいというのはどういうことを言うのかと問うひとが若しいればこの映画のこれらのシーンを見せることで、かならずや納得するのではないかと思うほどです。
Commented by maru33340 at 2012-02-12 13:47
この映画の二人の女優を見ていると、女性とは、なんと艶々となまめき、凄いほどしなやかで美しい生き物であることかと、谷崎のようにその足元にひれ伏したいような想いになり、実際に生涯そのようにして生きた谷崎は、なんと幸福な人生を送ったことであろうか。
by maru33340 | 2012-02-11 16:11 | 映画 | Trackback | Comments(2)

音楽・本・映画などについての私的な感想


by maru33340
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