2012年 05月 05日
『柔らかな犀の角 山崎努の読書日記』(文藝春秋社刊)を読む
午前中は自転車に乗り荒川河川敷きを走る。
風が心地よい。
自宅に戻り、ピリスの弾くシューベルトの「即興曲」を聴きながら、俳優山崎努の読書日記である『柔らかな犀の角』を読み始めた。
山崎努という役者は、硬質で反時代的で、とても好きな役者だったけれど、寡聞にして、これほどの読書家で文章家であるとは知らなかった。
取り上げる本には、その本を選んだ彼の個性がくっきりと刻印され、紹介は簡潔で的確だ。
随所に彼自身の演技論があり、興味が尽きない。
例えばこんな文章。
「演技する上で大切なのは、危なっかしくやることである。失敗を覚悟で、どうなってしまうかわからないところへ自分を追い込んで行く。それが大事。失敗は正直怖いが、そのリスクを背負わない安全運転的演技なんてなんの価値もない。危険を避けるのではなく安全を避けねばならない。実を言うと、演技には失敗も成功もない。失敗だって成立する。問題は、どんなことにこだわり、どれだけ自分を投げ出せたか、ということなのだ。」
その覚悟の潔さと無駄のない文章に、日々の生活で弛緩してしまった当方としては、慄然としてしまう。
名著だと思う。