2012年 07月 30日
片岡義男の『洋食屋から歩いて5分』(東京書籍)を愉しむ
洗い立ての白いシャツのように、余計なものはなく、すっきりとした印象が、彼の文章にはある。
この新しい『洋食屋から歩いて5分』というエッセイも、その例外ではない。
食べ物を巡るエッセイだけれど、片岡義男のことだから、もちろん「どこの何が旨い」というような話は出てこない。
主として、「食べ物・食べることを巡る記憶の物語」といった風情で、さらさらと気持ち良く読めて、このひどく暑い季節には最高の読書経験となる。
中に、ある女性と会うために、下北沢から十条まで電車に乗って向かうというエッセイがあり、これは僕の行動範囲に近くて、とても興味深く読んだ。
田中小実昌さんと新宿ゴールデン街を朝まで飲み歩くエッセイも(これは少し長編)楽しい。
良い本です。