2013年 06月 03日

池波正太郎と「資生堂パーラー」

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嵐山光三郎の『文士の料理店』(新潮文庫)の中は文士が愛したレストランを語りながら、作家の素顔を見る事が出来てとても面白い。

その中の、「池波正太郎と資生堂パーラー」という章にこんなエビソードが載っている。

池波正太郎は少年時代に、兜町の株式仲買店に小僧として勤めていた。
当時の月給は五円。
池波少年は、先輩に教えられて、当時七十銭したチキンライスを、使い走りでもらったチップをためて資生堂パーラーに食べに出かけた。

資生堂パーラーには池波少年より一つか二つ年下の坊主頭の少年給仕がいた。
白い制服に身をかためた少年給仕はぎこちなく注文をきいた。
二度目に行った時、少年給仕は「マカロニ・グラタンはいかがです?」とすすめた。
三度目は「今日は、ミート・コロッケがいいです。」とすすめた。
このようにして、足かけ三年ほど少年給仕山田君との交友が続き、ある年のクリスマスの日に池波少年は岩波文庫の『足ながおじさん』を買って「プレゼント」と言って渡した。
すかさず山田少年も小さな細長い包みを「ぼくも!」といってよこした。
テーブルの下で包みを開けてみると「にきびとり美顔水」が入っていた。

山田少年とは、その後水兵となった姿を一度見かけただけで音信不通となり、その行方はつかめなかったという...
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by maru33340 | 2013-06-03 10:31 | お勧めの本 | Trackback | Comments(6)
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Commented by Ich at 2013-06-03 14:18 x
面白くて笑ってしまいましたが、少しほろっとするお話ですね。
Commented by maru33340 at 2013-06-03 18:27
ちょっと泣けます(>_<)
Commented by saheizi-inokori at 2013-06-03 22:58
えらいもんですね。
私は役職についても資生堂パーラーに通うことなど雲の上でした^^。
仕事で行くのは別でしたが。
Commented by k_hankichi at 2013-06-04 05:41
お客さんの好みを十全に推察して、飽きさせない。そういう仕事ができる人は、素晴らしいです。
Commented by maru33340 at 2013-06-04 06:12
さへいじさん
おそらく池波少年にとっても、そのお店に行くには大変な決意で、他のものを削って通ったのでしょうね。
Commented by maru33340 at 2013-06-04 06:14
はんきちさん
まさにその頃は、プロの精神が隅々にまで行きわたっていたのかと・・・


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