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2013年 10月 04日

晩年の森有正

装丁家の栃折久美子は、室生犀星の小説「「火の魚」のヒロインのモデルで、何年か前にテレビドラマ化された時は、尾野真知子がその役を演じた。

そのドラマでの尾野が、影絵でオスカーワイルドの「幸福な王子」を上演するシーンは、とても美しい映像で今でも印象に残っているけれど、今日はそのモデルとなった栃折久美子について。

栃折は1967年に森有正と知り合い、1976年に森が亡くなるまで恋愛関係にあったことは良く知られている。

森はその著書の繊細で静謐なイメージとは違い、精悍で男性的な側面があり、その生涯に多くの女性との交流があった。

栃折が2003年75歳の時に出版した『森有正先生のこと』には、栃折と森との交流について、恋愛関係がほのかに感じられる程度に、さらりと描かれている。

しかし、ここに描かれた森は、どことなくユーモラスで、可愛げがありながら、わがままで、自分勝手で、金銭にはシビアな意外な側面を見せる。

肝心の部分にはあえて触れず遠巻きに描いているので、少し物足りない部分もあるけれど、晩年の森有正の姿が垣間見えて興味は尽きない。

しかし、やはり森自身の著書の持つ魅力には及ばないことは確かだ。

これから晩秋から冬に向かう季節に森のエッセイを読み返したくなった。

森有正先生のこと

栃折 久美子 / 筑摩書房


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by maru33340 | 2013-10-04 06:55 | お勧めの本 | Trackback(1) | Comments(6)
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Tracked from 新・はんきちのつぶやき at 2013-10-05 17:54
タイトル : 『森有正先生のこと』(栃折久美子著)
海老坂武さんが、新聞のコラムでこの書のこと、そしてこの著者のことを記していなければ、手に取ることはなかった。『森有正先生のこと』(栃折久美子、筑摩書房)。 このうつくしい背表紙は、著者である装丁家の栃折さんによる染色画であり、その青と沈殿していく勾玉が輝くような絵柄は、青色である必然があり、そしてそれは底知れぬ想いの深さ故のような気がする。 この書は、愛した人への想いの軌跡を辿りつくした日記の昇華でもあり、完全なる恋愛小説のようでもある。しかしながらそこには、森さんと栃折さんの心の間の細か...... more
Commented by k_hankichi at 2013-10-04 17:45
あの二人の結びつきは意外だった。年齢であるとか立場であるとかを越えて成り立つものがあるのだと思う。そういうものなのだ。
Commented by maru33340 at 2013-10-04 19:50
であるね。
Commented by およう at 2013-10-04 22:21 x
人間は何重人格を持って人とする・・・。我言(*^^)v
Commented by k_hankichi at 2013-10-05 17:52
森さんが栃折さんに出した手紙のなかに、ヴァレリーの詩のことを書いていた。

「湖に浮かべたボートをこぐように 人は後ろ向きに未来へ入っていく 目に映るのは過去の風景ばかり 明日の景色は誰も知らない」

いまその瞬間を決断して進んでいくだけなのだ、ということです。
Commented by maru33340 at 2013-10-05 21:02
おようさん
そうですね。
平野啓一郎も現代は「分人」の時代と語ってます。
Commented by maru33340 at 2013-10-05 21:04
はんきちさん
まさにそうなのだなあ。
人には未来は見えない、だから生きて行けるのかも知れないね。


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