2014年 06月 18日
言葉のさみしさ、佐藤文香の俳句のこと
作者は国文学者を父に持ち、俳句甲子園において「夕立の一粒源氏物語」の句で最優秀賞を得た。
その句の凛としたたたずまいは高校生のものではなく、自我の叫びも甘えも超えた一種異様なまでの落ち着きと完成度に驚く。
この句集は彼女の第一句集だけれど、どの頁を開いても、高い言語感覚と知性を感じると同時に、若くして「見るべきもののことは見つ」という境地にいるものの微かなかなしみが漂う。
例えばこんな四句。
「牧神の胴にひまわり枯れかかる」
「春日傘閉ぢてはじめの空あかるし」
「糊代をはみだしている薄暑光」
「かぎろひの熱を保てる映写機よ」
繰り返し読んでいると、その言葉の選び方の的確さ、句の姿の美しさが沁みてくるようだ。