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2015年 03月 02日

吉田健一の『汽車旅の酒』のこと

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昨日から出張で奈良に来ていて、そうなると宿は自然に京都になるので、鞄にはやはり吉田健一のエッセイが入っていなければ落ち着かない。

ちょうど中公文庫から、吉田健一の旅と酒をめぐるエッセイを集めて再編集した『汽車旅の酒』が出たばかりだったのは幸いだったから、読みながら新幹線で西に向かっているとそれが仕事であることをつい忘れそうになる。

例えばこんな文章。

「旅も同じことで、見知らない場所に行くのも楽しいものであり、その為に旅をするのだと考えられなくもないが、それとは別に、旅を少しばかりハシゴ酒の範囲を広くしたものと見ることも許されて、これは移動するのに掛ける時間が長い上に、着いた場所で飲む時間も長くてこれに景色や人情の変化が伴うから、この楽しみに浸りたければ、勝手を知った町から町へと、汽車もなるべく頭を悩まさない為に同じ時間のを選んで渡り歩くのに越したことはない。」

僕も京都に来る旅に訪れる路地裏の小さなカウンターだけのバーが一軒あり、そこでマスターとよもやま話をしていると、半年や一年ぶりという気がしなくて毎晩そこに通っているように思われ、そこには悠久の時間が流れているように感じるのは、確かに京都に来ることの大きな喜びの一つになっている。
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by maru33340 | 2015-03-02 09:16 | 未分類 | Trackback | Comments(3)
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Commented by およう at 2015-03-02 11:19 x
いいですねー、京都という街を深くご存知の貴殿にとって、まさに吉田健一と共通の世界を想い訪ねる姿は美を求める方々の哀愁となって漂ってきます。
Commented by k_hankichi at 2015-03-02 22:28
け、健一さん~! たおやかなる時間が流れております。
Commented by maru33340 at 2015-03-02 22:50
おようさん
そこに哀愁を感じていただき、嬉しく思います。
まさにそれが旅の眼目であります。
はんきちさん
旅のお供には(特に北に向かうとき)は、是非この一冊を鞄に入れておくに越したことはなくて、ただし途中駅でビイルを買いに行きたくなり、戻り損ねても責任を持てないのは何時ものことだと諦めてもらうしかない。


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