2015年 05月 17日
悲しきワルツ、シベリウスとシャルフベックのこと
今朝の「日経」で、フィンランドの画家ヘレン・シャルフベックのことが紹介されていた。
故国では有名なこの画家のことは、日本ではあまり知られておらず、僕も恥ずかしながらその名前を知らなかった。
シャルフベックは1862年から1946年まで生きた画家だから、シベリウスの生涯に重なる。
ちょうど友人の影響で、ここ数日シベリウスの音楽をまとめて聴いていたから、これは何かの縁なのだろう。
彼女の代表作「快復期」が発表された1888年頃は、フィンランドはナショナリズムの機運が急速に高まっていたころだから、パリでの名声とは裏腹に、彼女の繊細な絵画は当時故国ではあまり受け入れられなかったようだ。
その後彼女は故国で絵画の教師をしていたが、体調不良もあり、1912年頃からは自宅に引きこもり絵を描いていたらしい。
シベリウスもまた、若い日に「フィンランディア」で祖国の英雄になりながら、その作風は次第に晦渋になり、晩年は30年以上も作品を公に発表していない。
故国のナショナリズムの盛り上がりの影で、この二人の芸術家が内的な苦悩を抱え世の中から遠ざかっていったことを思うと、複雑な気持ちになる。
二人の肖像画に漂うどこか悲劇的な翳り(それは作品からも漂う)には、しかしまた孤独の中で瞑想する芸術家の矜持も感じられるのだ。