2017年 06月 11日
上原彩子のリストに驚愕したこと
プログラムはモーツァルトの2曲の幻想曲とピアノ・ソナタ14番とシューマンの幻想曲、最後はリストの《巡礼の年》から「ダンテを読んで―ソナタ風幻想曲―」という「幻想曲」をテーマにした独特のもの。
赤いドレスを着た上原彩子はいつものように少し顎を上げてちょっと気だるそうに登場(何となく往年の美空ひばりに雰囲気が似ている)し椅子に座ると直ぐに演奏を始める。
座席は前から3番目の左側だから演奏者の手元がはっきり見える。
深々と響く中低音、濁りの無い高音、ピアニシモからフォルテシモまでメリハリのある強靭なタッチに、彼女がやはり他のピアニストから一段上の境地に居ることを実感するも前半は「少し抑え気味かなあ」と感じていた。
ところが最後のリストになり演奏は一変した。
音は鋭く(ダンテを読んだからか、まるで悪魔と契約を結んだかのように)デモーニッシュで圧倒的な迫力(強い打弦の箇所は椅子から立ち上がったりして)のある演奏に、聴いていて椅子から転げ落ちそうになる。
会場の拍手に応えてアンコールの曲目「リストの《愛の歌》」と告げる声は何とも可愛らしい声で、演奏とのギャップが楽しい。
アンコールの2曲目はチャイコフスキーの《花のワルツ》。聴きなれたこの曲も上原彩子の手になると、まるでオーケストラの演奏のように華麗で色彩豊かな音楽に聴こえる。
大満足の演奏会でした。
彼女の凄さは録音に収まりきらないように思いますので。
これはやはら実感で生きる曲で、上原彩子にはリストが降臨していたようだ。