2017年 12月 01日
「雨の樹」のこと
昨夜、夜中に喉が渇き冷蔵庫からミネラルウォーターを取り出し飲んでいた時、ふいに「雨の木」という言葉が頭に浮かんだ。
おそらく随分昔に読んだ大江健三郎の小説の一節に「夜なかに驟雨があると、翌日は昼すぎまでその茂りの全体から滴をしたたらせて、雨を降らせるようだから「雨の木」と呼ばれている木がある」というような言葉があったから、水を貯えようとしている自分が「雨の木」のように思えたのかも知れない。
目が覚めてしまい、そういえば武満徹にその小説にインスパイアされた「雨の樹」という曲があったことを思い出し、高橋アキさんのピアノによる演奏を聴き始めた。
その音楽はとても美しく、今目の前で大きく傘を広げた樹から透明な雨が滴り落ちるのを見ているようで、生まれたばかりの音たちが僕の身体に沁み込んでくるような気がした。