2017年 12月 10日
『宇多田ヒカルの言葉』について
宇多田ヒカルの歌詞には少し不思議な所があると思ったのは「travelling」の中のこんな歌詞を聴いた時。
「どちらまで行かれます?」
ちょっとそこまで
「不景気で困ります
(閉めます)
ドアに注意」
普通こんな日常会話を限られた文字数の歌詞に入れないだろうし、この会話は無くても歌は成立する。
でも、この違和感が何となく味わいになっている。
先日、偶然彼女の新曲『あなた』のMVを見て、改めてその歌詞の不思議な深みを感じていたら、12月9日に『宇多田ヒカルの言葉』という本が出たばかりだと知った。
(また12月9日!)
この本では宇多田ヒカルのこれまで書いた全ての日本語詩を三期に分けている。
初期(1998-2001) 15歳~18歳
第二期(2001-2008) 18歳~25歳
第三期(2010-2017) 27歳~34歳
彼女はそれぞれの時期についてこんな風に書く。
初期は「自分の無意識にあるものを表面に救い上げる行為」を無意識にしていた。それを意識的に行うようになり、すくいあげるというより潜りに行くようになったのが第二期で、表現の密度も増して物書きとして新しい段階に入った手応えがあった。第三期では、活動休止とともに一個人としての止まっていた時計が動きだし、自らに課していたさまざまな検閲を取り払うことで、表現の幅も広がり、それまでになく己をさらけ出すような作品もそれまでになくフィクション性の高い作品も登場する。
自らの音楽についてこんなに意識的に見ている宇多田ヒカルという人、やはりただ者ではない。