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2018年 01月 04日

その音の響きが時を超え記憶を呼び覚ます

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昨年の暮れ、何となくフランス語の響きが聴きたくなり中古レコードショップでフランスオペラのコーナーをぼんやり眺めていた僕の目にそのCDの背中に書かれた手書きの文字は鮮烈に飛び込んで来た。

◆セルジュ・ボド指揮「ペレアスとメリザンド」(ドビュッシー)

僕は「あっ」と声をあげそのCDを手に取る。
正直、ジャケットはまるで中学校の文化祭の絵の展示のために書かれた絵のようで、まるでいけていない。

しかしオーケストラはリヨン管弦楽団で録音は1978年。

このオペラが録音された翌年1979年4月21日(土)、僕は日比谷公会堂でセルジュ・ボド指揮リヨン管弦楽団による演奏会を聴く。

曲目は次のオール・ラヴェルプログラム。
・スペイン狂詩曲
・組曲“マ・メール・ロア”
・道化師の朝の歌
・ダフニスとクロエ”組曲第2番
(友人h君のブログの記載による)

素晴らしい経験だった。

すべての音はまるで穏やかな春霞のように淡くたゆたいながら陽炎のように揺れ、日比谷公会堂の空気は魔術のようにフランス音楽のエスプリに染められた…

それまでマーラーの音楽の呪縛に閉じ込められ自我の壁の中で窒息しそうになっていた僕は、その日の演奏によってフランス音楽という甘い大気の中に解き放たれたようだった。

演奏が終わると僕は立ち上がり夢中で「ブラヴォー!」と声をあげた。
ボドは僕の方を見て微笑みながら何度も頷いてくれたように見えた…

その演奏会から39年後、冬季休暇の最終日、部屋でセルジュ・ボドによる「ペレアスとメリザンド」を聴き始めたとたん、あの春の夜、日比谷公会堂を染めた春霞が部屋中に立ち込め陶然となった。

その音の響きは時を超え二十歳の頃の僕の記憶を呼び覚ました。

久しくその名を聞くことのないセルジュ・ボドは今年90歳。

僕はあの日以来ずっとあなたの名前を忘れることはありません。


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by maru33340 | 2018-01-04 16:08 | お勧めの本 | Trackback | Comments(6)
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Commented by k_hankichi at 2018-01-04 20:38
僕はmaruさんらと共に日比谷公会堂の4/24のプログラムBを聴いたときの感銘をいまでも鮮やかに覚えています。サン=サーンスの交響曲第三番、ドビュッシーの牧神、交響詩「海」。
maruさんは、同じ月に別のプログラムも聴いたはずで、それは4/23の神奈川県民ホールでのプログラムC(フォーレのぺレアス、ストラヴィンスキーの火の鳥、ベルリオーズの幻想)か、4/21の日比谷公会堂でのプログラムA(ラヴェルのスペイン狂詩曲、マ・メール・ロア、ダフニスとクロエ組曲第2番)。いずれにせよ稀有な機会でした。

僕のそのときのノートには次のように書いてあった。
“日本のオケにこんな弦の張り、金管の明るさ輝かしさと音量はない。とにかく良かった。ボドの指揮は極めて美しく、わかりやすい。そして弦をとてもフランス的に鳴らしてくれた。どういうことかというと、音がはじまる時にスーッと入り、音の切れるときもスーッと終わる。ふわっとした感じがあるのだ。”
Commented by maru33340 at 2018-01-04 20:43
そう4月21日の日比谷公会堂での演奏があまりに素晴らしかったから、23日と24日の演奏も聴いたはず。
まるで昨日のことのようにその響きが甦るよ。
Commented by saheizi-inokori at 2018-01-04 22:18
そういう思い出が私にはあるだろうか。
Commented by Oyo- at 2018-01-06 08:30 x
何かこちらのタイトル、カズオ・イシグロ的(*^_^*)
Commented by maru33340 at 2018-01-06 08:52
さへいじさん
さへいじさんの日々のブログには記憶が満ちあふれているように思います(^^;
Commented by maru33340 at 2018-01-06 08:53
おようさん
無意識の内に意識してるみたいな(^^;


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