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2011年 09月 27日 ( 1 )


2011年 09月 27日

『硝子戸の中』の心境

昨日、漱石の生誕と終焉の地を訪ねた後から、大正4年に朝日新聞に掲載された漱石の随筆『硝子戸の中』を読み始め、昨夜読了した。
(この随筆は「漱石山房」で書かれた。)

この時期の漱石は逝去する前年ながら、胃腸と神経の不調は小康状態にあり、この随筆には穏やかで安らいだ雰囲気が漂う。

最終回は、次のような文章で終わる。

「まだ鶯が庭で時々鳴く。春風が折々思い出したように九花蘭の葉を揺かしに来る。猫がどこかで痛く噛まれた米噛を日に曝して、あたたかそうに眠っている。先刻まで庭で護謨風船を揚げて騒いでいた小供たちは、みんな連れ立って活動写真へ行ってしまった。家も心もひっそりとしたうちに、私は硝子戸を開け放って、静かな春の光に包まれながら、恍惚とこの稿を書き終わるのである。そうした後で、私はちょっと肱を曲げて、この縁側に一眠り眠るつもりである。」

ここには、春の穏やかな光の中で、束の間の身心の安らぎの中に微睡む漱石の姿があり、それを読むものの心に、ささやかな幸福感を与えてくれるようだ。
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by maru33340 | 2011-09-27 08:44 | お勧めの本 | Trackback | Comments(7)