新・クラシック音楽と本さえあれば

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カテゴリ:お勧めの本( 1378 )


2017年 10月 18日

そうだ、抒情小曲集を聴こう

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学生時代にM君という友人がいた。

とにかく渋好みで、小津安二郎の映画や堀辰雄の小説、円空仏を愛し、休日は奈良や伊豆修善寺を散策したり歌舞伎や能を観に行くという。
(そういうと何だか一時代前の繊細な文学青年のようだけど、本人はとてもマイペースでワガママな男で、僕らは秘かに彼の事を「エゴの木」と呼んでいた)

そんな彼が「是非聴くように」と強く推奨していたのがエミール・ギレリスの弾くグリーグの「抒情小曲集」というピアノ曲のアルバムで、先日CDを整理していて見つけて食事の後片付けをしながら久しぶりに聴き始めた。

これは確かに繊細な美しいアルバムで、深夜小さな音で聴いていると北欧のひんやりとした空気と清冽な水を想い出す。
(行ったことないけど…)

これからの季節に聴くのにふさわしいアルバムです。
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by maru33340 | 2017-10-18 20:39 | お勧めの本 | Trackback | Comments(1)
2017年 10月 16日

冷たい雨とリュートの音楽と

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寒い朝。

今週はしばらく雨で気温の低い日が続くよう。

少し静かな音楽を聴きたくなり、バッハと同時代にドレスデンで宮廷付きリュート奏者・作曲家として活躍したレオポルド・ヴァイス(1686-1750)の作品を聴き始めた。

初めて聴く作品なのにどこか懐かしさを感じさせるヴァイスの作品の持つメランコリーな旋律を、スペインのリュート奏者ホセ・ミゲル・モレーノが静かに語りかけるように演奏していて、まるで柔らかな雨のように心に染みいってくる。
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by maru33340 | 2017-10-16 07:55 | お勧めの本 | Trackback | Comments(3)
2017年 10月 08日

岡田茉莉子と伊藤野枝と

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友人の薦めで女優岡田茉莉子の自伝『女優 岡田茉莉子』を読み、彼女が大変な文章家だと知る。
その女優としてのプライド、気性の激しさは潔い程だ。

そんな彼女が夫である映画監督吉田喜重の作品『エロス+虐殺』について語るのを読みながら、この作品のモデルである大正時代のアナキスト伊藤野枝という人物に興味を持ち、昨年発売され話題になった栗原康の『村に火をつけ、白痴になれ 伊藤野枝伝』を読む。

栗原康の独特の文章は好き嫌いが分かれるかも知れないけれど、僕はその文体のリズムが気に入り一晩で一気に読了した。

伊藤野枝は大正12年関東大震災の直後に大杉栄と共に甘粕正彦率いる憲兵隊に拘束され虐殺された。
その時彼女は28歳。

わがままに、自らの信じるままに誰にもその心を支配されることなく生きたその人生もまた激しく潔く心打たれるものがあった。

吉田喜重は岡田茉莉子と伊藤野枝の二人の女性に相い通じるものがあることを見抜いていたのだろう。
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by maru33340 | 2017-10-08 21:06 | お勧めの本 | Trackback | Comments(3)
2017年 10月 05日

透明感と哀しみと

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ルクセンブルク生まれのフランチェスコ・トリスターノというピアニストが気に入っている、

彼のレパートリーは独特で、バッハからジョン・ケージ等の現代音楽と共に、彼自身の作曲によるダンスミュージックも演奏する。
その音楽は切れ味鋭く透明感があり美しい。

そんな彼の新しいアルバム「PIANO CIRCLE SONGS」はトリスターノ自身の作曲によるオリジナル曲を集めたアルバムだけれど、今までのダンスミュージックとは違い、とても静かで瞑想的な美しさと哀しみに満ちていて、集中して聴いても本を読みながらBGMとして聴いても(録音の良さもあり)まるで澄んだ清冽な水を飲みほすような心地よい味わいがある。

新たな愛聴盤になりました。
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by maru33340 | 2017-10-05 21:43 | お勧めの本 | Trackback | Comments(4)
2017年 10月 03日

ロシア的な、あまりにロシア的な

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先日読了したロシアのピアニスト、イリーナ・メジューエワの著書『ピアノの名曲』の中では、バッハやベートーヴェン、シューベルトの名曲について演奏者の立場から平明に丁寧に語られ、目から何枚もの鱗が落ちるような思いだったけれど、彼女がこの本で最も熱く語っているのはムソルグスキーの「展覧会の絵」について。

彼女は「ムソルグスキーはちょっとベートーヴェンに近い。倫理性というか、ある種の理想主義、精神主義みたいなものによって、死を乗り越えていく側面がある。(中略)死をも含めた肯定、全てがその中にある、といったスケールの大きさは、ロシア的だと思います」と語り「この曲の中にロシアの全てが凝縮されている」とまで言う。

そんな彼女の推奨するやはりロシアのピアニスト、ヴァレリー・アフェナシェフによる(ジャケットが怖い!)演奏を昨夜聴いて「なるほどこれはドストエフスキーにも匹敵するような精神的で巨大な音楽だ」と改めて実感した。

一生の内に何度も聴く音楽ではないかも知れないけれど、時にその深淵に触れる事は大切なことかも知れないなあ(^^;
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by maru33340 | 2017-10-03 06:57 | お勧めの本 | Trackback | Comments(2)
2017年 09月 28日

シュナーベルのベートーヴェン/ピアノ・ソナタ全集

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先日読んだロシアのピアニスト、イリーナ・メジューエワの本の中では、取り上げた名曲それぞれについて彼女のお薦めの演奏があげられていてとても興味深い。
ベートーヴェンのピアノ・ソナタ14番「月光」については往年の名ピアニスト、アルトゥール・シュナーベルの演奏が取り上げられこんな風に語られる。

「ロシア人にとってベートーヴェンのソナタといえば、まずシュナーベルです。もっとも古典的です。真の意味でのヴィルティオーゾで、すべての声部のバランス、ポリフォニー、ハーモニーの見せ方が素晴らしい。シンプルで見事です。本当の技術とはこういうものだと思います」

ここまで言われるとどうしても聴きたくなり、ベートーヴェンのピアノ・ソナタ全集として1930年代に世界で最初に発表されたシュナーベルによる演奏をAmazonで頼んでしまった。

これから衿を正して少しずつ聴いていきます。
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by maru33340 | 2017-09-28 07:12 | お勧めの本 | Trackback | Comments(4)
2017年 09月 24日

名教師としてのイリーナ・メジューエワ

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ロシアに生まれ、今は日本に住むピアニストのイリーナ・メジューエワによるこの新刊には驚いた。

現役ピアニストがそのレパートリーとしている名曲について演奏者の立場から丁寧に語る本はありそうでなかなかなかったように思う。

バッハの「ゴルトベルク変奏曲」、シューベルトのピアノ・ソナタ21番、ベートーヴェンのピアノ・ソナタ32番等についての彼女の説明は楽譜を交えて詳しく分かりやすく、その曲の構造や演奏上の難しさまで教えてくれるから、聴きなれた曲も改めて聴き直したくなる。

シューベルトのピアノ・ソナタ21番について彼女はこんな風に語る。

「(この曲は)時間がとまっているような感じがあったり、ダイナミクスの上でも、ピアノ、ピアニッシモなど弱音が多く使われていて、どこか超越的な雰囲気を持っている。でも、その裏には強い論理がある。超越的な内容を論理的にやっているのは面白いですね」

彼女の説明でこの曲の構造を知って改めて聴き直してみると、今までただ美しくて怖くてでも少し長いかなと思っていたこの曲が、論理的に構成された(ベートーヴェンの後期のピアノ・ソナタに匹敵するような)壮大な名曲であることがとても良くわかるのだ。
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by maru33340 | 2017-09-24 05:56 | お勧めの本 | Trackback | Comments(4)
2017年 09月 21日

漂泊に誘う秋の雲

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朝起きてベランダに出れば空気が肌寒い。

空高く広がる秋の雲を眺めていると『奥の細道』冒頭の

「いずれの年よりか 片雲の風にさそはれて 漂泊の思ひやまず」

という言葉を思い出し、行き先も定めぬ旅に一人出たくなってくる。

此道や 行人なしに 秋の暮 芭蕉
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by maru33340 | 2017-09-21 07:23 | お勧めの本 | Trackback | Comments(6)
2017年 09月 20日

武満徹の「小さな空」

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台風一過の昨日の夕方。

青空に浮かぶ羊のような雲をぼんやり眺めていたら、ふいに武満徹の「小さな空」という歌を思い出した。

「青空見たら 綿のような雲が 悲しみを乗せて 飛んでいった」

という武満自身の歌詞によるこの曲を聴いていると、いつも懐かしさで胸が一杯になり泣きそうな気持ちになってしまう。

僕が初めてこの曲を知った波多野睦美さんの歌声は聴くものを優しく包み込んでくれるよう。

https://youtu.be/lIjTiVHEO1g

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by maru33340 | 2017-09-20 06:03 | お勧めの本 | Trackback | Comments(4)
2017年 09月 18日

ごめんね、エミール

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夜半、台風が来た。

激しい暴風雨が僕のいるマンション角部屋をガタガタと揺らす音で目覚め、何か台風に負けない音楽を聴きたくなり、久しぶりにエミール・ギレリスの弾くベートーヴェンのピアノ・ソナタを聴き始めた。

エミール・ギレリスのベートーヴェンは、真っ直ぐで、おおらかで、小賢しい計算などない、深々とした情感に溢れた大きな大きなベートーヴェンで、本当に信頼できる大人の音楽だと改めて痛感。
(一国の指導者もまたかくありたいなどと余計な事も思ったりして…)

今まで持っていながら何となくギレリスのベートーヴェン集を聴いていなかったのは、ギレリスはバリバリ弾くピアニストというイメージに支配されていたから。

確かにそのタッチは力強く明晰だけど、決して力だけでグイグイ押しまくるというタイプの演奏ではなく、響きは濁りなく美しく、知的で繊細さもある。

長くギレリスというピアニストを誤解していました。

ごめんね、エミール。
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by maru33340 | 2017-09-18 05:38 | お勧めの本 | Trackback | Comments(4)