カテゴリ:映画( 66 )


2014年 03月 17日

ようやっと観た映画『ハンナ・アーレント』と「凡庸の罪」について

封切り前から観たいと思っていた映画『ハンナ・アーレント』を、今日ようやく浜松で観た。

多くの人がレビューで、映画の最後の7分間のスピーチについて書いていて、やはり今日そのシーンを観て鳥肌が立つ思いだった。

ナチスの要人アイヒマンの裁判傍聴記録において、アーレントは、アイヒマン個人は、特別な悪魔ではなく、無思考のまま組織の命令に従う「凡庸の罪」こそ本当の問題であると書く。

このアーレントの主張は、周囲の人々からは、アイヒマンを擁護したものとして反発される。

またアーレントは、ユダヤ人の一部にナチスに加担した者がいることも指摘し、ユダヤ社会からも非難される。

それでも、彼女は「思考すること」を止めず、「思考することをやめること」こそがやがて「人類の罪」に加担することに繋がると主張する。

振り返って、組織に生きる僕らは、いけないと知りながら、それは間違っていいると思いながら、その場の空気に支配されて、自ら思考することをやめてしまってはいないか、言わなければならないことを言わずに済ませていないかと自問する時、忸怩たる思いにかられてしまう。

作られたヒーロー、ヒロインの物語に熱狂し、その仮面が剥がれれば、手のひらを返したように鞭打つ最近の一連の社会現象を観ていると、この映画の問いかける問題の射程は、深く広く、繰り返しそこに立ち戻らなければならないと改めて痛感するのだ。


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by maru33340 | 2014-03-17 16:49 | 映画 | Trackback | Comments(4)
2013年 12月 24日

映画『舟を編む』のこと

今日はシフト休。

午前中プチ大掃除を済ませた後買い物に。

帰りに少し職場に顔を出した後帰宅し、夕方届いていたDVD 『舟を編む』を観る。

三浦しをん原作による、辞書編纂をテーマにした映画で、イブの夕方一人で観るにはあまりに渋い内容だけれど、内容はとても素晴らしかった。

あくまで淡々と、これが映画になるのかしらというストーリーながら、一人一人の人物が丁寧に描かれているし、配役も絶妙だった。

主役の松田龍平は、「あまちゃん」のミズタクより一層テンションが低いのに、辞書編纂にかける秘めた想いが観るものに伝わり、宮崎あおいもまた気丈で繊細な味わいが素晴らしい。
オダギリジョーの軽みの演技も良く、初めて役者としての彼の凄みを知った。

そして何より加藤剛演じる辞書編纂顧問の演技が素晴らしく、加藤剛という人の誠実な人柄が滲み出るようで、胸を打たれた。

物語のラストでは、特別な事は何も起こらないのに涙が止まらなかった。

何かと心騒ぐ事の多かった今年の暮れに、静かに来し方行く末を想う事が出来た。

こんなイブも良いもんです。
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by maru33340 | 2013-12-24 19:59 | 映画 | Trackback | Comments(5)
2013年 10月 26日

映画「ハンナ・アーレント」が語ること

今日から岩波ホールで上映予定の映画「ハンナ・アーレント」の予告映像を見た。

世界から尊敬されていた哲学者であるハンナ・アーレントが、ナチス戦犯アイヒマンの裁判傍聴記事を書くことによって、世界中から非難されることになる。

それは、彼女がアイヒマンの犯罪を「平凡な男が命令に従っただけの行為」と書いたことによる。

「本当の悪は平凡な人が行う悪です。私はこれを悪の凡庸さと呼びます。」

というハンナの言葉は、今組織に生きる僕たちの心に突き刺さる。

思考を停止し、組織の命令に従うことが、結果的に巨大な不正や悪を産むという事例を僕らは嫌というほど見てきているはずだ。

本当に恐ろしいのは自分自身で考えることをやめてしまうこと。
そして、思考していないということにさえ気づかなくなること。

この映画は見なくてはいけない。


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by maru33340 | 2013-10-26 07:16 | 映画 | Trackback | Comments(6)
2013年 08月 07日

必見の名画『25年目の四重奏』のこと

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今日は代休。

昨日一昨日と広島出張で、明日からまた二日間の東京出張。
体調も優れず、激しい暑さでもあり、家でゆっくりしようかとも思ったけれど、静岡で映画『25年目の四重奏』が上映中であることを思い出した。
今日を逃したらおそらく劇場で観ることは難しそうなので、勇気をふりしぼって観に行った。

友人も推奨していた通り、これはclassic音楽ファンのみならず全ての映画好き必見の名画でした。
結成25周年を迎えた弦楽四重奏団のフーガが演奏会の曲目に選んだのは、ベートーヴェンの弦楽四重奏曲の傑作である14番。
この曲は、全7楽章を途中で休むことなく演奏しなければならない。
当然ながら、途中でチューニングすることは不可能だから、演奏者には極度の集中力が求められ、例え音程が狂ってしまっても最後まで演奏を続けなければならない。
最後の演奏会を前に楽団の父親的存在であるチェリストのピーターが病により今期限りで引退を決めた。
これをきっかけに楽団員の人間関係にも不協和音が生まれ、一時は演奏会の開催も危ぶまれる。
そんな中で、最後の演奏会が始まる...

ベートーヴェンの音楽とストーリーは絶妙にリンクし、音楽・カメラ・テンポ全てが絶妙のバランスで絡み合いあり、一点の隙もない。

ピーターを演じる『ディア・ハンター』で有名なクリストファー・ウォーケンは、音楽の使徒とでも言うべき真摯な老チェリストを素晴らしい演技で演じ(カザルスとの思い出を語るシーンが凄い!)、他の三人のメンバーも非常に良い。

まだ未見の方のために語ることは控えるけれど、演奏会の最終楽章で起こるシーンには、本当に胸を打打たれ、涙が止まらなかった。

あんまり良い映画だったので、何十年ぶりに映画のパンフレットを買ったら、おまけにベートーヴェンの弦楽四重奏第1楽章冒頭部分の楽譜がついてきて、なんだかとても嬉しかった。
ちょっとしゃれてますね。

広島を訪ね錯綜する想いに心乱れ、この所の日本の社会状況にもくさくさして少し絶望的な気分でいたけれどいたけれど、「そうだ、まだ音楽が、映画があるじゃないか。」と、微かな希望に満たされ映画館を後にしたのでした。

追記

この映画の最後近く、アンネ・ゾフィー・フォン・オッターが歌う素晴らしいシーンで流れる曲は、コルンゴルドのオペラ≪死の都≫作品12より「マリエッタの歌」であるとわかった。
実に素晴らしい歌声である。
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by maru33340 | 2013-08-07 20:26 | 映画 | Trackback | Comments(6)
2013年 07月 31日

黒沢明の映画『どですかでん』と、何故か「あまちゃん」の共通点

先日の友人のブログに「ごてすか」というイメージ豊かな造語(?)を駆使する母親の話がアップされていた。

その言葉の響きから僕は、黒沢明の映画『どですかでん』(1970年)を思い出した。

黒沢としては異色の物語で、こんなストーリーである。

とある郊外の街の貧しい地域。
知的障害のある六ちゃん(頭師佳孝)は、毎日近所に出かけては、他人には見えない電車を運転している。
内職職人の良太郎(三波伸介)は、妻が浮気性なため、子供をたくさん背負っている。
穏やかな性格の島さん(伴淳三郎)は、会社の同僚を家に連れてくるが、無愛想な妻の文句を言われて激怒する。
乞食の父親(三谷昇)は、いつも息子に夢想話を語っている。
平さんは(芥川比左志)物静かで謎の多い人物。
街の長老・たんばさん(渡辺篤)は、家に押し入った泥棒に金を恵む。

ここに暮らす人たちは、変わった人ばかりである。六ちゃんはその中で電車を走らせ、日は暮れてゆく。


こうしてストーリーを紹介していても実に変な話である。

この作品の前の黒沢作品は三船敏郎の『赤ひげ』であり、この『どですかでん』は興業的にも失敗し、以降10年間黒沢は日本映画界から遠ざかることになる・・・

とここまで書きながら、僕は実はこの映画を観ていないことにふいに気がついた。

「あまちゃん」の脚本家である宮藤官九郎が、「全ての映画の中でこの作品が一番好き」と語っていることも、少し調べて初めて知った。

そういえば、「あまちゃん」もまた、ストーリーだけを書けば「少し変わった人たちの繰り広げるヒューマンコメディー」と言えるわけで、もしかすると「あまちゃん」の原点は『どですかでん』なんじゃないか、という気がしてきた。

じぇ、じぇ!
『どですかでん』をTSUTAYAで借りてきて観なくちゃ。
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by maru33340 | 2013-07-31 21:32 | 映画 | Trackback | Comments(7)
2012年 05月 26日

パリには雨が良く似合う

ウッディー・アレンの新作『ミッドナイト・イン・パリ』を観る。

これは文句なしに楽しめる映画。

パリに来たハリウッドの売れっ子脚本家ギルが、ふとしたことから1920年代のパリにタイムスリップしてしまう。

そこにいたのは、フィッツジェラルド夫妻やヘミングウェイ、コール・ポーターの錚々たる芸術家達。

夜毎1920年代のパリを訪れ、ガートルード・スタインに自作の小説を批評してもらったり、ダリに出合ったり。

ピカソの恋人であるアドリアナと恋に落ちたギルは、更に時代を遡り、ベル・エポックの時代に行き、ロートレックや、ゴーギャン、ドガと出会う・・・

ストーリーはシンプルだけれど、パリの風景が美しいし、音楽も良い。
なにより、過去の芸術家達がいかにも本人らしく笑いが絶えない。

最後は、雨のパリでしゃれた出会いも用意されていて、余韻も良い。

ウッディー・アレンの作品の中では、僕には何と言っても『アニー・ホール』が最高。
他にも楽しい作品はたくさんあるけれど、この『ミッドナイト・イン・パリ』は、楽しいという点でベスト3に入る作品とみました。

お勧めです。
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by maru33340 | 2012-05-26 18:17 | 映画 | Trackback | Comments(5)
2012年 02月 11日

小津安二郎の『浮草』

友人が送ってくれたDVDで、小津安二郎の映画『浮草』を観る。

随分以前にこの映画を観たけれど、異色の映画という記憶はあったけれど、改めて観て、こんなに凄い映画だったのか、と感服した。

いわゆる「小津」調を裏切るような、大映映画らしい華やかさ、宮川一夫のカメラの鋭さが、異化作用とでもいうべき緊張した美をこの映画に与えている。

豪雨の中、中村鴈治郎と京マチ子の道をはさんでの激しい罵倒のやりとりのシーンは、本当に凄い。

そして特筆すべきは、女優の艶めかしさ。

京マチ子のあだっぽい視線の強さ、若尾文子のこぼれるような色香に降参してしまう。

何度も映される、杉村春子の家の庭の花の赤さも妖しいまでに美しく、小津がカラー映画をとても楽しみながら撮影しているのが伝わってくるようだ。

ラストシーンもしみじみと胸に迫る、今観ても全く古さを感じさせない名作でした。
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by maru33340 | 2012-02-11 16:11 | 映画 | Trackback | Comments(2)
2012年 01月 02日

今年最初の映画『善き人』

あけましておめでとうございます。

今年も拙ブログどうぞよろしくお願いいたします。

さて、今日は浅草浅草寺に初詣に出かけた後、銀座まで戻り「有楽町スバル座」で、元旦から公開された映画『善き人』を見る。

<ストーリー>
1930年代、ヒトラー独裁が進むドイツ。ベルリンの大学で文学を教えるジョン・ハルダーは、善き人であろうと心がけて生きる平凡な男。
実際に彼は、病身の母を介護する善き息子であり、妻の代わりに家事をする善き家庭人であり、プルーストの講義に情熱を傾ける善き教師であり、そして第一次世界大戦を共に戦ったユダヤ人モーリスの善き友であった。
しかし、過去に書いた小説をヒトラーに気に入られたことから、ナチスに入党せざるをえなくなってしまう。
それは、生き延びるための余地のない選択だったが、、唯一の親友モーリスを裏切る行為でもあった。
親衛隊の幹部に出世したジョンは、国外脱出を望むモーリスに手を貸そうとするのだが…。

正月から見るには重たいテーマだけれど、なんといっても音楽が出色である。

主人公の内面の矛盾をマーラーの音楽で表現する場面は、おそらく、最もマーラーの音楽を効果的に映画に取り入れた例になるだろう。

最近、第二次世界大戦前の独逸への関心が再燃してきた所だったので、今年はしばらく独逸三昧の日々を送りそうな予感があります。

<公式ホームページは下記に>

ココ⇒http://yokihitomovie.blog.fc2.com/
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by maru33340 | 2012-01-02 17:28 | 映画 | Trackback(1) | Comments(5)
2011年 09月 11日

映画『探偵はバーにいる』はなかなかの名作だった

かみさんが左手首を骨折してしまったので、しばらく自転車乗りはお休み。

こういう時は映画三昧に限る。

今日は、大泉洋、松田龍平主演の映画『探偵はバーにいる』を観る。

近所でやっていて、偶々時間がピッタリだったので軽い気持ちで観たら、これがなかなかの名作だった。

大泉、松田の呼吸も良く、良い感じに力が抜けているのも良い。

ハードボイルドの決め台詞も大泉が語ると、何とも言えない可笑しみが漂う。

札幌のススキノが舞台という設定も生きている。
ヒロインの小雪の美しさと哀切さも最後にキラリと光る。

これは今年の日本映画でも出色の作品になりそうだ。
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by maru33340 | 2011-09-11 15:24 | 映画 | Trackback | Comments(2)
2011年 08月 27日

映画『モールス』と武士(もののふ)達の魂の話

この映画は、ヴァンパイアの少女と、彼女を愛した12歳の少年との物語である。

スウェーデン映画『ぼくのエリ』のハリウッド版リメイクで、ジャンルとしてホラーにあたり、僕はちょっと苦手なタイプの映画だし、まだ高野山の武士(もののふ)達の魂が身辺に漂っている気配があり、見るのに躊躇したけれど、家人の希望により新宿歌舞伎町のシネマスクエアとうきゅうまで見に出かけた。

確かに怖かったけれど、映像は美しくヴァンパイアの少女(美しい!)と彼女を愛する少年の物語は哀切であり、ラストシーンも意味深く、なかなか良い映画だった。

しかし久しぶりに歩く歌舞伎町は、益々ディープなアジアの味わいが濃く、ある意味でホラー映画より恐ろしい。

吸血鬼と歌舞伎町のダブルパンチで、さしもの武士達の魂も、遥か高野山に退散したようだ。

ホットしたような、もう少し昔物語を聞きたかったような、なんとも不思議な心持ちであります。
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by maru33340 | 2011-08-27 16:18 | 映画 | Trackback | Comments(2)