<   2009年 04月 ( 18 )   > この月の画像一覧


2009年 04月 29日

『グラン・トリノ』を貫くテーマ

※今回は映画『グラン・トリノ』の内容と結末について書きますので、これからこの映画を見ようと思っている方は、出来ればこの先は読まずに映画をご覧になることをお勧めします。
この先は自分自身の覚書として記載します。

先日見た映画『グラン・トリノ』のラストシーンはとても衝撃的だった。
そのラストシーンは、この映画のテーマをはっきりと現していた。

イーストウッド演じる孤独な老人である主人公コワルスキー(戦争で人を殺した記憶が心の傷となっている)が隣人のモン族の姉と弟に次第に心を開いていく。
しかしその若い友人を守るために彼がとった行動(弟にしつこく付き纏うチンピラ達の一人に手荒い一撃を加え弟に付き纏わないように忠告する)が更に兄弟を傷つけてしまう。(チンピラ達によって姉が傷つけられる)
それを知った時に彼はそのチンピラ達に復讐をするのではなく自ら丸腰で彼らの元に向かい、銃で撃たれて犠牲となる。

そのラストシーンで銃で撃たれ仰向けに倒れたイーストウッドは、十字架に張り付けられたキリストの姿を模していて、荘厳で気高いものだった。

そう思って見るとこの映画全体に「汝の隣人を愛せ」という思想や愛するものを守るための「受難」の劇が流れている事に気付く。
とはいえ決して説教臭はなく、ユーモアにもあふれていて、気がつくと「自分の人生にどう幕をひくか」という主題についていつの間にか考えている。

映画を見てこれだけの濃密な経験が出来るのはまれなことだ。
ここには一人の人間がどう生きて、どう死ぬのか、美しい生き方とは何かについての一つの答えがある。

この映画は、現代という時代に贈られた一つの奇跡であるといっても大袈裟ではないかも知れない。
しばらくの間僕はこの映画から贈られた答えについて考え続けることになるだろう。
[PR]

by maru33340 | 2009-04-29 09:15 | 映画 | Trackback | Comments(1)
2009年 04月 26日

映画『グラン・トリノ』

クリント・イーストウッドの最新作『グラン・トリノ』を見る。
先日ラジオでピーター・バラカンさんがこの映画について語っていて、「何の下調べもせず先入観なしに見たらとても良かった。」と語っていたので、僕もオフィシャルサイトも見ず、映画評も出ないうちにと公開二日目の今日見に行ってきました。
これは素晴らしい映画でした。
『硫黄島からの手紙』でイーストウッドがとても良い監督だとは思っていて期待したけれど、遥かに期待以上。
詳しく語りたいけれど、この映画は確かにあまり背景やストーリィを知らずに見た方が面白いと思うので感想は少しだけ。
最初はさりげなく始まり、途中からぐんぐんその物語に引き込まれ登場人物が好きになっていく。
イーストウッド演じる主人公は格好よく、ラストはソクソクと胸を打つ。
エンドロールに流れる曲をイーストウッド自身が歌っていてこれがもう渋さの極地で泣かせます。
これは早くも今年のベスト3候補作です。
お勧めします。

※この映画には大変重要なテーマが全編に流れているのですが、これについてはまたいつか語りたいと思います。
[PR]

by maru33340 | 2009-04-26 14:51 | お勧めの本 | Trackback | Comments(4)
2009年 04月 26日

スーザン・ボイルの歌声

今、YOU TUBEで話題のスーザン・ボイルの歌声を聴いてみた。
見るからにパッとしないおばさんの登場に審査員も客席も冷ややかな反応。
しかし彼女が「レ・ミゼラブル」からのナンバーを歌い始めるや反応は一転。
そのギャップと素晴らしい歌声に会場は騒然となる…
まるで三分間のドラマのようで見ていて確かにちょっとぐっとくる。
映像はあまりによく出来ているので、本物かな?とも思うけれど、話題になるだけの事はある。
殺伐たる事件が続く今の世の中の一服の清涼剤ではありますね。
[PR]

by maru33340 | 2009-04-26 09:41 | お勧めの本 | Trackback | Comments(2)
2009年 04月 25日

雨の日のブラームス

今日は朝から雨。
肌寒い荒れ模様の天気。
午前中は図書館で少し勉強でもと出かけたけれど、どうもこういう天気は苦手ですぐに眠くなってしまう。
しかたないので自宅に戻りギュンター・ヴァントのブラームス交響曲2番などを聴く。
この人のブラームスは自然体というのか、余計な力が入っていなくて、少し早めのテンポが心地よい。
雨の午後にはブラームスがよく似合う。
[PR]

by maru33340 | 2009-04-25 15:56 | お勧めの本 | Trackback | Comments(2)
2009年 04月 21日

『フィンガーボウルの話のつづき』(吉田篤弘)

往復の列車の中でこの『フィンガーボウルの話のつづき』を読んでいる。
ビートルズの「ホワイトアルバム」を軸に過去と現在、物語とその作者が交錯する少し不思議な作品です。
その語り口が、澄んだ三日月の真夜中のように透明で静かで心地よく、読んでいて気持ち良くなってきます。
今日のような空模様の日には一服の凄涼剤になります。
[PR]

by maru33340 | 2009-04-21 12:27 | お勧めの本 | Trackback | Comments(0)
2009年 04月 17日

『つむじ風食堂の夜』(吉田篤弘)

この所暖かい良い天気が続いたけれど、今日は肌寒い曇り空。
心なしか頭も重い。
こんな日はあまり固い本を読む気がせず、昨日購入した『つむじ風食堂の夜』を読み始めた。
架空の町「月船町」にあるつむじ風食堂に集まる風変わりな人々が織り成すセピア色の懐かしい物語。
事件らしい事件は何も起こらないのが嬉しい。
文章は端正で、登場人々は気持ち良い距離を置きながらそれぞれの世界を築き上げている。

読み終えて、日々の生活が少し愛おしい気持ちになる佳品です。
[PR]

by maru33340 | 2009-04-17 08:22 | お勧めの本 | Trackback | Comments(0)
2009年 04月 15日

『向田邦子の恋文』(向田和子)

先日放送のドラマ『駅路』で向田邦子が松本清張の原作に大きく書き加えたのは深津絵里演じるヒロインの内面であったことを先日のブログに書いた。
そして書き加えられた内容に、向田邦子の秘めた思いが込められているのでは、との思いから、改めてその思いを確かめたくなり、以前読んだ『向田邦子の恋文』を読み返した。

※ここから先、先日触れなかった原作の内容とドラマとの相違に触れます。

原作ではヒロインには台詞もなく、不倫相手の男性が定年を終えて、二人が駆け落ちしようと決めた時点で彼女は既に病死していたという設定になっている。
ここからは全くの想像だけれど、向田邦子はこの哀れなヒロインをこのままにするのが忍びなく、彼女に台詞を与え、二人が駆け落ちすると決めた時も、男性が死体で発見された時も生きていて、これからも強く生き続けるであろう人物に変更したのではないか。
そしてそれは彼女自身の愛したN氏の自死の後も生き続けるという彼女の決心の反映ではないか。

以上は全くの僕の推察以外の何者でもないけれど、ドラマを見終えて読んだ『向田邦子の恋文』の文庫版の解説に太田光が「向田邦子は愛する人の死の後も生きる事を選んだ女性である」と書いているのを読み、もしかするとドラマを見ながら感じた事は当たらずといえども遠からずかも知れない、などと感じた。
[PR]

by maru33340 | 2009-04-15 07:30 | お勧めの本 | Trackback | Comments(0)
2009年 04月 12日

映画『マリア・カラスの真実』を観る

今日は渋谷のユーロスペースで、映画『マリア・カラスの真実』を観る。
これは「歌に生き、恋に生き」たマリア・カラスのドキュメンタリー映画。
知っていたはずのカラスの53年の人生を舞台映像と数々のインタビューや記録映像によって改めて見ることによって、彼女の人生の壮絶なまでの栄光と孤独が胸に迫ります。
この映画のキャッチコピーに「愛と喝采の陰でひとり運命に抗った不世出の歌姫」とありますが、僕には、運命に抗えば抗うほど逆に翻弄されていく宿命と引き換えに神から名声と栄光を与えられた一人の繊細な魂の悲劇のように思えました。
[PR]

by maru33340 | 2009-04-12 18:14 | 映画 | Trackback | Comments(0)
2009年 04月 12日

松本清張原作、向田邦子脚本のドラマ『駅路』

昨夜放送されたドラマ『駅路』は素晴らしいドラマだった。
ゴーギャンの絵画、佐藤春夫の詩(原作にはない)、アルハンブラの想い出の音楽が一体となり、哀切極まりない文学の香りに満ちた傑作に仕上がっていた。

舞台を昭和最後の秋から冬にかけての時代にしたのは脚色の杉田成道の案ではないかと推察出来るけれど、これも昭和という時代へのレクイエムにもなっていて、とても効果的だった。

松本清張の原作は短編。
これをドラマにするにあたり向田邦子はかなり大胆なアレンジを加えているのではと思い、今日早速原作を読んで驚いた。
深津絵里演じるヒロインがドラマでは非常に重要になっているのだが、原作ではその人物像は描かれていない。
(一言の台詞もないばかりか、ドラマとは決定的な一点で違いがある。もし昨夜ドラマを見ていて万一これから原作を読もうと思っている方がいらっしゃるかも知れないので、これ以上書きませんが、僕はアッと息を飲みました。)
この脚本はどうやら当時(今から約30年前)に書かれた時にはドラマ化されなかったようだけれど、確かにこの変更は、僕が原作者なら許可しないかも知れない。
悪くなっているからではなく、原作では一点景人物に過ぎない一人の女性が向田邦子の手によって、息を吹き込まれて、哀切極まりないドラマに生まれ変わっていることに原作者としての矜持を少し傷つけられる思いがするから。

そして、あの若き日の向田邦子とN氏との辛い恋を知る現在の僕たちには、この脚本に込めた向田邦子の思いが痛いほど伝わってくる。
それは当時その事情を知る彼女の周りの人(例えば久世光彦)なども感じとったはずで、それゆえこの脚本のドラマ化に反対したのでは、とも想像出来る。

そんな思いが幾層にも重なり様々な事を考えさせてくれるドラマらしいドラマでした。
出来ればCM抜きでもう一度見直したいと思います。
[PR]

by maru33340 | 2009-04-12 17:29 | お勧めの本 | Trackback(1) | Comments(2)
2009年 04月 11日

阿修羅を見に行く

今日は前から見たかった阿修羅像を見に国立博物館へ。
前売券を買い開館前に行ったけれど、既に大変な行列。
それでも朝一番だったので、阿修羅像にゆっくり会うことが出来た。

やはりこの仏像は美しい。
愁いを帯びた表情は全く現代の美少年そのもので、とても1300年も前のものとは思えない。
朱色という色彩もこの姿に相応しい。
三つの顔と六本の手と細い腰を持つ姿は精神性と官能性の見事なバランスが素晴らしく、いつまでも見ていたいほど。
今度は是非奈良でお会いしたいもの。
[PR]

by maru33340 | 2009-04-11 17:44 | お勧めの本 | Trackback | Comments(0)