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2009年 07月 28日

『キップをなくして』(池澤夏樹)

この所鉄道を巡る本に凝っている。

6月末に金沢に旅行した際に、帰りの列車の中でたまたま買った関川夏央の『汽車旅放浪記』という文庫本を読んでいたら、ちょうど僕が乗っている北陸鉄道(ほくほく線)についてのエッセイがあり、読んだり窓から車窓を走る日本海の景色を眺めたりしながらすこぶる楽しかったのがきっかけ。

この『汽車旅放浪記』では、太宰や宮沢賢治、漱石の作品と鉄道との関係がとても良い文章で書かれていて、読んでいて文学も鉄道旅行も楽しめる、いわば二度美味しいエッセイになっている。

池澤夏樹さんの小説『キップをなくして』もそのタイトルにひかれて読み始めた所、とても面白かった。

キップをなくした子供たちが、トレイン・キッズとなって駅の構内で不思議な共同生活をおくる。
彼らは駅内の食堂で食事をしたり、キオスクでお菓子をもらったり、いろいろな駅の駅弁を無料で手に入れることが出来る。
彼らには、一人で通学する子供達が駅に落ちたりして事故にあわないように監視したり守ったりするという仕事をするという使命があり…

一つのファンタジーではあるけれど、子供達一人一人の個性が生きているし、最後は少し胸が熱くなる気持ちの良い小説でした。
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by maru33340 | 2009-07-28 12:35 | お勧めの本 | Trackback | Comments(2)
2009年 07月 27日

『われ巣鴨に出頭せず 近衛文麿と天皇』(工藤美代子)

第一印象というのはなかなか決定的なもので、一度頭の中にその人のイメージが焼き付くと、これを修正するのは難しい。

確か高校の授業だったかと思うけれど、「近衛文麿は大変なおぼっちゃん首相で、その遺書には、『ボクハワルクナイ、ボクハワルクナイ』と小さな鉛筆文字で書かれていた。」というエピソードを聞いて以来、僕の中の近衛文麿のイメージは「弱い人」とうイメージで固定されてしまった。
(これはちょっと間違いのようだけれど)

その後少し歴史の勉強をするようになっても、やはりそのイメージは変わらないままだった。

『われ巣鴨に出頭せず 近衛文麿と天皇』はそんな僕の近衛文麿像を少し変える本だ。

確かに体は少し弱い(そういう体質の事を「蒲柳の質」というらしい。僕も少しそれに近い。)けれど、政治的な信念はしっかりともった政治家であったということがわかる。

東京裁判に出廷する前日に自ら命を絶ったのも天皇に戦争責任が及ぶのを防ぐためであったということがわかる。
「弱い」といわれ続けていた近衛文麿は決して弱いだけの政治家ではなかったのかも知れない。
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by maru33340 | 2009-07-27 08:27 | お勧めの本 | Trackback | Comments(0)
2009年 07月 23日

『神と野獣の日』(松本清張)

この作品は松本清張が残したほとんど唯一といっていいSF風作品。
発表は昭和38年。

内容は、
「ある日突然、2万キロ離れた太平洋自由条約機構に属するZ国の5メガトンの核弾頭を搭載したミサイル5基が日本に向けて誤発射される。これに対する日本政府のあわてふためいた対応が、喜劇的なタッチで描かれる。」
というもの。

文体もいつもの松本清張の重厚なものとは違い、まるで星新一のショートショートを読むようにすらすらと読める。
もし作者の名前を知らずにこの小説と読み始めたら、おそらく松本清張の作品とは思えないかもしれない。
しかし読み進めるにつれて、やはり松本清張ならではのシニズムが見え隠れする所が面白い。

異色作ではあるけれど、現在の日本及びそれを取り巻く世界情勢は、当時よりこの作品をリアルなものに感じさせてくれる。
軽く読めて、あとからずしっとくる小説です。
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by maru33340 | 2009-07-23 08:22 | お勧めの本 | Trackback | Comments(0)
2009年 07月 22日

指揮者若杉弘さん逝去す

今朝の朝刊で指揮者の若杉弘さんの訃報に接し驚く。
まだまだあの独特の指揮ぶりを見ることが出来ると思っていたのに・・・

学生時代、マーラー熱に浮かされるようにして夜となく昼となくマーラーばかり聴き続けた時期があり、当時マーラーの交響曲をコンサートで積極的に取り上げていた若杉弘さんは僕の大好きな指揮者の一人だった。

その音楽は繊細でありながらダイナミズムも十分で、良く切れる日本刀のようなみずみずしい美しさと強さがあり、マーラーの音楽とぴったりあっていた。

若杉さんがいなければ当時の僕の音楽生活はもっと貧弱なものになっていたことと思う。

ご冥福を心からお祈りいたします。
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by maru33340 | 2009-07-22 12:57 | お勧めの本 | Trackback | Comments(0)
2009年 07月 20日

「下山事件」の謎

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昭和24年(1949年)7月6日未明、初代国鉄総裁であった下山定則の轢死体が常磐線と東武線が交差する五反野付近の常磐線線路上で発見された。
この事件の二日前には国鉄職員の第一次整理者三万七百人の人数が発表され物情騒然としていたことから、捜査は他殺説、自殺説入り乱れて混迷を極めていたが、死因・犯人も特定出来ないまま昭和24年12月31日に突然捜査本部は解散となる。
これだけの大事件でありながら突然の捜査打ち切りには何らかの外部の圧力が掛かっていると考えられるため諸説紛々とする中、松本清張は昭和35年に『日本の黒い霧』の中で、「下山事件はGHQによる謀略である」との説を発表する…

最近凝っている昭和史を調べていく内に「下山事件」に行き当たり何冊かの関連本を読んだ。
・『下山事件(シモヤマ・ケース)』(森達也)
・『謀殺 下山事件』(矢田喜美雄)
・『下山事件 最後の証言』(柴田哲孝)
何れも非常にスリリングで興味深い本だが、特に柴田の『下山事件 最後の証言』は、満州事変から戦後の東西の冷戦という昭和史とこの事件との闇の部分での繋がりにまでメスを入れ、また吉田茂、岸信介、佐藤栄作、白州次郎といった戦後日本の大物と下山事件との関連にまで触れている。また亜細亜産業で働いていた著者自身の祖父がこの事件に関与していた可能性もあることから一層追求は切実なものとなっており、読み始めるとやめる事が出来ない。

下山事件に魅入られた人間のことを称して「下山病感染者」というらしいけれど、僕も何冊かの下山事件関連本を読んでいる内にどうやらこの病に感染したらしく、今日はこの事件の現場である五反野まで列車に乗り出かけてきた。

日暮里から常磐線に乗り、一旦事件の現場である東武線と交錯する箇所を通りすぎる。
荒川をすぎると線路は軽い右カーブになりスピードが出る上に、東武線のガードに遮られてほとんど見晴らしが効かなくなる所に事件現場はあった。
松戸からまた北千住まで折り返してから東武線に乗り換え五反野駅で下車。
徒歩で約15分歩き下山事件の現場に向かう。
現場付近は現在は「五反野コミュニティーセンター」として子供達の遊び場になっており、小さなプールから歓声が聞こえる。
常磐線のガードをくぐるとひっそりとした下山総裁の慰霊碑がある。(写真)
手を合わせていると頭上を常磐線が通り少し背中がヒンヤリした。

下山事件から今年でちょうど60年が経つ。
いまだに真相は明らかになっていない。
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by maru33340 | 2009-07-20 15:06 | お勧めの本 | Trackback(1) | Comments(3)
2009年 07月 19日

ドラマ『リミット 刑事の現場2』

NHKの土曜ドラマには秀作が多いけれど、先週から始まったこの『リミット』も凄いドラマだ。

映像、音楽、ストーリィともに一級品。武田鉄也の今までのイメージとは全く違う、憎しみに満ちた凄みのある演技も驚き。
これは刑事物というより人間の内面を深くえぐり出すドラマだ。
残り三回が楽しみ。
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by maru33340 | 2009-07-19 06:59 | お勧めの本 | Trackback | Comments(0)
2009年 07月 16日

『ルポ貧困大国アメリカ』(堤未果)

今更ながらだけれど、昨年話題となった『ルポ貧困大国アメリカ』を読了した。
あまり報道されることのない(あえて報道しない?)、現在のアメリカの病理が生々しいほど伝わってくる。

飽食と貧困は1枚のコインの裏表であり、この本で描かれているアメリカの格差社会の現状は、我々にとっても全く人事ではない。

「自己責任」「規制緩和」という美名の下に、日本人はその根本的な美質を急激に失いつつあるのは、日々のニュースを見ていて痛いほど実感出来る。
しかし、ニュースは本当の事を伝えず、裏番組では能天気なバラエティーの数々ばかり。

40年前に三島由紀夫は戦後の民主主義により日本人はその美徳を失ったとして自決したけれど、生きていれば85歳になったであろう彼が今の日本の現状を見たら一体どう思うだろう…
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by maru33340 | 2009-07-16 16:10 | お勧めの本 | Trackback | Comments(0)
2009年 07月 12日

こんな夢を見た

明け方うとうとしながら妙にはっきりした夢を見た。

都議選で自民党が大敗。
麻生首相は破れかぶれの内閣総辞職。
総裁選前倒しは、桝添、石原、小池百合子、与謝野の四名で戦われ石原が選ばれる。
総選挙は総裁選がメディアで大きく取り上げられた結果、自民党が過半数をとる。
このシナリオを書いたのが古賀選対委員長。
東国原知事の話題に世間やマスコミを集めている間に潜かに総裁選の準備を進めていたのだ…

いやはや、夢に見るような話しじゃないなあ…
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by maru33340 | 2009-07-12 10:50 | お勧めの本 | Trackback | Comments(3)
2009年 07月 11日

我々はどこから来たのか 我々は何者か 我々はどこへ行くのか

東京国立近代美術館へゴーギャン展を見に出かけた。
僕にとって、ゴーギャン程複製と原作の違いを感じる画家はいない。
その黄色や深い緑は原作を目の当たりにすると生々しく迫ってくる。
夕方5時過ぎに入館したので、人も少なく、代表作である「我々はどこから来たのか 我々は何者か 我々はどこへ行くのか」をじっくり見る事が出来た。
時間は画面の右から左にゆっくりと流れ、左端の老婆はこちらを凝視して目を離せない。
この不思議な作品を作り出したゴーギャンという魂に近付くために、また「月と6ペンス」を読み返したくなった。
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by maru33340 | 2009-07-11 22:30 | お勧めの本 | Trackback | Comments(0)
2009年 07月 05日

ドラマ『官僚たちの夏』

今日から始まったドラマ『官僚たちの事』を見る。
これは昭和30年代に日本の自動車産業の発展を夢見た官僚たちの熱いドラマ。
同時に戦争に負け誇りを失った日本人が再びその誇りを取り戻すためのドラマでもある。
佐藤浩一はこうしたドラマにはあまりにはまり格好いい。
今の日本の現実の政治状況があまりにお粗末で矮小なので余計に彼らの姿が眩しい。
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by maru33340 | 2009-07-05 22:46 | お勧めの本 | Trackback | Comments(0)