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2010年 04月 29日

湊かなえ『告白』を読む

知人に薦められた湊かなえの『告白』を読み終えた。

この作品はとても力がある作品だ。
物語に救いはなく、登場人物に感情移入することは出来ない。
しかし、その物語の持つ力が読むものを掴んで離さない。

物語は、一つの事件を異なる語り手が語っていく、という芥川の「薮の中」のような手法で語られ、「薮の中」と同じように、語られれば語られるほど、いわゆる「事件の真相」からは遠ざかり、読者は最後に、大きな衝撃を与えられたまま「後はご自分でお考え下さい。」と一人取り残される。

この作品は、「学校を舞台とした未成年による殺人」を報道する時にマスコミが使う「心の闇」というような安易な言葉を注意深く避けて、人間に潜む孤独というものの正体に迫ろうとした、端倪すべからざる深みを持った傑作である。
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by maru33340 | 2010-04-29 15:42 | お勧めの本 | Trackback | Comments(2)
2010年 04月 29日

バッハを観る

遅ればせながら、坂本龍一によるスコラ(バッハ第3回)を観る。
これはやはり興味の尽きない素晴らしい番組だった。
第3回はバッハの宗教音楽と低音の重要性について。
時にユーモアを交えながら、坂本龍一自身による実演も含め最後まで簡潔で無駄のない作りになっている。
番組の最後に演奏された藤原真理(しばらく見ない間に、まるでカザルスのように峻厳な風貌になっていたけれど)と坂本龍一によるマタイ受難曲「神よ憐れみたまえ」の演奏はとても美しく、溜息とともに番組を見終わった。
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by maru33340 | 2010-04-29 11:19 | お勧めの本 | Trackback | Comments(0)
2010年 04月 26日

「学んで知る」事と「思うて得る」事

小林秀雄の未発表講演を収録したCDが、新潮社から発売され、早速聴いてみた。

始めは何時もの講演の時と同じように「講演は好きじゃない。今日は角川くんがどうしてもというので仕方なくきた。」などと聴衆を煙に巻きながら、次第に本題(本居宣長について)に近付くにつれ熱を帯びてくる。

今回何より心に染みたのは、「学んで知る」事と「思うて得る」事には大きな違いがあるということ。

小林秀雄いわく、
「思うて得る」ためには長い時間と思索のための苦しみが必要である。
「学問」というのは、そうした苦しい自問自答を重ねて、自分にしか語り得ない事を発見する事である。

自らを振り返り、学問だけではなく、考える時、自分の意見を述べる時に、自分は果たして、自分の頭で考え、「思うて得た」言葉を語っているだろうか。
(当blogしかり)

そう思うと忸怩たるものあり、もって自戒の言葉として書き留む。
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by maru33340 | 2010-04-26 07:43 | お勧めの本 | Trackback | Comments(1)
2010年 04月 25日

今日の映画(4月25日)

◎『ドン・ジョバンニ』
監督;カルロス・サウラ
撮影;ウ゛ィットリオ・ストラーロ
出演;ロレンツォ・バルドゥィッチ他
2009年、イタリア
評価;★★★(是非、お勧め)

※モーツァルトとダ・ポンテの交流がストーリィの縦軸だが、この映画の本当の主人公は、モーツァルトの音楽。切れ味の鋭い演奏が素晴らしく、ラストのドン・ジョバンニが地獄の業火に焼かれるシーンの音楽は圧倒される。映像も素晴らしい。
音楽映画しかも伝記映画となると成功は稀だけれど、この映画は奇跡的に成功している。
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by maru33340 | 2010-04-25 14:47 | 映画 | Trackback | Comments(2)
2010年 04月 25日

今日の音楽(4月25日)

◇『ベートーベン交響曲五番<運命>』
(クレンペラー指揮フィルハーモニア管弦楽団)

※最近のベートーベン演奏はピリオド奏法の影響か、すっきりサクサク一丁上がり、という演奏が主流。それはそれで、いいものはいいけれど、時々昔ながらのどっしり構えたベートーベンが聴きたくなる。
このクレンペラー版は、まさに雄々しく峻厳、厳父のように聳え立つ演奏。居住まいを正し、心して聴くに相応しい、素晴らしい演奏だ。
特に管楽器のくっきりした味わいは圧巻。
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by maru33340 | 2010-04-25 09:08 | クラシック音楽 | Trackback | Comments(0)
2010年 04月 24日

今日読み始めた本(4月24日)

◆『アメリカから<自由>が消える』
(堤未果著、扶桑社新書)

※この本の「あとがき」から引用する。
「歴史を振り返れば、<言論の自由>は、それが最も必要とされる時に抑えこまれてきたということが見えてくる。<言論の自由>を抑えこむためにつくりだされたさまざまな仕掛け、それらに煽られ人々の間に拡大していく<恐怖>。その<恐怖>に私たちの無知と無関心が力を与えてしまい、いつの間にか<言論の自由>が抑えこまれ、社会全体が閉じられていくのだ。自らの頭で考え、検証し、疑問を持つことをやめてしまえば、真実とそうでないものを選りわけることはとても難しい。」
『1984』で描かれた世界が現実となるまでに、僕たちに残された時間はもうあまりないのではないか。
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by maru33340 | 2010-04-24 13:25 | お勧めの本 | Trackback | Comments(2)
2010年 04月 23日

今日の音楽(4月23日)

◇『マーラー交響曲9番』
(バルビローリ指揮ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団)

※全てのクラシック音楽の中で最も好きな曲は、と聞かれたら、やはりマーラーの交響曲9番という事になる。それだけにそう頻繁に聴くわけにはいかない。それなりの聴くべき理由がある時に、居住まいを正して聴く。「それなりの理由がある時」とは、精神的疲労がピークに達し、もう何か大きなものに身を委ねるしかないという状態になった時、という事になる。今日は扁桃腺による高熱を押さえる抗生物質の副作用で、気持ちが酷く萎えてしまっていたので、気持ちを建て直すために久しぶりにバルビローリ指揮による同曲を聴いたが、やはり奇跡的に美しい演奏だった。
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by maru33340 | 2010-04-23 04:07 | お勧めの本 | Trackback | Comments(0)
2010年 04月 22日

今日読了した本(4月22日)

◆『1Q84 Book3』(村上春樹著)

※20世紀が、戦争と虐殺と暴力の世紀だとするなら、21世紀はいまだその傷痕が癒えないにも関わらず(少なくとも日本においては)一見平穏な日常が惰性のように続いている。しかし水面下では、社会、政治、人の心は病から癒えずにもがいているようだ。
村上春樹はそうした現代に降ろされたカナリアのように、孤独な人々の閉塞感と暴力を描く。
『1Q84』は、その読みやすい外観とは事なり、難解な小説である。
このBook3でも、Book1.2で示された謎が全て解決するわけではない。謎は依然として謎のままだ。
しかし一つの大きなカタルシスが最後にやってくる。
それは、あえて一言で表現するならば、現代の社会を覆う暴力の前で人は無力だが、例えばそれは砂浜に落とした片耳のイヤリングを探すように困難な事であっても、この世界に美しい事は存在する、という作者の確信から来るのかも知れない。
その確信の根拠がどこから来るのかはわからない。しかし、少なくとも僕はそれを信じたいと思う。
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by maru33340 | 2010-04-22 11:00 | お勧めの本 | Trackback | Comments(0)
2010年 04月 20日

今日読んだ本(4月20日)

◆『時代劇のベートーヴェン〜映画を見ればわかること③〜』(川本三郎著、キネマ旬報社)
※昨夜、急性扁桃炎となり、熱が38度5分まで上がる。さすがに38度を超えると何も出来ないので、仕事は休み、医者で点滴を打ち何とか熱も下がったので、本も読めるようになり、川本氏の新しい映画評を読む。この人の映画評は、細部(風景や列車など)に着目しながら映画への愛情を語り以前から愛読している。小賢しい理屈を言わないという一貫したスタイルも好ましい。この本もまたそうしたスタイルだが、途中の何編か珍しく感情が表に出ている所があり、その理由は「あとがき」で明らかになる。
好著なり。
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by maru33340 | 2010-04-20 21:43 | お勧めの本 | Trackback | Comments(2)
2010年 04月 19日

本日購入の本(4月19日)

◆『短篇集』(柴田元幸編、ウ゛ィレッジブックス)
◆『解明・昭和史』(筒井清忠編、朝日選書)
◆『一冊で知るジェノサイド』(ジェーン・スプリンガー著)
◆『丸山真男の時代』(竹内洋著、中公新書)
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by maru33340 | 2010-04-19 07:22 | お勧めの本 | Trackback | Comments(1)