新・クラシック音楽と本さえあれば

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2010年 11月 29日

デュプレのベートーベン/チェロ・ソナタ

何となく、ベートーベンのバイオリン・ソナタは苦手という意識があった。(というよりベートーベンに限らず、二重奏全般が苦手という)

二重奏はいわば二つの楽器の「対話」から成り立っている音楽かと思うけれど、演奏している二人が熱心に対話するにつれ、それを聴いている自分は対話の「かやの外」にいるような疎外感に襲われ、いつもなんとなく所在無い心持ちになる。

しかし、今日デュプレの演奏するベートーベンのチェロ・ソナタを聴いていて、デュプレ渾身のチェロに肩入れし、自分自身がチェロを弾いているようで、とても心地良かったのだ。

そこで、はたと気がついたのは、そういえば独奏曲を聴いている時は独奏者の気持ちになり、オーケストラを聴いている時は指揮者の気持ちになって音楽を聴いているという事だった。

つまりは二重奏を聴いている時は「自我」が音楽の外側にあるけれど、独奏曲やオーケストラを聴いている時は「自我」が消えて音楽の内側に吸収されており、僕にとっては、「自我」が消えている時に音楽はとても気持ち良いものになっているという事だ。

これは「唯識」で考えると、自我の捕われから開放された時、僕にとって音楽は幸福な時間をもたらしてくれるという事にも繋がるのかも知れない。
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by maru33340 | 2010-11-29 07:58 | お勧めの本 | Trackback | Comments(3)
2010年 11月 28日

映画『100歳の少年と12通の手紙』

以前、『地上5センチの恋心』というフランス映画を見て、その遊び心に満ちた映像を大いに楽しんだ。

そのエリック・=エマニュエル・シュミット監督が、自身のベストセラー小説を映画化した映画がこの『100歳の少年と12通の手紙』。

ストーリーは・・・

10歳の好奇心旺盛な少年オスカーは、白血病を患い小児病棟に入院していた。
彼は自分の病気について口を濁す両親や医師にいら立ち、特別扱いをされることにも飽き飽きしていた。
そんなある日、オスカーは病院に宅配ピザの配達に来ていたローズと廊下でぶつかり、彼に悪態をつく彼女をひと目で気に入る・・・

ストーリーからは、いわゆる難病ものを想像するけれど、そこはフランス映画。

ローズがオスカーに語る自身のプロレスラーとしての過去のストーリーが荒唐無稽で演劇的な映像で語られる。

基本的には、ファンタジーでもある。

久しぶりにヨーロッパ映画を見て、その文化的な厚みとユーモアを堪能できる傑作だった。
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by maru33340 | 2010-11-28 17:32 | 映画 | Trackback | Comments(2)
2010年 11月 27日

『唯識入門講座』(横山紘一著、大法輪閣)

三島由紀夫の『豊饒の海』を読むために、少し「唯識」の勉強をしようと今日は終日この本を読み続けた。

この本はとてもわかりやすい、おそらくとても良い入門書だと思う。

しかしそれでもまだまだ解らない所が多々あるのはやむを得ない。

なにしろ「唯識」という考え方を理解するためには、そのことを一心に学んでも十年以上かかるというのだから半端ではない。

今はまだ「唯識」という山の登山口にも立たず、ようやくそこに山があるらしいと気付いたばかりという程度だ。

以下、入門者のノートとして。

「唯識」では、人の認識には「八識」から成るという。

最初の「五識」は、眼識、耳識、鼻識、舌識、身識で、これは五感と近いから理解できる。
この五つの働きは受動的だ。

次に「意識」。言葉を用いて考える働きや感覚を鮮明にする働きで、ほぼ僕らの思っているものに近い。
意識の働きは能動的だ。そして、以上六つの識は表層で働いている。

次の「末那識」は、深層で働く自我執着心だ。
何かを考えたり、行動したりする時、知らず知らずの内に「自分が、自分が」という意識に捕われている。
この自我に執着する心が、様々な苦しみを生む原因となるという。

最後が「阿頼耶識」。
これは深層で働く根源的心。
この識の働きは五つある。
①業の結果を貯蔵する。
②現在と未来とのすべての存在を生じる。
③身体を作り出し、それを有機的・生理的に維持している。
④自然を作り出し、それを常に認識しつづけている。
⑤輪廻の主体となる。
ここまで来ると途端に難解だが、我々の病気やストレスの原因は、この「阿頼耶識」が汚れて重くなることにあるらしい。
だから我々はこの「阿頼耶識」を常にきれいな状態にする生き方をすることが大切である、と。

ではどうすればいいのか?

(続く、かもしれない)
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by maru33340 | 2010-11-27 23:20 | お勧めの本 | Trackback | Comments(4)
2010年 11月 27日

ドキドキの『秘密』

ドラマ『秘密』は今週も凄い。

志田未来の一途な、少しでも気を抜けば崩れ落ちそうな危うさ、佐々木蔵之介の狂気さえ感じさせる目の演技。
そして本仮屋ユイヤの透き通るような肌の白さににじむ透明な不安感。

最近出色の心理劇は見ていて心臓が苦しく成る程の切迫感がある。

もう一度初回からゆっくり見返したいドラマだ。
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by maru33340 | 2010-11-27 00:31 | お勧めの本 | Trackback | Comments(1)
2010年 11月 25日

『三島由紀夫幻の遺作を読む もうひとつの「豊饒の海」』(井上隆史著、光文社新書)

三島由紀夫が市ヶ谷の自衛隊で自決してから40年目にあたる今日、この本を読了した。

この本は三島由紀夫の最後の作品である『豊饒の海』の残されたスケッチから、もう一つの結末の可能性を探る。

更にこの小説を理解するための中心テーマである「唯識」という考え方について深く掘り下げ解説している。

かなり丁寧な解説だが、やはり「唯識」は難しく、半分も理解出来ない。
新書としてはかなり読みごたえがある三島論であり、もう少し優しい「唯識」の入門書を読んでから再読するとしよう。
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by maru33340 | 2010-11-25 21:01 | お勧めの本 | Trackback | Comments(2)
2010年 11月 24日

白秋の恋

北原白秋の恋は壮絶である。

明治45年、白秋は原宿警察に召喚され、市ヶ谷の未決監に収監された。

二年前、隣り合わせに住んで知り合った松下俊子との恋愛関係をめぐって、その夫から姦通罪で告訴されていた。

二週間後に保釈され免訴となったが、この事件を契機に白秋の作風は魂の慟哭を歌うようになる。

翌年春、白秋は俊子と正式に結構するが、彼女は他の男と密通する。

俊子はその後結婚離婚を経て各地を転々としながら、昭和29年逝去した。

白秋は大正5年、青踏社に属する才媛、江口章子と結婚し南葛飾に移り住むが、生活は窮乏を極めた。

大正7年、ようやく生活に曙光が見え始めた時、章子は他の男と姿を消す。

章子はその後、結婚やある僧侶とのスキャンダルを経て精神を病み、昭和20年6月、座敷牢の中で逝去した。

これらの経験を白秋は歌として残しているが、芸術家とはかくまで業の深きものかと思うと、市井の市民に過ぎぬ僕などはただただ慄然とするばかりである…
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by maru33340 | 2010-11-24 23:53 | お勧めの本 | Trackback | Comments(1)
2010年 11月 23日

『長崎グラバー邸父子二代』(山口由美著、集英社新書)

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先日出張で長崎を訪ねた際に、原爆史料館、大浦天主堂、グラバー邸を見学した。

グラバー邸ではグラバーの夫人が日本人であることを初めて知った。

帰宅して本屋でふとこの『長崎グラバー邸父子二代』という本を手にとり、グラバーの息子である倉場富三郎という人物が原爆投下から間もない昭和20年8月26日長崎で自殺していた事を知った。
グラバー邸が、二つの祖国に引き裂かれた心優しい人物の歴史を背負っていたことを初めて知り、いつの日か再びグラバー邸を訪れたいと思った。
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by maru33340 | 2010-11-23 22:55 | お勧めの本 | Trackback | Comments(1)
2010年 11月 23日

志田未来の『秘密』

この冬のドラマでは東野圭吾原作『秘密』が出色だ。

なんといっても志田未来の演技が素晴らしい。

彼女は以前から天才だと思っていたけれどこのドラマでの演技はすごい。
志田未来の役は、事故にあい娘の体に母親の心が乗り移ったという設定。
小柄な身体ながら、ふとした仕草や眼差しに大人の女の色気と落ち着きさえ感じられ眼が離せない。

彼女の今後の女優としての成長が益々楽しみだ。
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by maru33340 | 2010-11-23 12:52 | お勧めの本 | Trackback | Comments(1)
2010年 11月 21日

『赤朽葉家の伝説』(桜庭一樹著、創元社推理文庫)

九州への旅の行き帰りで、ずっとこの不思議な小説を読み続けた。

桜庭一樹の小説は初めて読んだ。

これは何と言うか、親娘三代に渡る赤朽葉一家の大河ドラマではあるけれど、登場人物は型破りであり、特に第一章は語り口も神話的で、今まで味わった事のない感銘を受けた。

この作家の想像力には舌をまいたし、もっともっと大きな物語が書ける作家だと思う。

久しぶりに注目の物語作家に出会いました。
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by maru33340 | 2010-11-21 19:55 | お勧めの本 | Trackback | Comments(2)
2010年 11月 21日

水都 柳川へ

佐賀への出張を終え昨夜は博多に一泊。

今日は夕方の飛行機を取ったので、太宰府天満宮から柳川に足を延ばした。

柳川には北原白秋の生家があり、以前から行きたいと思っていた。

天気もよく、せっかくなので舟に乗り水路を行きたかったが、あいにく予約しないと乗れず、やむなくタクシーで向かった。

漠然とながら柳川という場所には、水都という言葉から「死都ブリージュ」の倦怠と頽廃のイメージを持っていた。

白秋は柳川についてこんなふうに書いている。

「私の郷里柳河は水郷である。さうして静かな廢市の一つである。自然の風物は如何にも南國的であるが、既に柳河の街を貫通する数知れぬ溝渠のにほひには日に日に廢たれゆく舊い封建時代の白壁が今なほ懐かしい影を映す。」

現代の柳川は観光地にしては何処か寂しく、ウ゛ィスコンティの映画の舞台のように、かつての繁栄は過去のものとなりながら、まだ完全には消え去っていない夕暮れのような廢市という言葉が相応しい街であった。

出来れば平日の夕刻に舟でゆっくり再訪したいと思うが、果たしてその夢は叶うだろうか。
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by maru33340 | 2010-11-21 16:05 | お勧めの本 | Trackback | Comments(2)