新・クラシック音楽と本さえあれば

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2010年 12月 31日

2010年度の映画・音楽・本

毎年年末恒例の、今年のマイベスト映画・音楽・本。

【映画】

まずは日本映画から今年のベスト3を。

◎『ゴールデンスランバー』

映画は2月に見て、原作は今年の11月に読んだ。

原作は、物語が、より入り組んだ構造になっていて(それが小説としての魅力だけれど)映画では、時間軸をすっきりとさせることでエンターテイメントとしての完成度が高まっていた。

配役も良く、随所に配された笑いも、計算がしっかり成り立っていて成功している。

◎『トロッコ』

まず、女優尾野真千子の魅力が素晴らしい。

芥川の作品「トロッコ」に触発され、台湾を舞台に静かに展開される家族の物語は、自然の美しさ、子役の生き生きとした表情、台湾の俳優達の味わいなど、どれをとっても初監督作品(川口浩史監督)とは思えない素晴らしい出来栄え。
後半、子供達と尾野真千子演じる母親との心の交流に涙が止まらなかった。

◎『告白』

まず、原作に魅了され、映画を見て再びノックアウトされた。
衝撃的としか言いようのない物語が、切れ味の良いリズムで語られる。
映像としてもとても刺激的。
今年最も多くの人に勧めた映画でした。

さて、洋画は多く見たので5作品について、簡単に。

◎『優しい嘘と贈り物』
監督:ニック・ファクラ

認知症で記憶をなくした老人が、彼を気遣う家族に見守られながら自分の妻に恋をする姿を描いた人間ドラマ。
見終わって幸福な気持ちになれる、

◎『シャッターアイランド』
監督;マーティン・スコセッシ

緊張感に満ちた映像から最後まで目が離せない。マーラー、ジョン・ケージなどの音楽も効果的。ラストも衝撃的だが、丁寧に見ていくと随所に伏線が張られているのに気付く。

◎『オーケストラ』
監督;ラデュ・ミヘイレアニュ

ストーリィに隙はなく、全編に漂うユーモアも好ましい。ラストのチャイコフスキーのバイオリン協奏曲を聴きながら涙が止まらなかった。ここには間違いなく「生きた人間」がいる。

◎『瞳の奥の秘密』
監督;フアン・ホセ・カンパネラ.

幾層にも重ねられた過去の秘密。
ラストに驚愕し、深い余韻が残る。

◎『白いリボン』
監督;ミヒャエル・ハネケ

白黒の画面の中で蠢く邪悪の気配。
あまりの邪悪さにあたったのか、見終わった日から胃腸風に襲われた。
久しぶりの独逸映画の奥行きに圧倒された。

【音楽】

今年はここ数年で最も多く音楽を聴いた年だった。
絞りきれないけれど8つの作品を。

◎フランチェスコ・トリスターノ・シュリメのピアノ・リサイタル

グレン・グールドの精神を21世紀につなぐ、僕にとって今後最も注目すべきピアニストがこのシュリメ。
バッハと現代のダンスミュージックを同じ次元で表現出来る鬼才です。
このリサイタルからピアノ漬けの一年が始まりました。

◎『モーツァルト交響曲29番、31番「パリ」、36番「リンツ」』(クレンペラー指揮フィルハーモニア、ニューフィルハーモニア管弦楽団)

初めてモーツアルトの音楽の真髄に触れたような気がする全く個性的な演奏。
数あるクレンペラーの名盤でも出色の一枚だと思う。

◎ラインスドルフ/バイエルン放送交響楽団によるマーラー1番・3番・6番

すっきりと見晴らしの良い、力感も素晴らしい、美しい演奏。
ラインスドルフのマーラーはもっと評価されても良い。

◎イーヴォ・ボゴレリチの悪魔的な「展覧会の絵」

今年の6月は「展覧会の絵」がマイブーム。
フェドセーエフの大暴れする「展覧会」も楽しさの極み。

◎ユジャ・ワンの『Transformation(変容)』

今年シュリメとともに魅了されたのが、このユジャ・ワン。
切れ味と音楽性の奇跡的な遭遇。
2011年度も大ブレーク間違いない。

◎『ためいき― フォン・オッター、フランス歌曲集』

今年の激しい夏をなんとか乗り切ることが出来たのはこの涼しいアルバムのおかげ。
別世界に遊ぶことが出来る。

◎ザラフィアンツのモーツァルト

彼のアルバムは、バッハ、ショパンも素晴らしい。
その音色の美しさは陶然とするばかりだ。
このモーツアルトも、12の変奏曲が非常にゆるやかなテンポで奏でられ、11変奏においては、まるで宇宙にただ一人浮かんで、満天に広がる星の瞬きを見ているような、胸が締め付けられるような深々とした哀しみに満たされる。

◎小山実雅恵のショパン/バラード

なにより弱音の美しさ。
その自然な呼吸。
ショパンがようやく腑に落ちた一枚。

他にもまだまだありますが、音楽はこのあたりで。

【本】

相変わらすの濫読でしたが8冊をご紹介。

◎小林秀雄と岡潔の対談『人間の建設』

名人と達人の対話。
時としてそれは禅問答のように、深いのかなんなのか判らない部分もあるけれど、それも含めて名人芸。

◎『魔王』(伊坂幸太郎著、講談社文庫)

時代と真正面に切り結ぶ言葉で書かれた小説。エンターテイメントの形をとりながら、その射程は長く深い。
伊坂幸太郎の小説の内、個人的には最も好きな小説の一つになった。

◎『1Q84 Book3』(村上春樹著)

今年社会現象にもなったこの本。
20世紀が、戦争と虐殺と暴力の世紀だとするなら、21世紀はいまだその傷痕が癒えないにも関わらず(少なくとも日本においては)一見平穏な日常が惰性のように続いている。
しかし水面下では、社会、政治、人の心は病から癒えずにもがいているようだ。
村上春樹はそうした現代に降ろされたカナリアのように、孤独な人々の閉塞感と暴力を描く。
現代の社会を覆う暴力の前で人は無力だが、例えば砂浜に落とした片耳のイヤリングを探すように困難な事であっても、この世界に美しい事は存在する、という作者の希望がこの小説を開かれたものにしているように思う。

◎『シューマンの指』(奥泉光著、新潮社)

去年から今年にかけてシューマンがマイブームになった。
小説の企みに満ちたこのミステリーは格好の暑気払いとなった。

◎『素顔のカラヤン』(眞鍋圭子著、幻冬社新書)

今年はカラヤン再発見の年だった。
いかに人は先入観に支配されるかも思い知った。
この本を読んでカラヤンのマーラー交響曲5番、6番を聴き感じるものがあった。

◎『赤朽葉家の伝説』(桜庭一樹著、創元社推理文庫)

今年後半、このなんともパワフルな物語に圧倒されました。
桜庭一樹ブームは来年に続きます。

◎『芸と噺と 落語を考えるヒント』(松本尚久著、扶桑社)

この人の落語論は面白く、ためになり今後も注目の著者です。

◎『唯識入門講座』(横山紘一著、大法輪閣)

今年は唯識の勉強に少し凝った。
入門者としてとてもわかりやすいこの本は僕のスタートラインになりました。

【番外編】

◎グレアム・グリーン原作の演劇『叔母との旅』

久しぶりに見た演劇。
その面白さに圧倒されて、時々芝居もみなくちゃな、と痛感。

◎三つの「秘密」

ドラマは『龍馬伝』や『Q10』も堪能したけれど、やはり志田未来の「秘密」は衝撃的だった。
広末涼子主演の映画版、原作本も楽しめ、年末は秘密三昧の日々をおくった。

以上、話は尽きませんが、今年はこの辺りで。

では皆様良いお年をお迎え下さい。
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by maru33340 | 2010-12-31 14:18 | お勧めの本 | Trackback | Comments(1)
2010年 12月 28日

『少女七竈と七人の可哀想な大人』(桜庭一樹著、角川文庫)

桜庭一樹の『赤朽葉家の伝説』を読み、この作家はただ者ではないと感じ、この『少女七竈と…』を読み、改めてこの人の物語る力が尋常ではないと感服した。
不思議な人物による不思議な物語は、その風変わりな文体とマッチし、何故か先へ先へと読みたくなる。

おそらく僕はこの人の文体の持つリズムと肌あいが会うのだろう。

もっとこの人の物語を読みたい。
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by maru33340 | 2010-12-28 12:19 | お勧めの本 | Trackback | Comments(0)
2010年 12月 26日

やはり浅田真央が帰ってきた

今シーズンの浅田はジャンプを修正したため、これまで思うような演技が出来なかった。
安藤美姫の好調、村上佳奈子の成長を目の当たりにして、相当の焦りもあったと思う。

しかし僕は浅田の土壇場での復活を何度も見てきたので、必ず必ず世界の舞台に帰ってくると信じていた。

昨日の世界選手権は、自身もラストチャンスと語ったように、まさに背水の陣での戦いだったが、やはり彼女はただ者ではなかった。
ショート、フリーともに完璧な演技に涙が止まらなかった。

しかし、安心はしていられない。

村上、庄司といった次の世代が着実に力を付けてきている。

今、女子フィギュアスケート界はまさに戦国時代。
益々眼が離せません。
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by maru33340 | 2010-12-26 22:21 | お勧めの本 | Trackback | Comments(2)
2010年 12月 26日

『LOVE SONGS』アンネ・ゾフィー・フォン・オッターによる至福の世界

このアルバムは、アンネ・ゾフィー・フォン・オッターとジャズピアニストのブラッド・メルドーによる大人のLOVE SONG集。
一枚目はメルドー作曲による七曲の歌曲。
二枚目はフレンチ・シャンソンを中心にしたポピュラー・ソング集。
この二枚目が何とも素晴らしい。
憂いと慈しみに満ちた彼女のメゾソプラノの声は、冬の霧のように、聴くものの心の奥底に静かに染み入る。

灯かりを消して一人で眼を閉じてこのアルバムを聴く時間はまさに至福としか言い様がない。
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by maru33340 | 2010-12-26 17:01 | お勧めの本 | Trackback | Comments(1)
2010年 12月 24日

三つの「秘密」

先日終了したドラマ『秘密』は主演の志田未来の演技が出色だったけれど、この作品は以前広末涼子主演で映画化された。
その映画がテレビ放映されたので録画し、昨日ゆっくり見た。

映画版もまた良い出来で、ドラマ版の胸が苦しくなるような緊張感とは違い、全体的にコミカルな味わいのファンタジーになっている。
その味わいは父親役の小林薫の演技によるものが大きいけれど、この映画の見所はなんといっても当時18歳の広末涼子の、弾けるような若さに満ちた美しさと物おじしない伸び伸びとした演技だ。
彼女は、明るく感受性の強い主人公を屈託なく演じとても魅力的。
『おくりびと』や『龍馬伝』の広末涼子も魅力的だったけれど、「これは作品に恵まれたから…」と思っていた自分の不明を恥じた。
彼女は天性の女優でありました。

二つの「秘密」を見た勢いに乗り、原作を読み始め昨夜一気に読了。

より原作に近いのはドラマ版。
映画版は2時間少しという制約があるため、設定を大きく変更している部分があり、成る程と思う。

そして、原作とドラマ版・映画版とはその設定に決定的な違いがあるけれど、それは…

「秘密」です。
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by maru33340 | 2010-12-24 07:53 | お勧めの本 | Trackback(1) | Comments(0)
2010年 12月 22日

落語を巡る十篇の短編小説のような

先日このブログでご紹介した、松本尚久著『芸と噺と 落語を考えるヒント』を読了。

これは実に素晴らしい本だった。

差し詰め、落語を巡る十篇の短編小説のような緻密な構成から、一人ひとりの落語家の美質が浮き彫りになる。

どの話もいいけれど、やはり小満んの章と松之助の章が、僕には特に印象が残った。
(小金治や金馬の語る昭和初期の寄席風景の話もうっとりするほどいい話だけれど)

どの章も師匠と弟子との関係が、大きなテーマだが、文楽と小満ん、松鶴と松之助とさんま、という二組の師弟関係がなんとも味わい深い。

かつて、こんなに素敵な師弟関係があったのかと思うと、胸が熱くなるようだ。
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by maru33340 | 2010-12-22 22:50 | お勧めの本 | Trackback | Comments(2)
2010年 12月 21日

ごうごうと鳴るジャックリーヌのチェロ

ジャックリーヌ・デュプレのブラームス/チェロソナタを聴いている。

僕が今まで聴いていたのはフルニエによる品のいい渋い演奏だったけれど、デュプレの激しく弦をたたき付けるような、(宮沢賢治のチェロのように)ごうごうと鳴るブラームスは、また違う味わいだ。
所々で、胸の奥から突き上げるようなジプシーの民の浪漫の響きが噴出するのも、いかにもデュプレらしい。
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by maru33340 | 2010-12-21 07:52 | お勧めの本 | Trackback | Comments(2)
2010年 12月 19日

立川談志の「芝浜」

談志入門は最近出始めた、「落語CDブック立川談志1」に収められた「芝浜」から。
昭和57年12月9日「落語家生活30周年立川談志ひとり会」による録音だから、談志46歳の時である。

僕が最初に聞いた「芝浜」は志ん生の録音。
この演目を十八番にしていた三木助が亡くなった直後の落語会で、三木助がやるはずだったこの噺を代わりに志ん生がやったもの。
志ん生は枕で「三木助さんが、遠い所にいっちゃて、あたしが、代わりにこの噺をするん。」などと語っている。
あっさりした演出で、ケレンミなく、「ああ、いい噺だなあ」と感じた。
後に三木助の「芝浜」を聞いた時には、あまりにおかみさんが美化されているようで、ちょっと違和感を感じた。

で、談志の「芝浜」。

始まってしばらくは、その乱暴で、えばりんぼうで、ぶっきらぼうな主人公に違和感を感じる。

しかし聞き所はラスト近くにやってくる。

おかみさんが財布の件を話す所で、本気で涙ながらに、しかし「私が悪いんじゃないんだ」との言い訳もタップリに、主人公に真相を語る。

やはりここんところに談志らしさがあるなあ。
決して美談にせず、人間のエゴ丸だしの姿をさらしだしていく。

なるほどなあ。
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by maru33340 | 2010-12-19 23:11 | お勧めの本 | Trackback | Comments(4)
2010年 12月 19日

『芸と噺と 落語を考えるヒント』(松本尚久著、扶桑社)

僕が談志を生で見たのは、もう三十年程前、まだ例の落語協会分裂騒動の前で、談志が新宿末廣や上野鈴本の寄席に出ていた頃の事だ。
(これはもう立派な昔話だなあ。いやはや…)

袖から舞台に出る時、少し前かがみな格好でこちらを見ると、ニカリと笑う。その姿はまさに藝人だ。
座布団に座り丁寧なお辞儀をして顔を上げると、ニコリともしない仏頂面で「まあ、あれだな」てな具合で時事について、あれこれ苦言を語る。
そのまんまあれこれ雑談をして、噺に入らないで時間が来る事も多かったような記憶がある。

その後長い間、談志の高座に接していない。
チケットが取りにくい事もあるけれど、いつの間にか神格化されてしまって、その流れに乗れなかった事が要因かもしれない。

最近ようやく、少し談志を聞いてみたいなという気持ちになりはじめた所で、佐平治さんお勧めのこの本『芸と噺と』冒頭の談志の章を読んだ。

実に面白かった。

少し前にこのブログでも、この著者の『落語の聴き方、楽しみ方』という本について書いたけれど、この人の書く落語論は本物だ。

落語への愛情と理屈のバランスが絶妙で、読んでいるだけで、こちらの落語観が磨かれるような気がするのだ。

落語を語って、稀有の名著であると思います。
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by maru33340 | 2010-12-19 11:07 | お勧めの本 | Trackback | Comments(3)
2010年 12月 19日

映画『ノルウェーの森』

自宅近くのMOVIXのレイトショーで『ノルウェーの森』を見る。

これは見終わって、ずっしりと来る映画なので夜の最終回に見たのは正解だった。
(昼間に見たら半日活動出来ないとこだった。)
これはいまどき希少な正々堂々たる文芸映画。

基本的に少し引き気味の映像が美しい。
特に直子が居る施設近くの森をワタナベと二人で歩くシーンは、カメラを長く回しながら、次第に直子の感情が高ぶっていく様子をじっくり描き圧巻。

男優三人(松山ケンイチ、高良健吾、玉山鉄二)は何れも素晴らしい。

ミドリ役の新人女優(水原)は清新で演技も良く好感が持てる。

直子の菊池凛子は評価が分かれる所か。
僕のイメージの中の直子はもっと線が細く、はかない感じだが、菊池はかなり骨太のイメージだ。
(外国では受けるかも知れないけれど)
僕にはそこだけが(しかし一番大事なわけだが)残念。

直子が僕のイメージ通りなら100点満点といいたいけれど、ここはしかし人それぞれだからなあ。
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by maru33340 | 2010-12-19 00:16 | 映画 | Trackback(1) | Comments(2)