<   2011年 07月 ( 31 )   > この月の画像一覧


2011年 07月 31日

向田邦子の『胡桃の部屋』

新しく始まったドラマ『胡桃の部屋』の一回目を見損ねたので、原作を買ってきて読んだ。

これは全くもって向田邦子そのものの世界である。


主人公の桃子は、危うくて健気で、強そうで弱くて、賢いようで、気がつけば一人で空回りしているような所がある。

何処か向田邦子その人のようだ。

向田邦子は、まるで末期の眼のような透徹した観察眼で対象を見据えて、小さなエピソードに登場人物の人柄を凝縮させ、印象的で暗示的な文章でスケッチする。

構成も文章も一点の隙もない。
しかし、その隙のなさが何処か危うい。

何だか小説の事を書いているのか、向田邦子その人の事を書いているのか、次第に解らなくなってくる。


もしかすると、それが向田邦子の小説なのかも知れない、と今になって思う。
[PR]

by maru33340 | 2011-07-31 10:46 | お勧めの本 | Trackback | Comments(2)
2011年 07月 31日

ベートーベンの「清潔」

今朝はベートーベンのピアノ協奏曲の一番を聴いている。
(バレンボイム/クレンペラーによる演奏)

改めて感じたのは、「ベートーベンの音楽というのは、なんと真っ直ぐで清潔な音楽であることか」という事。

それは例えるならば、余計な混ざりもののない山の湧水を、手ですく上げて飲んだときに、その水が喉元を通り過ぎる時のような、冷たさと清潔さである。

若い時には、この清潔さと真っ直ぐな所を持つ音楽の味わいがあまりわからなかった気がする。

五十歳を過ぎて、改めてベートーベンという人の音楽の持つ本当の味わいが、深く深く心に染み入るような気がしている。
[PR]

by maru33340 | 2011-07-31 10:04 | お勧めの本 | Trackback | Comments(2)
2011年 07月 30日

上野鈴本7月下席(夜の部)

権太楼が中トリで出演しているので、上野鈴本夜の部に行く。


権太楼は、少しふっくらとして、顔色も良く体調も良さそうで安心する。
演目は「代書屋」。
何度も聞いているけれど、やはり面白い。
安心して(同じ所で)爆笑した。

今回のトリは扇辰。
演目は「妾馬」。
寄席では初めて聞いた。
扇辰は滑舌が良く、いかにも咄家風の風貌で好きな演者の一人。
ただ、この話の面白味がどこにあるのかは、ちょっと僕にはわからない所があるなあ。

残念ながら白酒は今日は出ないけれど、曲独楽の紋之助が、愛嬌タップリで笑わせてくれた。

収穫は林家彦いち。
初めて聞いたけれど、テンポ良く、面白い。
少し注目の咄家に加わりました。

やはり寄席は良いなあ。
[PR]

by maru33340 | 2011-07-30 21:28 | お勧めの本 | Trackback | Comments(2)
2011年 07月 30日

快演!グールド/ストコフスキーによるベートーベンビアノ協奏曲五番「皇帝」

先日読了した青柳いづみこの『グールド未来のピアニスト』でも言及されていた、グールド/ストコフスキーによるベートーベンビアノ協奏曲五番「皇帝」を聴いている。


これは極めつけの快演である。

冒頭から異常に遅いテンポで始まり、思わず椅子から転げ落ちそうになる。

しかし奇をてらうような感じはなく、ベートーベンの音楽の美質がいかんなく発揮され、なおかつ随所に思いがけない発見がある。

グールドのピアノの音は、バッハの演奏のようにポキポキしたものではなく、豊穣にして艶やかでロマンチックであり、この人の根底にあるロマンチストの資質が存分に発揮されている。

ストコフスキーもまた、このピアニストとの共演を心から楽しんでいるように、時に歌い上げ、時に壮大にグールドを支える。

これは生涯の愛聴盤になりそうだ。
[PR]

by maru33340 | 2011-07-30 15:34 | お勧めの本 | Trackback(1) | Comments(2)
2011年 07月 30日

スタミナ不足にベートーベン注入

蒸し暑い日が続き、少しスタミナ不足気味。

こんなときには、何故か無性にベートーベンが聴きたくなる。

今日はピアノ協奏曲で、エネルギーを注入しよう。
[PR]

by maru33340 | 2011-07-30 14:05 | お勧めの本 | Trackback | Comments(2)
2011年 07月 26日

ノルウェー乱射事件と「ハインリッヒの法則」

「ハインリッヒの法則 」というものがある。

1つの重大事故の背後には29の軽微な事故があり、その背景には300の異常が存在するというもの。

つまりは、一つの現象が発生する背景には、その事故を予測させる300の事例があるということだ。

この法則を当てはめるまでもなく、今回のノルウェーの乱射事件は、単に1人の狂信者がおこした偶発的な事故ではなく、現在のヨーロッパの置かれている、経済的・思想的な危機が背景にあることは間違いと思う。

今回の事件のアンネシュ・ブレイビック容疑者(32)は「金髪、青い目で長身の、典型的北欧人男性」であり、警察は「キリスト教原理主義と右翼思想に傾倒していた人物」としている。

その傲岸不遜で冷徹な風貌から、誰もがナチズムの再来を感じたであろう。

確かに、20代後半で極右思想に触れた容疑者は、インターネット上で移民排斥やノルウェー人至上主義の主張を展開しており、ナチズムとの近さを感じる。

また、近年の警備の傾向として、イスラム原理主義者に警戒が集中したことが、極右勢力の利益になったと指摘する声もある。

英国のキャメロン首相、ドイツのメルケル首相、フランスのサルコジ大統領はともに、過去数カ月の間に口をそろえて多文化主義は失敗だったと語っており、国家首脳の反多文化主義的発言により、弱い立場に置かれた移民が犠牲となり、更に人種間関係が悪化するリスクがある。

今回の事件が新たな世界の対立と不安を増幅するのではないかと、底知れぬ恐怖を感じるのだ。
[PR]

by maru33340 | 2011-07-26 17:47 | お勧めの本 | Trackback | Comments(3)
2011年 07月 25日

ノルウェーの銃

北欧には、ある憧れがある。

人が人として、厳しい自然の中、互いを支えながら、ゆるやかな日常を過ごす国と思っている所がある。

それゆえ、今回のノルウェーでの銃発砲事件には、慄然とせざるを得ない。

一体何が起こったのだろうか。
[PR]

by maru33340 | 2011-07-25 21:54 | お勧めの本 | Trackback | Comments(3)
2011年 07月 25日

『グレン・グールド 未来のピアニスト』(青柳いづみこ著、筑磨書房刊)

青柳いづみこは、ピアニストにして同時に稀有な文章家である。

この本で著者は、多くの映像資料や未発表の音源を元に、グールドについての一般的なイメージ(緻密な理論派にして奇人である等の)を超えて、ロマンチストとしての面も踏まえた、多面的で未来に開かれたグールド像を描こうとする。

一介の音楽好きで、主にバッハ演奏を通じてグールドを知っているに過ぎない僕には、やや専門的な記述もあるけれど、多くの未知のエピソードから浮かび上がるグールド像は、その孤独の深さにおいて僕を魅了する。

おそらく、時に持て余すであろう才能の持ち主として、青柳はグールドにシンパシィを感じているのかも知れない。

随所に挿入されているグールドのポートレート写真もまた大変魅力的なものである。
[PR]

by maru33340 | 2011-07-25 10:14 | お勧めの本 | Trackback | Comments(2)
2011年 07月 24日

小池真理子と「絶対への希求」

この所小池真理子の小説にはまっている。

昨夜は『虹の彼方』という小説を読んでいて、途中でやめる事が出来なくなり、最後まで読了してしまった。

読み終えた時は、窓の外は明るくなっており、小鳥の囀ずりが聞こえていた。

ストーリーは、夫のある48歳の女優志摩子が、5歳年下の妻子ある作家正臣と出会い恋に堕ちる。
周囲の人達を傷つけながら、二人は愛しあい、逃避行を決意する、という、全く通俗的なもの。

しかし、作者は敢えて通俗の仮面を被せながら、そこに「精神の劇」を盛り込む。

いや盛り込むというより、「精神の劇」を描きたいが故に、敢えて通俗というカキワリの型を借りると言った方が良いかも知れない。

作者の愛する三島由紀夫は、決して愛してはならない人を愛した男の心情を「至高の禁を犯す」と表現した。(この小説でも引用されている)

その言葉を借りるならば、作者は「至高の禁を犯す」愛のもたらす精神の恍惚と痛みを描きたいが故に、愛する男女の間に、いくつものタブーを設定する。

障壁が高ければ高い程、愛は肉体を離れて、精神の劇に近づいていくのだ。

数年前に作者は、公私ともに問題を抱えて、精神的に疲れ果てていたという。

この小説はその直前に書かれているが、物語には異常なまでのドライブ感があり、読むものを深くとらまえて離さない力がある。

しばらくはこの人の世界を追いかける事になりそうだ。
[PR]

by maru33340 | 2011-07-24 10:54 | お勧めの本 | Trackback | Comments(2)
2011年 07月 23日

突然差し出す『酒とつまみ』

昨夜も帰宅途中に銀座ロックフィッシュに立ち寄り、ハイボールを二杯飲みながら原田芳雄氏の冥福を祈った。

浅い時間だったので珍しく空いている。

ここのハイボールはあまりに旨いので、マスターに「何が違うんだろう」と聞くと、「いや何にも変わりません」とうつむきがちに答える。

有名なマスターなので、何か蘊蓄が語られるかと思いきや、大変シャイな人柄であった。

帰り際にお勘定を頼むと「変な本ですが…」と、突然マスターが『酒とつまみ』という雑誌を差し出す。

どうやら、僕もこのお店の客の一人として認めてもらえたようだ。
[PR]

by maru33340 | 2011-07-23 05:28 | お勧めの本 | Trackback(1) | Comments(4)