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2011年 10月 31日

古本ミステリー『ビブリア古書堂の事件手帖②』を楽しむ晩秋の宵である


晩秋の宵は、声高に語るにぎやかな浮世を離れて、少し枯れた味わいの物語が染みてくるようだ。

『ビブリア古書堂の事件手帖②』(三上延著、メディアワークス文庫)は、古書を巡るささやかな謎を、北鎌倉の古書店の若い女性店主が解く静かなミステリー。

とても地味な本なのに、口コミで読者を広げているらしい。

第1巻を読み、その語り口に魅せられ、続編を楽しみにしていた。

ゆっくりと読むことがふさわしい小説だけれど、面白くて、昨夜一気に読了してしまった。

事件らしい事件はおこらない。

あくまで本と、それを集める人を巡るミステリーだけれど、一度はまるとその小さな世界にはまってしまう。

ひょんなことから古本屋で働くようになった「僕」が、女性店主に寄せる淡いもどかしい恋心が縦糸となりながら、あくまで主役は「本」そのもの。

本への愛情が心地よい名シリーズの誕生を喜びたい。
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by maru33340 | 2011-10-31 18:30 | お勧めの本 | Trackback | Comments(4)
2011年 10月 31日

「猫町」幻影


萩原朔太郎の「猫町」に魅せられた。

原稿用紙で27枚程度の短編小説だけれど、そして随分以前に読んですっかりその内容を忘れているのに、そのイメージには妙に既視感がある。

その既視感は、まるで自分自身の心の中にずっと以前から潜んでいた心象風景のように懐かしく、そして少し怖ろしい。

詩人の清岡卓行も、「猫町」に魅せられた人であり、『「猫町」私論』(筑摩書房)という評論集の中で、一冊まるまる「猫町」について語っている。

清岡は、この小説の主人公である「私」を、朔太郎自身として、当時の朔太郎の上京後の苦しい私生活と作品を重ねて、丁寧に語っている。
(そのエッセンスは、岩波文庫の『「猫町」他』の解説にも収められてていて、こちらもとても興味深い。)

確かに、テキスト批評という観点から言えば、清岡の方法はいかにも古典的である。

しかし、ことこの作品に限って言えば、作者自身の心象スケッチのような作品と作者を切り離して考えることは難しいと思う。

というよりも、重ね合わせることで、この作品はより多層的な魅力を生むようだ。

まだ、『「猫町」私論』は最初の20ページ程を読み始めたばかり。

この私論が僕をどこに連れ去ってくれるのか、この先を読むのが楽しみだ。
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by maru33340 | 2011-10-31 12:45 | お勧めの本 | Trackback | Comments(2)
2011年 10月 30日

図書館の楽しみ

新しい事を調べるために本を探したり、今まであまり馴染みのない世界の音楽を聴いたりするには、やはり図書館に行くのが近道のよう。

自宅の本やCDも少しずつ整理しないと増えるばかりで、収集もつかず、物理的制約もあるという事情もある。

今日は、最近読み返したいと思った萩原朔太郎の『猫町』関係の本と正岡子規についてのエッセイを借りる。

音楽はこれも最近興味を持ち始めた有田正広さんのフラウト・トラウ゛ェルソによる18世紀のフルート音楽であるブラウ゛ェとヘンデルの作品集、イタリア・バロック・オーボエ協奏曲集のCDを借りてきた。

今はそのブラウ゛ェのフルート・ソナタを聴いているけれど、実に清潔で気品に満ちた優雅な響きに、何とも言えない良い心持ちになる。

眠る前の音楽として、こんなに相応しい音楽はあまりないようだ。
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by maru33340 | 2011-10-30 22:47 | お勧めの本 | Trackback | Comments(2)
2011年 10月 29日

風の音楽

「偉大なる世紀のフルート音楽」という、18世紀のフランス、ルイ14世の時代のフルート音楽を集めたアルバムを聴いている。

作曲者は、ジャック・マルタン・オトテール、ミシェル・ブラウ゛ェ、ボワモルティエなど馴染みのない人々だけれど、その音楽はとても心地よい。

有田正広による、フルートの古楽器であるフラウト・トラウ゛ェルソの音色は、温もりに満ちた、何処か尺八に似た、風のような音で、耳に心地よく、本を読みながら聴いていると、いつの間にか微睡んでしまう。

まさに桃源郷のような音楽です。
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by maru33340 | 2011-10-29 21:33 | お勧めの本 | Trackback | Comments(4)
2011年 10月 29日

下北沢文士町があった

萩原朔太郎が下北沢に住んでいた事を知り、少し検索した所、昭和初期にここには多くの文士が住んでいたという事を、寡聞にして初めて知った。

横光利一、斉藤茂吉、大岡昇平、安岡章太郎、そして吉田健一も。

まだまだ枚挙にいとまがない。

更には砧に映画の撮影所があったことから、映画関係者や芸術家が多数住んでいたそうな。

こりゃもう少し調べなくては。
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by maru33340 | 2011-10-29 10:27 | お勧めの本 | Trackback | Comments(2)
2011年 10月 29日

秋から冬への音楽

「一年で一番好きな季節は?」と聞かれれば、四月生まれの僕は長く「春」と答えてきたけれど、ここ数年は秋から冬に向かう晩秋が一番気持ちよく感じる。

少し肌寒いけれど、まだコートを羽織る程ではなく、少しの間なら公園のベンチに座って本が読める程度の今の季節は、頭も一段と冴えるようだ。

音楽なら、少し華やぎを持ちながら適度に内省的な音楽がふさわしい。

例えばモーツアルトのクラリネット五重奏曲や「魔笛」。

そしてブラームスの交響曲二番。

もう少し寒くなるとやはり弦楽四重奏曲が染みる。

葉を落とした樹木の姿と、弦楽四重奏曲の余計なものをそぎ落とした気配がとても似合うのかも知れない。

バリリ四重奏団の懐かしい音色のベートーヴェンは、暖炉のように心まで暖めてくれるようだ。

12月にはレクイエムを。

モーツアルト、フォーレ、ブラームス・・・

受難の劇は、やはり12月にこそふさわしい。

年が明けて氷が張るような朝には、やはりバッハの無伴奏バイオリン曲。

演奏は、厳しさを極め、徹底的に甘さを廃した庄司沙矢香で。

これだけ厳しい演奏を聴くには相当の覚悟がいるので、一生の内にそう何度も聴くことは出来ない。

秋から冬へ、音楽の喜びは尽きることはない。
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by maru33340 | 2011-10-29 05:37 | お勧めの本 | Trackback(1) | Comments(3)
2011年 10月 28日

萩原朔太郎は下北沢に住んでいた


「猫町」で有名な詩人の萩原朔太郎は、僕には前橋の人というイメージが強い。

上州の空っ風にマントをなびかせて、眉を顰めている姿が頭に浮かぶ。

そんな朔太郎が下北沢に住んでいたことを、吉田篤弘の小説『空ばかり見上げた』のあとがきで知った。

この小説は散髪屋さんが主人公だけれど、作者の吉田さんが通っていた散髪屋のある場所が、かつて朔太郎が住んでいた場所なのだという。

彼はそのことを、たままたその下北沢の散髪屋帰りに寄った古本屋で見つけた朔太郎の本で知ったのだ。

なんたる偶然。

しかし朔太郎と下北沢とはなんともミスマッチな気がする。

竹中直人が酒を飲みオダをあげて、柄本明が自転車で徘徊する下北沢を(時代は違えど)あの朔太郎が(おそらく)うつむき加減で歩いていたと思うとなんともおかしい。

今度また下北沢を訪問しなくちゃ。
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by maru33340 | 2011-10-28 22:59 | お勧めの本 | Trackback | Comments(2)
2011年 10月 28日

ブラームスがお好き


晩秋の朝の冷えた空気程清々しいものはあまりなく、この空気の中で音楽を聴いていると、音楽がくっきりとした輪郭で浮かび上がる。

今朝はピエール・モントゥーの指揮によるブラームス交響曲2番を聴きながら、銀杏並木の下を歩いた。

ゆるやかな序奏が始まると、目の前に広々としたドイツの田園風景が広がり陶然となる。

モントゥーの指揮はどこにも力みがなく、優雅な音楽が滔滔と流れて澱むことがない。

音色はセピア色の景色のように懐かしく、終楽章のダイナミズムも、生きることの喜悦を感じさせてくれる。

晩秋はまた、ブラームスの季節でもあったのだ。
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by maru33340 | 2011-10-28 17:46 | お勧めの本 | Trackback | Comments(2)
2011年 10月 28日

『空ばかり見ていた』(吉田篤弘著、文春文庫)


この連作短編集の、懐かしいような淋しいような、まるで晩秋のすんだ青空を見上げるような雰囲気は、まぎれもなく吉田篤弘さんの小説の世界である。

主人公のホクトさんは世界を放浪する散髪屋さんである。

昔、外国でパントマイムを学んだこともある彼は、散髪にもパントマイムの身のこなしが出ているようで、どこか優雅である。

主人公とは言いながら、12の短編の中には、彼はほんの点景人物としてだけ登場する作品もある。

彼は決して表に出ることはなく、いつも静かに佇み、世界と適度な距離を保ちながら、水のように世界を放浪する。

その自由できままな生き方は、読むものの憧れを誘い、こんな生活もありえたのかと思うと、日常のしがらみの中で生きる僕の心は少しだけ軽くなる。

読み終わるのが惜しくて、次第に読む速度を落としたくなるような本に出会うことはとてもまれなことだけれど、この本はそんな喜び(と読み終える痛み)に満ちたまれな本だ。
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by maru33340 | 2011-10-28 17:45 | お勧めの本 | Trackback | Comments(2)
2011年 10月 27日

晩秋の朝に『魔笛』を聴く

今朝も冷えるけれど、気持ちよく晴れた朝になった。

ふと思い立ち、久しぶりにクレンペラーの『魔笛』を聴きはじめたら、晩秋の朝にとても相応しい音楽であると改めて思った。

このまま『魔笛』を聴きながら、『楡家の人々』の文庫本を携えて、何処か北の方に旅に出たくなるような朝です。
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by maru33340 | 2011-10-27 07:19 | お勧めの本 | Trackback | Comments(5)