新・クラシック音楽と本さえあれば

maru33340.exblog.jp
ブログトップ

<   2013年 08月 ( 7 )   > この月の画像一覧


2013年 08月 26日

ドビュッシーの開いた窓

ここ数日ドビュッシーの音楽を聴き続けている。

そのきっかけはやはり、DVDで映画『さよならドビュッシー』を観た日が、彼の生誕131年目にあたるというシンクロニシティーに驚いたことが大きい。

あの映画での「月の光」の演奏は素晴らしかった。

そして、その出会いは偶然ではなく、「もう一度ドビュッシーの音楽を聴きなおしなさい」という天の声であるよう思い、その後アラウやアンジェラ・ヒューイットによる演奏を聴いては、今更ながらドビュッシーの音楽の新しさ、瑞々しさに心打たれている。

今まで30年以上彼の音楽を聴いてきたけれど「本当に天才だ」と心から感じたのは、実にうかつなことだけれど、初めてのような気がする。

こんな時は、吉田秀和さんに聞くことになる。

するとやはりその『名曲300選』にこんな風に書いてあった。
「ドビュッシーについては、彼が音楽の印象派の始祖であるとかなんとかいろんな歴史的・思潮的位置づけが行われている。そうしてこういう位置づけは、それを考えるものの考え方の正確さと厳密さに応じて、大いに意味があるわけだけれども、私たちはまず、彼が、音楽をまったく新しく自分の耳を通じてとらえたことから出発しなければなるまい。彼くらい≪自分の音≫で書いた人はいなかった。(中略)音楽は、ドビュッシーの開けた窓を通じて、新しい大気を呼吸しはじめた。」

いつものようにこの言葉に付け加えることはなにもない。

後はただ、ドビュッシーの開いた窓から吹き込んでくる風のような音楽に虚心に耳を澄ますばかりだ。
[PR]

by maru33340 | 2013-08-26 16:01 | クラシック音楽 | Trackback | Comments(4)
2013年 08月 19日

猛暑に聴くハイドン

今月は8月2日から仕事が続き、西へ東への出張の後、引き続き10日から14日まで炎天下の京都での5日間の学芸員資格スクーリング。

その間休みは2日間だったけれど、半日仕事に出たり移動日だったりして、猛暑の中、半月間の間、ちゃんと休めていなかった。

さすがに心身共にバテテしまい、昨日今日とほとんど家から出ずに(研修の事後レポートを書く以外は)終日寝て過ごした。

あまり本も読めない中、唯一聴けたのがハイドンの音楽。

何よりその清潔なたたずまいが、僕の心を落ちつかせてくれる。

ハイドンの素晴らしさを明晰な言葉で表現しているのは、やはり誰あろう吉田秀和さんなので、しかも今まで何度も読んだ『名曲300選』にしっかりと、こんな風に書かれている。
「ハイドンは、即興と情熱の一時的な戯れを拒否し、すべてが着実で、論理的に一貫し、作品の統一と安定、表現の純粋と真実が達成されている。しかも、すばらしいことには、それが、みせかけの悲愴や厳粛をともなわず、むしろ明るくて活発な機知とユーモアを失わない、本当の思索となっていることである。」

この言葉に付け加えることはなにもない。

今もハイドンの弦楽四重奏曲を聴きながらパソコンに向かっているけれど、疲れで凝り固まった頭と体に少し風が吹き抜けるような心持ちになるのだ。
[PR]

by maru33340 | 2013-08-19 19:20 | クラシック音楽 | Trackback | Comments(6)
2013年 08月 14日

京都で聴くバックハウスのハイドン

昨日で京都でのスクーリングは四日目。

連日の展覧会展示実習で身体がきつい。

夜に行こうと思っていた大田和彦さんお薦めの居酒屋「赤垣屋」は残念ながらお盆休み。

やむなく三条から祇園方面に歩き、焼き鳥屋で軽く食べてから、「祇園サンボア」(この店には、大田和彦さんや吉田類さんも良く訪れて、静かに飲んでさっと帰られるらしい)に向かう。

祇園にあるカウンターバーの老舗だけれど、敷居は低く、モト冬樹似のシャイなマスターの感じも良い。

たまたま隣に座った男性と、日本人の宗教感について雑談が弾み、楽しい時間を過ごし、少し昼間の疲れを癒した。

祇園から四条の南座の前を通り、外国からの旅行者でにぎわう先斗町を抜けて宿に帰る。

途中レコード屋があったので、ふらっと立ち寄ったらclassicのコーナーが充実していて、嬉しくなり、バックハウスのハイドン、ケンプのイギリス組曲、アンジェラ・ヒューイットのフォーレのアルバムを購入してしまう。

早速バックハウスのハイドンから聴き始めたら、これがとても素晴らしい。

今までバックハウスではベートーヴェン、バッハを聴いて僕にはどうもしっくりこなかったけれど、このハイドンは、タッチも美しく軽やかで、まるで清流に遊ぶような心持ちがする。

嬉しい発見でありました。
[PR]

by maru33340 | 2013-08-14 08:34 | お勧めの本 | Trackback | Comments(5)
2013年 08月 13日

京都にて

8月10日から学芸員資格過程のスクーリングのため京都に来ている。

研修は5日間で、今日で四日目。

猛暑の京都で連日朝9時から夕方6時までの実習はさすがに肉体的にも精神的にもきついものがある。

初日、二日目は京都らしい居酒屋で旨いものを堪能したけれど、さすがに胃もつかれてしまい昨夜は近くのカフェで身体に優しい食事を取り、そのあと路地裏の渋いブックカフェである「ELEPHANT FACTORY COFEE」で深煎りの珈琲を飲んで過ごした。

京都の路地には他の街にはない深い闇が立ち込めているようだ。

そういえば先日読んだ太田和彦さんの本にこんな言葉があった。
「京都でいちばん嫌われるのは「竹を割ったような人」と聞き、目からウロコが落ちた気がした。「竹を割ったような人」は関東では男の最大の褒め言葉だが、きれいに割り切った人はつまらない、どこかに秘密や嘘があるからその人の魅力がある。これば大人の、フランス人の世界だ。京都はパリなのだ。」

夜の京都の木屋町あたりの路地裏を歩いていると、その言葉の意味が良くわかるような気がする。
[PR]

by maru33340 | 2013-08-13 06:54 | 日常 | Trackback | Comments(4)
2013年 08月 07日

必見の名画『25年目の四重奏』のこと

f0061531_20261922.jpg

今日は代休。

昨日一昨日と広島出張で、明日からまた二日間の東京出張。
体調も優れず、激しい暑さでもあり、家でゆっくりしようかとも思ったけれど、静岡で映画『25年目の四重奏』が上映中であることを思い出した。
今日を逃したらおそらく劇場で観ることは難しそうなので、勇気をふりしぼって観に行った。

友人も推奨していた通り、これはclassic音楽ファンのみならず全ての映画好き必見の名画でした。
結成25周年を迎えた弦楽四重奏団のフーガが演奏会の曲目に選んだのは、ベートーヴェンの弦楽四重奏曲の傑作である14番。
この曲は、全7楽章を途中で休むことなく演奏しなければならない。
当然ながら、途中でチューニングすることは不可能だから、演奏者には極度の集中力が求められ、例え音程が狂ってしまっても最後まで演奏を続けなければならない。
最後の演奏会を前に楽団の父親的存在であるチェリストのピーターが病により今期限りで引退を決めた。
これをきっかけに楽団員の人間関係にも不協和音が生まれ、一時は演奏会の開催も危ぶまれる。
そんな中で、最後の演奏会が始まる...

ベートーヴェンの音楽とストーリーは絶妙にリンクし、音楽・カメラ・テンポ全てが絶妙のバランスで絡み合いあり、一点の隙もない。

ピーターを演じる『ディア・ハンター』で有名なクリストファー・ウォーケンは、音楽の使徒とでも言うべき真摯な老チェリストを素晴らしい演技で演じ(カザルスとの思い出を語るシーンが凄い!)、他の三人のメンバーも非常に良い。

まだ未見の方のために語ることは控えるけれど、演奏会の最終楽章で起こるシーンには、本当に胸を打打たれ、涙が止まらなかった。

あんまり良い映画だったので、何十年ぶりに映画のパンフレットを買ったら、おまけにベートーヴェンの弦楽四重奏第1楽章冒頭部分の楽譜がついてきて、なんだかとても嬉しかった。
ちょっとしゃれてますね。

広島を訪ね錯綜する想いに心乱れ、この所の日本の社会状況にもくさくさして少し絶望的な気分でいたけれどいたけれど、「そうだ、まだ音楽が、映画があるじゃないか。」と、微かな希望に満たされ映画館を後にしたのでした。

追記

この映画の最後近く、アンネ・ゾフィー・フォン・オッターが歌う素晴らしいシーンで流れる曲は、コルンゴルドのオペラ≪死の都≫作品12より「マリエッタの歌」であるとわかった。
実に素晴らしい歌声である。
[PR]

by maru33340 | 2013-08-07 20:26 | 映画 | Trackback | Comments(6)
2013年 08月 06日

原爆の日、出張で広島へ

f0061531_219771.jpg

昨日から一泊で広島へ出張。

奇しくも原爆の日に重なった。

広島市内は式典のため宿が取れず、呉のホテルに宿泊する。

今日は仕事は午後からだったので、歩いてホテル近くのヤマトミュージアムを訪問し、途中の公園で黙祷のサイレンに出会い頭を垂れる。

呉港は、今も造船の街。
戦艦大和を作った名残が街のあちこちに残る。

ヤマトミュージアムでは、戦艦大和や零戦の模型に出会い、原爆の日に見るその姿に複雑な想いが胸を去来した。

あの夏から68年。

我々は何を学び、何を失ったのだろうか...
[PR]

by maru33340 | 2013-08-06 21:09 | お勧めの本 | Trackback | Comments(5)
2013年 08月 05日

朝のボックスシートで西へ

今日から広島に出張。

朝、早く目覚めてしまい、TSUTAYA で借りた映画『どですかでん』を見てしまう。

この世は所詮一幕の幻に過ぎぬのか、との思いを抱えたまま、夢かうつつか定かではない頭で、早朝の岐阜行きの東海道線に乗り込めば、近頃珍しいボックスシート。

北鉄かいな、と思いしばらく走れば、快晴転じて激しいにわか雨。

ほぼ満席の朝のボックスシートの人々は誰も無口で、疲れているように見える。

西に向かう朝は、いつもどこか浮き世を少し離れて異界に向かう道行きのような気持ちになるけれど、『どですかでん』を見てしまった朝は、更に摩訶不思議な心持ちになる。

雨の中、列車は増水した天竜川を越えて、警笛を鳴らし西に向かう。

どですかでん、どですかでん...
[PR]

by maru33340 | 2013-08-05 07:14 | お勧めの本 | Trackback | Comments(4)