新・クラシック音楽と本さえあれば

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2017年 07月 31日

永遠の光を探しに

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今日は東京出張。
会議は午後からなので朝一番で先日行きそびれた学習院大学史料館で開催中の展示「永遠の光(アルカディア) -辻邦生『夏の砦』を書いた頃-」を見に目白に向かう。

初めて訪れる史料館は、大学のキャンパスの片隅にひっそりと樹々の中に埋もれ時間から取り残されたような風情で佇んでいた。
(少し学園祭のサークル発表のような)展示は素朴な味わいが好ましく、辻の手書きの原稿や書簡が小さなスペースに所狭しと並ぶ。

一昨日が命日だった辻邦生は「私は四季それぞれが好きだが、特に好きなのは夏で、青空に盛り上がる眩しい積乱雲、海から吹く風、打ち寄せる白波、森の中の読書、青い山脈の連なりなどを思い描くだけで胸が踊る」と書いている程夏という季節を愛した作家だった。

この展示を、彼が愛した季節に、彼が教鞭を取っていた場所で見るのはどこか胸の奥がざわめくような思いがした。
(配布されているパンフレットが無料でもらえるものとしては驚く程丁寧で行き届いた素晴らしいものだったことを書き添えておきます)
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by maru33340 | 2017-07-31 18:54 | お勧めの本 | Trackback | Comments(4)
2017年 07月 30日

秋きぬと…

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午前五時、ひぐらしの鳴く声で目が覚める。
その声も止み、間もなくミンミン蝉が鳴き始める時間だけれど、ほんの少しの間あたりが静寂に支配される時間がある。

一瞬「永遠」という言葉が浮かぶ。
やがて鳥の鳴き交わす小さな声で静寂は破られハッと意識が現実に戻される。

間もなく八月。
立秋を過ぎれば季節はもう秋。
ひぐらしの鳴き声は、まだまだ日中は厳しい暑さが続くけれど、そのさなかにも秋を迎える準備が進められていることに気づかせてくれる。

この季節にはフォーレの歌曲(エリー・アメリンクとジェラルド・スゼーによるもの)がふさわしいよう。

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by maru33340 | 2017-07-30 05:22 | お勧めの本 | Trackback | Comments(2)
2017年 07月 29日

「動的平衡」とはなんぞや?

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前回のブログに書いた「これからがこれまでを決める」という考え方は、ちょうど読みかけて挫折していた福岡伸一博士の本『動的平衡』の中にも出ていたことを思い出し、何とかその本を読了した。

超文系人間の僕には正直わからない事も多々あるけれど、ここには今まで僕が思っていた生命観とはまるで違う考え方が展開されていることだけは感じ取れた。

「生体を構成している分子は、すべて高速で分解され、食物として摂取した分子と置き換えられている。身体のあらゆる組織や細胞の中身はこうして常に作り変えられ、更新され続けているのである。
だから私たちの身体は分子的な実体としては、数ヵ月前の自分とはまったく別物になっている。分子は環境からやってきて、いっとき、淀みとしての私たちを作り出し、次の瞬間にはまた環境へと解き放たれていく」

つまりは分子の流れ自体が「生きている」ということであり、この事を福岡博士は「動的平衡」と呼ぶ訳だけれど、正直こうして引用していてもまだまだ釈然とはしない。

しかしここには「何か大切なものがある」事だけは直感として感じ取れるから、次は西田哲学と生命をめぐる対談『福岡伸一、西田哲学を読む』を読んでみよう。
(益々混乱を深めるだけかも知れないけれど…)
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by maru33340 | 2017-07-29 16:39 | お勧めの本 | Trackback | Comments(5)
2017年 07月 27日

「これから」が「これまで」を決める?

理論物理学者の佐治晴夫氏のインタビューを何気なく読んでいてこんな言葉に出会った。

「自分の体を構成している60兆の細胞のうち、約1%、つまり6千億が一晩のうちに入れ替わるそうです。昨日と同じ自分はもうどこにもいないし、数ヶ月後には別人と言ってもいいでしょう。そう考えると、人は何回でも生まれ変われる。
よく、「過去・現在・未来」といいますね。この時間の流れから考えると、「これまで」が「これから」を決めると思うかもしれません。でも、いまみなさんが思い浮かべている過去は、脳の中にメモリとして残っているものに過ぎず、実在しているものではありません。とすると、これからどのように生きるかによって、過去の価値は、新しく塗り替えられることになります。未来が過去を決める、「これから」が「これまで」を決めるのです」

最後の「これからがこれまでを決める」という言葉はつい最近会社の研修で出会い気になっていた言葉だったのでそのシンクロニシティに少し驚いた。

「過去は未来によって新しく塗り替える事が出来る」という考え方は、ともすれば過去を振り返り反省しがちな僕には新鮮な考え方で、少し心に光が射し込んで来るように感じます。
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by maru33340 | 2017-07-27 06:30 | お勧めの本 | Trackback | Comments(3)
2017年 07月 26日

いにしえの王女のために

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昨日今日は蒸し暑いけれど陽射しは少し雲に遮られ、ジリジリするような暑さからは少し解放された。
あまり暑いと蝉も鳴かないようだけれど今朝はあちらこちらから鳴き声が聞こえてくる。
少しでも爽やかな朝になればとサンソン・フランソワのピアノによるラヴェルの「亡き王女のためのパヴァーヌ」を聴く。
ベラスケスの描いたマルガリータ王女の肖像画からインスピレーションを得て作曲されたとも言われているこの曲をフランソワは詩情豊かに弾いている。
彼独特のテンポの揺れはラヴェルの音楽にふさわしく、いにしえの王宮の王女に思いをはせ一時暑さを忘れる。
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by maru33340 | 2017-07-26 05:49 | クラシック音楽 | Trackback | Comments(4)
2017年 07月 24日

夏の朝のブラームス

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曇天の掛川を出発し出張のため東京に向かう。
昨夜友人からきた「夏の夜にブラームスを聴いています」というメールを思い出し、フランスの往年の名ヴァイオリニスト、ミッシェル・オークレールによるブラームスのヴァイオリン協奏曲(1958年録音)を聴き始める。
厳し過ぎずしかし甘すぎないその音色から、ブラームスがこの曲に秘めた詩情と香気があたりに花びらが散るようにこぼれ落ちるよう。
しかしベルイマンの映画のワンシーンのような彼女のジャケットの表情から、将来を嘱望されながら左手の故障により30代の若さで第一線から退かざるを得なくなった哀しみのようなものを感じるのは少し感傷的に過ぎるだろうか。
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by maru33340 | 2017-07-24 08:12 | お勧めの本 | Trackback | Comments(5)
2017年 07月 23日

演劇的な、あまりに演劇的な

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脚本家坂元裕二の作品『往復書簡 初恋と不倫』を届いたその日に読了した。
(友人もまた同じ日に届いたその本を読んでいた)

元は舞台で演じられた脚本。
男女の往復書簡(メールも含む)による作品が二つ。

最初の作品を読み始めそのスリリングな展開に時を忘れ(息をするのも忘れる程)引き込まれ読み終えて深いため息をついた。

坂元裕二のドラマ『カルテット』や『最高の離婚』等で僕らが良く知っている、はぐらかすようで実は繋がっているストーリー、細部への異様なこだわり、一筋縄ではいかない人物像等の手法が「二人」という限定された設定によってより鮮明に浮かび上がる。

この作品はまさに弦楽四重奏曲のように、ひとつひとつの楽器(人物)が時に融和しそして反発し、時に対話しそして闘い、時に破綻しながらもクライマックスを迎え終局に向かう。

坂元の作劇術の「核」にあるものに触れるような思いのする演劇的な、あまりに演劇的な作品で、実際の舞台で生身の役者によって演じられるのを観たいと(読みながら何度も)渇望した。
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by maru33340 | 2017-07-23 06:02 | お勧めの本 | Trackback | Comments(2)
2017年 07月 19日

『夏の砦』再読

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先日新聞で辻邦生さんの小説『夏の砦』を巡る展覧会が学習院大学の史料館で開催されると知る。

懐かしい書名に久しぶりに出会い再読したくなり調べてみると、今は文庫本は絶版となっているらしく古本を注文し昨夜届いたので早速読み始めた。

この小説は何度も読んだはずなのに物語ほとんど覚えておらず、しかし主人公の支倉冬子の事はしっかり記憶にあり、というより、僕が学生時代に書いた拙い小説(今読むと赤面してしまうほど)の主人公はまるで冬子そのものだったことを鮮明に思いだした。

学生時代にはその知識はまったくなかったヨーロッパのタピスリーや染織の事を今は仕事を通じて少し知ったので、冬子の手記が一層胸に迫るような想いがあり、物語が我が事のように感じられ、まるで身体ごとその世界に引き込まれるような気がする。

この小説に再会したことが、もしかするとこれからの僕の生き方を左右するかも知れない、そんな予感さえしています。
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by maru33340 | 2017-07-19 05:24 | お勧めの本 | Trackback | Comments(4)
2017年 07月 18日

「ラ・ヴァルス」、夜の冷たい熱狂

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連日の猛暑。
少しでも涼しくなる音楽を求め最近はラヴェルの音楽三昧。

モニック・アースのラヴェルピアノ音楽全集は、彼女のクールで泡立ちの良いピアノの音が良く冷えた上質のシャンパンを感じさせてくれるから、夜に朝に聴いていて飽きることがない。

このアルバムを聴いていると、ドビュッシーの音楽が水の音楽なら、ラヴェルの音楽は夜の音楽なのだとつくづく実感する。

アンドレ・クリュイタンス指揮パリ管弦楽団によるラヴェル管弦楽全集も最近また改めて聴き直してその演奏の素晴らしさを改めて実感している。

サンソン・フランソワのピアノによる2つのピアノ協奏曲は「粋」という言葉を音楽にすればこうなるというお手本のようだし、「ボレロ」や「ラ・ヴァルス」の夜の薫りに満ちた冷たい熱狂は他の演奏からは感じること出来ないものだ。

まだまだ夏はこれから。
しばらくラヴェルの音楽に涼を求める日々が続きそうです。
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by maru33340 | 2017-07-18 12:16 | お勧めの本 | Trackback | Comments(2)
2017年 07月 13日

「無印良品」の本のこと

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先日本屋で見つけた「MUJI BOOKS」。
いかにも「無印良品」というデザインが楽しい。
小振りで薄めの文庫本サイズだけれど編集が良く内容も充実している。

小津安二郎と柳宗悦の考え方は「日々の生活の中に美しいものを取り入れ丁寧に暮らす」という今回のアートハウスの展覧会のテーマのお手本にもなるよう。

小津の「何でもないものも二度と現れない故にこの世のものは限りなく尊い」という言葉は、"ものの哀れ"という日本人の心の奥深くに潜んでいる感受性のあり方を一言で表現した美しい言葉だと思う。
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by maru33340 | 2017-07-13 06:59 | お勧めの本 | Trackback | Comments(4)