新・クラシック音楽と本さえあれば

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2017年 09月 18日

ごめんね、エミール

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夜半、台風が来た。

激しい暴風雨が僕のいるマンション角部屋をガタガタと揺らす音で目覚め、何か台風に負けない音楽を聴きたくなり、久しぶりにエミール・ギレリスの弾くベートーヴェンのピアノ・ソナタを聴き始めた。

エミール・ギレリスのベートーヴェンは、真っ直ぐで、おおらかで、小賢しい計算などない、深々とした情感に溢れた大きな大きなベートーヴェンで、本当に信頼できる大人の音楽だと改めて痛感。
(一国の指導者もまたかくありたいなどと余計な事も思ったりして…)

今まで持っていながら何となくギレリスのベートーヴェン集を聴いていなかったのは、ギレリスはバリバリ弾くピアニストというイメージに支配されていたから。

確かにそのタッチは力強く明晰だけど、決して力だけでグイグイ押しまくるというタイプの演奏ではなく、響きは濁りなく美しく、知的で繊細さもある。

長くギレリスというピアニストを誤解していました。

ごめんね、エミール。
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# by maru33340 | 2017-09-18 05:38 | お勧めの本 | Trackback | Comments(4)
2017年 09月 15日

君たちはどう生きるか?

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そんなに真っ直ぐな瞳で「君たちはどう生きるか?」と問いかけられてもこちらは戸惑うばかりの生き方しかしていない大人になってしまったけれど、そんな僕の心をも貫く力がこの本にはあり、出張帰りの新幹線の中で一気に読了してしまった。

吉野源三郎の歴史的名著を80年の時を経て初めてマンガにしたこの本は、今を生きる僕らにも響く真っ正直な生き方を問いかけて止まない。

例えばこんな文章に僕はとても共感してしまう。

「君が何かしみじみと感じたり、心の底から思ったりしたことを、少しもゴマかしてはいけない。そうして、どういう場合に、どういう事について、どんな感じを受けたか、それをよく考えてみるのだ。
そうすると、ある時、ある場所で、君がある感動を受けたという、くりかえすことのないただ一度の経験の中に、その時だけにとどまらない意味のあることがわかってくる。それが、本当の君の思想というものだ。」
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# by maru33340 | 2017-09-15 07:20 | お勧めの本 | Trackback | Comments(4)
2017年 09月 14日

エリック・サティという人

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サティの音楽を聴きながら、途中まで読みかけだった『祝宴の時代 ベル・エポックと「アヴァンギャルド」の誕生』という本の中でサティについて詳しく書かれていたことを思い出し、今朝少し読み始めた。

風変わりでつかみ所のない彼の人物像は、その音楽ととても良く似ている。

親友ドビュッシーの成功を見つめ、愛弟子ラヴェルの独り立ちを助けながら、自身も作品を生み出すけれど、その突拍子のなさばかりが目立ちせっかくの革新性も見逃されがち。
32歳で突然引退してから、12年後に再び先駆者として表舞台にひっばり出されるも今度は全く新しいスタイルの曲を書いて世間を狼狽させる…

エリック・サティ、知れば知るほど興味深い不思議な人物をもう少し追いかけたくなりました。

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# by maru33340 | 2017-09-14 06:19 | お勧めの本 | Trackback | Comments(3)
2017年 09月 13日

空白の音楽

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この所シューベルトの音楽を聴き続けていたら、自分が深海の中をさ迷い歩いているような気持ちになり、夏バテもあって夜中に怖い夢を見て目覚めることが続いた。

少し水の上に出て深呼吸しなくちゃと思い、ふと思い立ち高橋悠治の弾くエリック・サティのアルバム(1976年)を入手し聴き始めた。

サティのアルバムは今まで何故か一枚も持っていなかった。

彼の音楽には感傷や激しい感情は無く、聴いていると砂時計からサラサラと白い砂粒が落ちるのを眺めている時のようにぽっかりと空白の時間が過ぎ去る。

今はこんな音楽を聴きながら頭を空っぽにする時間が必要なのかも知れない。
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# by maru33340 | 2017-09-13 06:34 | お勧めの本 | Trackback | Comments(2)
2017年 09月 10日

シューベルトの繊細な魂の旋律のために

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シューベルトの「幻想曲 へ短調 D.940」が隠れた名曲であると聞いてはいたけれど、四手のためのピアノ曲でアルバムの数も少なく(シューベルトは最近ようやくおそるおそる聴き出したばかりだから)まだ聴いたことがなかった。

先日神保町のCDショップを訪ね、ピリス(今はピレシュと表記するそう)&カストロによるこの曲の入ったアルバムを見つけ昨夜から聴き始めあまりの素晴らしさに驚いた。

冒頭の旋律はまるで繊細な魂が無防備なままそっと差し出されるように聴くものの心を震わせる。
それは哀しみより遥かな深い感情を呼び覚ますから涙は追いつかない。
そして同じ旋律が転調される時には、つかまれた心ごと異界に連れ去られてしまうようだ。

少し調べてみると音楽評論家の吉田秀和さん(僕はこの人の事を勝手に師匠だと思っていたけど)がかつてこの曲についてこんな風に書いていたことを知った。
「この曲をまだきいたことのない人は仕合わせだ。その人にはまだ1曲、至福の想いを与える音楽にはじめて出会う幸福が待っているのだから」(「シューベルトのピアノ・ソナタ」より)

はい先生、僕はようやくこの曲に出会い、至福の時を与えてもらいました。
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# by maru33340 | 2017-09-10 06:54 | お勧めの本 | Trackback | Comments(4)
2017年 09月 09日

芸術は呪術だ!

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昨日は銀座で会議。

資生堂ギャラリーに立ち寄り、現在開催中の展覧会「かみ展」を見る。

岡本太郎の「芸術は呪術だ!」という言葉通り、芸術の原点は祈りと鎮魂の姿にあると改めて実感できる展覧会でした。
(展示は10月22日まで)
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# by maru33340 | 2017-09-09 09:59 | お勧めの本 | Trackback | Comments(2)
2017年 09月 06日

新しい、まっすぐ進まない音楽

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今までにも何度か書いたけど、長くシューベルトの音楽が苦手だった。

怖くて。

それはやはり中学生の頃に音楽の授業で聴いた彼の歌曲「魔王」がトラウマになっていたからだ。
子どもを小脇に抱え馬に乗り森を走り抜けようとする父親。
そこに死神が近づき子どもに「こちらの世界においで」と囁く。
死神の声は父親には聞こえない。
「お父さんあそこに死神がいる!」という子どもの必死の訴えに父親が「あれは風の音だよ」などとトンチンカンな答えをしている間に子どもはぐっりとしてやがて息絶える…

この音楽で怖いのはあのゴロゴロと鳴る低音の響きで、シューベルトの音楽には他の音楽でも突然ゴロゴロという低音が響くから油断がならず、以来彼の音楽が怖くて苦手だった。

それでもこの二三年ようやくシューベルトを聴く事が出来るようになり、この出張の行き帰りもウォークマンで彼の音楽を聴きながらこの本を読んだ。
小さな本ながら、ウィーンという街でベートーヴェンとは異なる「新しい、まっすぐに進まない音楽」を戦略的に生み出し「音楽だけで生活することが出来た最初の作曲家」であるシューベルトの姿を描きとても興味深い本だった。
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# by maru33340 | 2017-09-06 06:25 | お勧めの本 | Trackback | Comments(3)
2017年 09月 05日

「心配停止」社会にハンナ・アーレントを読む

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北朝鮮が六度目の核実験を強行した。
日本の上空をミサイルが通過するのは明らかな異常事態。
原発の問題も解決はみない。
南海トラフ地震発生の危険も大きい…

この時代の危機を前に人は巨大な不安を覚えている…はずだけど、ニュースでは政治や芸能界のスキャンダルが大きく扱われ日替わりの刺激に翻弄され本当の危機から目を反らしている日々。

そんな本当の危機から意識的に目を反らし、お気楽に日々を送る日本の現実の事を五木寛之さんは「心配停止」社会と名付けた。

そんな中、昨夜から始まったNHKEテレ「100分で名著」で取り上げられたのはハンナ・アーレントの著書『全体主義の起原』。
番組を見ていて、日本を含めた今の世界の情勢はアーレントがこの著書で描いた第二次世界大戦前の時代に極めて似ている事に改めて愕然とした。

彼女の言葉
「考えることをやめるとき、人は凡庸な悪に囚われる」
「考えることで人は強くなる」
という言葉を今こそ本気で噛みしめ行動しなくては、と思う朝。
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# by maru33340 | 2017-09-05 08:53 | お勧めの本 | Trackback | Comments(6)
2017年 09月 04日

宴の後のバッハ

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四国琴平での展覧会が昨日で終わり、今日は作品の撤去。

ひとつの展覧会を終えてガランとした展示場を見るといつも「宴の後」のような一抹の寂しさを感じるけれど、今回は暑かった夏が終わり秋風を感じる時期で、この9月から少し仕事も変わるので余計に感慨がある。

帰路につく新幹線の中で聴くピエール・フルニエによるゆったりとしたバッハの無伴奏チェロ組曲も普段より深くしみじみと心に響くよう。
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# by maru33340 | 2017-09-04 16:34 | お勧めの本 | Trackback | Comments(3)
2017年 09月 02日

懐かしく典雅な音楽を聴く朝

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今朝は涼しいを通り越して寒いほど。

半袖のTシャツの上に薄いカーディガンをはおりベランダに出れば秋の虫の声があちこちから今を盛りと大きく響く。

少し暖かい音楽が聴きたくなり、ウィーン・コンツェルトハウス弦楽四重奏団によるハイドンの弦楽四重奏曲作品75-1を聴き始めた。
1950年のモノラル録音だけど、その音色はゆったりと典雅で、まるでセピア色の写真を眺めているようにノスタルジックで懐かしい。

時を忘れその緩やかな音楽に身を委ねて漂っていると夏の疲れが次第にほぐされてくるよう。
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# by maru33340 | 2017-09-02 06:27 | お勧めの本 | Trackback | Comments(2)