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昨夜、片岡義男のエッセイ集を読んでいて、ふいにベートーヴェンの音楽が聴きたくなった。


特にどの曲、誰の演奏ということではなく、ただ清潔で親しみに溢れたベートーヴェンの音楽に身を浸したいという気持ちになったのだ。


こういう時はSpotifyのアンソロジー機能は便利で、「リラクシングベートーヴェン」というプレイリストをランダム再生で聴いた。


曲目は、比較的初期のピアノ曲や室内楽のアダージョ楽章が多く、演奏もNAXOSレーベルのそんなに知られていない演奏家によるものが多い。


それらの曲を、何の曲、誰の演奏ということをあまり意識することなく、本を読みながら、漠然と聴いている時間はとても幸福な時間だった。


こんな時間が続くなら他には何もいらない、とさえ思えて、僕はふと、映画『PERFECT DAYS』の平山のことを思いだしていた。



ただ、清潔で親しみに溢れたベートーヴェンの音楽に身を浸すこと_f0061531_05491296.jpg


# by maru33340 | 2024-01-30 05:48 | Trackback | Comments(2)

僕が今見ているこの冬のドラマは、まずは朝ドラ『ブギウギ』と大河ドラマ『光る君に』。

『ブギウギ』は何といっても主人公のスズ子を演じる趣里の演技と歌が魅力的だ。

『光る君に』も好調な立ち上がり。
切れ味の良い物語の展開に翻弄され、回を追うごとに面白くなる。
癖の強い登場人物たちによる権謀術数の駆け引き、女御たちの恐ろしい噂話、まひろ(吉高由里子)と道長(柄本佑)のトレンディドラマのような多難な恋の行く末…
これから1年間この楽しみが続くと思うとワクワクしてくる。

民放では『さよならマエストロ』が、本格的な音楽シーンでなかなか見せる。
第2回にチェリスト役で登場した佐藤緋美(浅野忠信とCharaの長男)に雰囲気がある。

もう1本、宮藤官九郎脚本による『不適切にもほどがある!』が攻めていて、まさにこのドラマの舞台である「昭和まん真ん中」を生きてきた昭和のおやじである僕にはたまらない。 

突然歌いだすミュージカルシーンも斬新だ。

クドカンの脚本は、決して「あの時代(昭和)が良かった」と言っている訳ではないけれど、コンプライアンスでがんじがらめになっている「現在」を是とする訳でもなく、まさにその間の絶妙なバランスを描いていてさすがだ。

このドラマを見ながら僕はふと、山田太一が描いた「戦中と戦後の間」を描いたドラマを「昭和と令和の間」に置き換え、思いっきり軽みと笑いを加えれば宮藤官九郎のドラマになるのかも知れないなどと思ったりしてます。

この冬見ているドラマに就いて_f0061531_08411511.jpg

# by maru33340 | 2024-01-29 08:40 | Trackback | Comments(2)

映画『コット はじまりの夏』に就いて_f0061531_16215455.jpg



今日の午前中、ヒューマントラスト有楽町で、1980年代初頭のアイルランドを舞台に、9歳の少女が過ごす特別な夏休みを描いた映画『コット はじまりの夏』を観る。


隅々まで静けさに満たされた素晴らしく美しい映画だった。


物語は…


1981年、アイルランドの田舎町。

大家族の中でひとり静かに暮らす寡黙な少女コット(キャサリン•クリンチ)は、夏休みを親戚夫婦キンセラ家の緑豊かな農場で過ごすことに。

はじめのうちは慣れない生活に戸惑うコットだったが、ショーンとアイリンの夫婦の愛情をたっぷりと受け、ひとつひとつの生活を丁寧に過ごす中で、これまで経験したことのなかった生きる喜びを実感していく…


映像、音楽も素晴らしいけれど、この映画の見どころは、何と言っても本作がデビュー作となるキャサリン・クリンチの魅力にあるだろう。


その繊細で透明な存在感は、まさに人生のある奇跡の瞬間だけに見られるものだと思う。


彼女は、IFTA賞(アイリッシュ映画&テレビアカデミー賞)主演女優賞を史上最年少の12歳で受賞したのも納得出来る。


今もまだこの作品の沈黙の魅力とラストシーンでキャサリン•クリンチの走る姿が頭から離れないのだ。





# by maru33340 | 2024-01-27 16:21 | Trackback | Comments(2)

もう何年も前のことになるけれど、資生堂ギャラリーのイベントで、コンテンポラリーダンスのアーティストがバッハの《無伴奏チェロ組曲》によってダンスをするというパフォーマンスを見た。

見る前は「バッハのような精神性の高い音楽とコンテンポラリーダンスが果たしてマッチするのだろうか…」と少し半信半疑のままパフォーマンスを見たけれど、これが実に素晴らしかった。

会場をいっぱいに使って、バッハの音楽に合わせて飛び回るように踊る姿を見ながら、初めてバッハの音楽の根底には「舞曲」があり、その本質は「悦び」なのかも知れないと目から鱗が落ちるような気がした。

昨夜、録画したドラマ『さよならマエストロ』で、佐藤緋美(浅野忠信とCharaの長男)が演じる若きチェリストの弾くバッハの《無伴奏チェロ組曲》(第6番)を聴きながら、「ああ、やはりバッハの音楽の本質は悦びだったのだ…」と思い出して胸が熱くなった。

今年の初めから起きた震災によって、何をしていても心から悦びを感じるということが出来なくなっていたけれど、昨夜のバッハは、まるで乾いた砂に透明な水が静かに沁みとおるように胸の奥まで届き、深い呼吸が出来るよう。

今朝は、ジャン=ギアン・ケラスの2007年の録音によるバッハの《無伴奏チェロ組曲》を聴いているけれど、その軽やかで美しい響きが、固く強張った僕の心の扉を静かに開けてくれるような気がするのだ。

                   ©『さよならマエストロ』
バッハの音楽の本質は「悦び」にあるのか_f0061531_09281158.jpg


バッハの音楽の本質は「悦び」にあるのか_f0061531_09244549.jpg


# by maru33340 | 2024-01-25 09:25 | Trackback | Comments(4)


昨夜、葛谷(くずや)洋子というR&のシンガーソングライターの歌う《恋》という曲を知る。


とても良かった。


1999年に発表された24年程前の曲だけど、彼女の少し鼻にかかった軽やかな歌声、語尾の「て」を「てぃ」発音する所あたりがとても僕好みだ。


プロフィールよると、彼女は高校1年より本格的な作曲活動をはじめ、19歳の時にオーディションで認められ上京。

1999年22歳の時にエピックレコードジャパンより松尾潔プロデュースの下デビュー。


僕が聴いた《恋》は彼女のファーストアルバム《MUSIC GREETINGS VOLUME ONE》に収録されている。


彼女は作曲家として多くのシンガーに楽曲も提供していて、2007年にはBoA「LOVE LETTER (BoAの曲)」(作曲)で日本レコード大賞金賞を受賞するも2010年から11年間シンガーとしての活動を中止し、2021年に11年ぶりにアルバム『IDNIGHT DRIVIN’ -KUZUYA YOKO MUSIC GREETINGS 1999〜2021-』を発売し活動を再開したそうだ。


都会的で等身大の女性の気持ちを描いた歌詞、心地よいリズム感は、どこか宇多田ヒカルを彷彿とさせる。


ただ、宇多田ヒカルが1998年15歳の時に発表した《Automatic》があまりに衝撃的だったから、少し影が薄くなってしまったのかも知れず、寡聞にして僕も昨日までその歌を知らなかったのは、「芸能音楽100」を自任するものとして反省しきりだ。


ともあれ、まずは下記のURLよりお聴き下さい。

葛谷洋子で《恋》。



# by maru33340 | 2024-01-22 09:37 | Trackback | Comments(2)

音楽・本・映画などについての私的な感想


by maru33340
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