人気ブログランキング | 話題のタグを見る

毎年年末になると「今年の漢字」なるものが発表される。


今年は「金」という漢字が選ばれたそうで、この字が選ばれたのは5回目らしい。

理由はオリ・パラの日本人選手や大谷翔平選手などの活躍による“光”の『金(キン)』だけでなく、政治の裏金問題、闇バイトによる強盗事件、止まらない物価高騰など“影”の『金(かね)』を理由にあげる人が多く見られたの事…


しかしどうもこのイベント、筆者にはもう何年も前から賞味期限切れのイベントのように思える。


そういえば先日「流行語大賞」も発表され、「ふてほど」という言葉が選ばれたそう。

ドラマ『不適切にもほどがある』の略称らしい。

筆者は毎回このドラマを熱心に見ていて、ドラマの舞台になった松戸の喫茶店も見に行ったけれど、こんな略称は初めて聞いた…


こちらのイベントもまた賞味期限切れかも知れない。


年末には「レコード大賞」や「紅白歌合戦」があるけど、こちらも何年も前からマンネリ感漂うまさに賞味期限切れの心躍らぬイベントになってしまった…


エマヌエル・トッドは著書『西洋の敗北』の中で、「現代社会が抱える精神的・文化的危機を理解する上で、宗教がその影響力を失い集団的な価値観が崩壊していくニヒリズムの中で、個々の人々がどのようにして生きる意味を見出し、社会を支えていくのか」を問いかけている。


筆者はこれらマンネリズム漂う賞味期限切れのイベントに、あばら家に吹き込むすきま風のようなうすら寒いこの国のニヒリズムの象徴のようなものを感じてしまい、なんともやるせないような気持ちになってしまうのだ…


(内山丸吉時評エッセイ【内丸妄語❵より)
# by maru33340 | 2024-12-13 05:51 | Trackback | Comments(2)

先週末に風邪をひいてしまいしばらく体調がイマイチだったけれど、ようやくほぼ全快に近づいて回復期に入ってきたよう。


そういえば、以前読んだ内山丸吉さんの著書『病み上がりにはベートーヴェンをお聴きなさい』には、病気からの回復期にベートーヴェンを聴く効用について次のように書かれている。


前へ前へと進むベートーヴェンの音楽の力によって、

①身体の内側からジワジワとエネルギーが湧いてくる

②人生に対して肯定的な気持ちになる


そして、どんなに自分の身の回りの社会的・政治的状況を前にしてうんざりしていても、ベートーヴェンの音楽を聴くことで、

①一人の人間がかつてこんなに崇高で美しい音楽を創造したという事実を前にして、人間という生き物を信じたくなる

②その音楽を聴いている時間が愛おしくなり、世の中そんなに捨てたもんじゃないかも知れないと思えてくる


昨夜、ふいにベートーヴェンの弦楽四重奏曲が聴きたくなり、ベルチァ四重奏団の弾く明晰でありながらしなやかなベートーヴェンの弦楽四重奏曲第12番を聴きながら、なるほど内山丸吉さんの言っていることは確かかも知れないと思った。


病み上がりに聴く(効く)ベートーヴェンのこと_f0061531_05484749.jpg



# by maru33340 | 2024-12-12 05:47 | Trackback | Comments(4)

ユーミン繋がりで『ユーミンの罪』(酒井順子著、講談社現代新書、2013年刊行)を読み始め、面白くて一気に読了した。


著者の酒井順子氏は『負け犬の遠吠え』(2003年刊行)で有名になったエッセイスト。


『ユーミンの罪』は1973年にユーミン19歳の時のデビューアルバム「ひこうき雲」から、1991年バブル崩壊の年に発表されたアルバム「DOWN PURPLE」まで、荒井由実時代の4枚、松任谷由実時代の16枚のアルバムについて、その歌詞を中心に時代背景と共に明晰でちょっと斜に構えた達意の文章で語られていて読み応えがある。


気になる「ユーミンの罪」というタイトルの意味についてデビューアルバムの歌詞に触れながら著者はこんな風に書く。


「刹那を切り取り、積み重ねていくことで、永遠を目指す。そんな意識が込められているような気がする、ユーミンのごく初期の歌。そしてその姿勢は、今もなお精力的に活動を続けるユーミンの中に、生き続けている気がしてなりません。

ユーミンファンの女性達は、ユーミンが提示したお洒落なシチュエーションにばかり惹かれたわけではありますまい。刹那の輝きと、永遠の魔力。両者を手を入れようとするユーミンの姿勢と時代とが合致したからこそ、彼女はスターになりました。」


なるほど…

そして著者はさらにこう語る。


「ユーミンは女性にとってパンドラの箱を開けてしまったのです。ユーミンという歌手が登場したことによって、成長し続ける日本に生きる女性達は、刹那の快楽を追及する楽しみを知りました。同時に、「刹那の快楽を積み重ねることによって、『永遠』を手に入れることができるかもしれない」とも夢想するようになったのです。

日本の若い女性達にそのようなうっとりした気持ちを与えたのは、ユーミンの大きな罪です。

(中略)

今思えば、ユーミンが見せてくれた刹那の輝きと永遠とは、私達にとって手の届かない夢でした。しかし、その時、それらはあまりにも甘く魅力的に見えたのです。」


果たしてそれがユーミンだけの罪だったのか、高度成長末期からバブル崩壊までの時代のこの国が見た儚い夢のせいだったのか、僕にはまだ少し分からないのだけれど…


「ユーミンの罪」とは何か_f0061531_11175191.jpg






# by maru33340 | 2024-12-11 11:16 | Trackback | Comments(2)

『ユーミンの歌声はなぜ心をゆさぶるのか』(武部聡志著、集英社新書)を読了。


武部氏は1957年生まれの編曲家 / 音楽プロデューサー。

1983年より松任谷由実コンサートツアーの音楽監督の他、一青窈、今井美樹、平井堅などのプロデュース、音楽番組『FNS音楽祭』や『ミュージックフェア』の音楽監督などを歴任した方。


まさに1980年代から現在まで実に数多くの歌い手と共に仕事をしてきた人だけあって、多くの歌手や楽曲について興味深い記述がある。

(その分少し記述が総花的に感じて、もう少し一人一人を深堀りしてくれれば…と思うのはないものねだりか…)


武部氏の考え方は例えばこんな言葉によく現れているよう。


「一過性の人気者をつくりだすことが目的なら、それが虚像であっても問題ないかもしれない。でも長く音楽を続けるためには、嘘をついてはいけない。僕はそう思います。歌い手のみならず、プロデューサーも同様です。嘘はいつか見透かされてしまいますから」


武部氏は僕より2歳年上で、世代的にもその考え方に共感する。

一方で、アニメ『推しの子』のテーマである「虚像」「嘘」がアイドルの本質という感覚に共感する若い世代にとってその考え方はどのように受け止められるのだろうとふと思ったりもする…


今は松任谷由実名義で1980年にリリースされたアルバム『時のないホテル』を聴いている。

ユーミンの数多いアルバムの中でも、この少しダークで重たい世界が僕は一番好きかも知れない。


「ユーミンの歌声はなぜ心をゆさぶるのか」_f0061531_08302551.jpg


「ユーミンの歌声はなぜ心をゆさぶるのか」_f0061531_08304156.jpg



# by maru33340 | 2024-12-10 08:29 | Trackback | Comments(2)

今年の2月頃、それまであまり熱心には聴いていなかったベートーヴェンのヴァイオリン・ソナタの魅力に目覚め、様々な演奏で聴き比べた事がある。


いずれの演奏もそれぞれ楽しく、やはり「クラシック音楽の大きな楽しみは聴き比べにあり」と改めて思った。



そんな事を思い出したのは昨夜、オンラインの『レコード芸術』で、新たにベートーヴェンのヴァイオリン・ソナタの魅力的な演奏に出会ったから。


オランダ在住のヴァイオリニスト、佐藤俊介が妻であるピアニスト、スーアン・チャイと録音したベートーヴェンのヴァイオリン・ソナタ全集のアルバムがそれ。


佐藤俊介は以前バッハの無伴奏ヴァイオリンソナタ&パルティータの演奏を聴きとても感心した事がある。



今回のベートーヴェンのヴァイオリン・ソナタのアルバムもとても良い。


佐藤俊介のヴァイオリンはノン・ヴィブラートを基調としつつ繊細なヴィブラートを多用して、様々な音色を楽器から引き出す。

スーアン・チャイのフォルテピアノもまた様々な変化をつけながら佐藤俊介のヴァイオリンとの間に、時に親密な、それでいて真剣勝負のような厳しさもある濃密な音楽による対話が繰り広げられる。


この曲の数多い名盤に新たに加わった、若々しさに溢れた名アルバムの誕生を喜びたい。



# by maru33340 | 2024-12-09 05:11 | Trackback | Comments(3)

音楽・本・映画などについての私的な感想


by maru33340
カレンダー
S M T W T F S
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31