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この秋は、北村有起哉主演のドラマ『たそがれ優作』(BSテレ東)にはまった。


友人とドラマのロケ地である大森の山王小路(通称 地獄谷)を訪ねたり、東京都現代美術館で開催していたアートブックフェアの帰りに、ドラマの1回目に出てくる清澄白河のワインバーを訪ねたりしたので、先週、最終回が終わったのがとても淋しくて、今はこちらもたそがれながら、早い時間からウィスキーを飲みながらジャズボーカルなんかを聴いている夕暮れだ。


日が暮れるのも随分早くなりました。


たそがれて

グラス片手に

ジャズボーカル

(丸作)


じゃ、もう二三軒。


「たそがれてジャズボーカル」_f0061531_17550388.jpg




# by maru33340 | 2023-11-28 17:53 | Trackback | Comments(2)


今日は11月25日。


今から53年前の1970年11月25日、三島由紀夫が自衛隊市ヶ谷駐屯所に乱入し、「天皇陛下万歳」と叫んで自決した日だ。


僕は20歳の頃、突然三島由紀夫の文学にはまり、毎日取り憑かれたように、彼の小説や三島由紀夫論などを読んだ。


それはまさに熱病のようで、いつの間にかその熱は治まっていたけれど、今でも時々、三島論が出ると読んでいる。

特に11月25日が近づくと無性に三島由紀夫のことが頭をよぎる。


先日入手したのは、松本健一著による『三島由紀夫と司馬遼太郎』(新潮選書)。

2010年に刊行された本だけど未読の本で、日本橋の丸善の平台に並んでいたので、直ぐに手に取った。


僕は今年の夏頃から司馬遼太郎熱が再燃していたけれど、司馬さんと三島由紀夫を並べて論じた本は読んだことがなかった。


著者の松本健一も40年近く、この二人を並べて考えたことはなかったと語る。

しかし、あることをきっかけにこの本のあとがきのような結論に達したという。


「三島由紀夫と司馬遼太郎という二人の文学者は、ともに、1960年代の高度成長期の日本が経済至上主義に走り、ナショナル・アイデンティ(日本らしさ)を喪失していることに強い危機感をいだいていた。そして、かれら二人は経済至上主義的な経済大国とは別の、〈もう一つの日本〉を提示しようとしていた。」


著者は司馬遼太郎の『街道をゆく』シリーズが三島由紀夫の自決の翌年1971年に始まっていること、そして『街道をゆく』には〈天皇の物語がない〉ことに気が付き、この二人を戦後精神史の中で交錯させて考え始めたそうだ。


まだ本文は未読。

今日はこれから、松本健一の語る三島由紀夫と司馬遼太郎の精神の交錯地点を探る旅に出たいと思う。


三島由紀夫と司馬遼太郎に就いて_f0061531_09505391.jpg

# by maru33340 | 2023-11-25 09:49 | Trackback | Comments(2)
林芙美子の原作による映画『浮雲』は忘れがたい映画だ。

高峰秀子演じるゆき子と森雅之演じる富岡による、ひたすら落ちてゆく腐れ縁のような男女関係の残酷なまでのリアルさ、伊香保温泉での岡田茉莉子の妖艶さ、ラストシーンの屋久島の雨の激しさ…今でも時々思い出すほど鮮烈な印象が残っている傑作だ。
(小津安二郎がこの作品に激しく嫉妬したのも痛いほど分かる…)

昨日入手した『文学が裁く戦争-東京裁判から現代へ-』(金ヨンロン 著、岩波新書)は、戦後文学者が東京裁判を描いた作品を時系列で論じるという意欲的な内容の本で、まだ拾い読み程度だけど、とても面白い。

その中で、林芙美子の『浮雲』も取り上げられていて、映画しか見ておらず原作を読んでいなかった僕は、この作品にそんなシーンがあることに驚いた。

この本によると、戦時中、戦争に協力した過去を自覚し、新たに出発することを期待されていた林芙美子が執筆したのが、戦後発表された小説『浮雲』だとのこと。

小説の最期、「南」へ「南」へと向かう富岡には、戦後になっても大日本帝国を復活させたい欲望があった。
それに対して、ゆき子の戦後は日本の南の果ての死であった。

林芙美子はこんな風に書いている。

「二人とも、一種の刑罰を受けて、こに投げ捨てられたような気がして、ゆき子は、ここで自分は死んでしまうのではないかといった予感がした。死ぬなら、一思いに死にたかった。」

ゆき子と富岡の二人の最後について、『文学が裁く戦争』の筆者はこんな風に書いている。

「自らの「死」を「刑罰」として受け止めているゆき子に対して、「もう一度、我々を誕生させて下さい」と「神仏に祈った」富岡の反応も象徴的といわざるを得ない。つまり、戦後、文学上の戦争犯罪人として厳しく批判されていた林芙美子は、「浮雲」で造形したゆき子に、戦争裁判と無関係ではいられない自覚を与え、過去を振りかえらせたのち、最終的に死という判決を下していたのだ。帝国日本の復活を夢見る男と、何らかの形で責任を引き受ける女の対比が意図的であったのは明らかであろう。」

この評を読んで、僕は林芙美子の小説『浮雲』を読まなくてはと思ったのだった。

映画と小説、二つの『浮雲』に就いて_f0061531_09450720.jpg

# by maru33340 | 2023-11-24 09:43 | Trackback | Comments(2)

能楽師の安田登さんの著書のことは、内田樹さんが良くその名前を語っているので、以前から気になっていた。

その安田登さんの近刊『使える儒教』がNHK出版学びの基本のシリーズとして出版されたので、手にとってみる。
1時間もあれば読了出来る薄い本だったけれど、僕にはなかなか学びのある本だった。

この本で安田さんは、儒教は「自分自身の「心」のプラミングを書き換えるための書」だと語っている。

安田さんは、そのためのいくつかのプログラムを紹介しているけれど、僕には『論語』の中で孔子が提案している「九思」(きゅうし)という方法が興味深かった。

孔子は『論語』の中で九つの「思」についてこんな風に語っているそうだ。

視るには明を思い、
聴くには聡を思い、

色には温を思い、
貌には恭を思い、

言には忠を思い、
事には敬を思い、

疑わしきには問いを思い、
怒りには難を思い、

得るを見ては義を思う。


このままでは少し分かりにくいけれど、安田さんはそれぞれの言葉についてこんな風に解説している。

見る時、聴く時、自分はどんな「窓」を通して世界を見て、聴いているのかに気づくこと。
それは自分を苦しめているのか、楽にしているのかを考えること。

自分の機嫌(色)で相手をコントロールしようとしない。
相手のことを下に置かず、尊敬する態度(貌)でいること。

話すときは心の真ん中(忠)から話しているか。
何かをする時(事)は、そのことだけで心をいっぱいにしているか。
そのことを確認すること。

分からないときには「問う」こと。そしてちゃんと相手の答えを聞くこと。
怒りを爆発させたらどんな問題が起きるかを考えること。
他者の怒りの背景には何か「難」があるのではと想像すること。

何かを得ようとする時それが「義」であるかどうかを考えること。


これからしばらく、寝る前にこの孔子の言葉を噛みしめる生活を送りたいなどと思う朝です。

『使える儒教』(安田登 著)に就いて_f0061531_09273251.jpg


# by maru33340 | 2023-11-21 09:24 | Trackback | Comments(2)
この週末の土日、小田原を訪ねた。

土曜日は「小田原ツーデーマーチ」というイベントに参加し、13.2㎞の「石垣山一夜城コース」を歩く。
10㎞のウオーキングは他の場所でも何回か参加し、なんとか完走出来たので大丈夫だろうと軽く考えていたけど、甘かった。
日頃の運動不足がたたり、石垣山のかなりの急坂を上るのは足腰に堪えて、今も膝がガクガクしている…

日曜日は、以前から行きたいと思っていた「江之浦測候所」を訪問。
この施設は、かつて蜜柑畑だった小田原市江之浦の地に、現代美術作家・杉本博司氏が設計した建築と庭園による壮大な屋外型美術館。





素晴らしい施設だった。

天候にも恵まれ、眼前に一面に広がる江之浦漁港の海面にあたる光がキラキラときらめき、いつまでも眺めていたくなる。

自然の中に溶け込むようにして作られた(あるいは移設された)建物は、美しく、広大な庭園には、様々な石、苔、石仏、灯篭、神社などが配置されていて、儚いもの、時を経て朽ちてゆくものの命の愛おしさえ感じさせてくれる。

この施設のガイドブックに、杉本博司氏はこんな風に書いている。

「今、時代は成長の臨界点に至り、アートはその表現すべき対象を見失ってしまった。私達に出来る事、それはもう一度人類意識の発生現場に立ち戻って、意識のよってたつ由来を反芻してみる事ではないだろうか。」

確かにこの場所には古代、中世、近世の日常生活に溶け込んだ、この国に暮らしてきた人々の美意識が潜んでいるようで、どこか悠久の時間を感じられるようだ。

僕のつたない写真では、この施設の魅力はとても伝わらないけれど、旅の記録として掲載します。

百聞は一見に如かず。
予約制で決して行きやすい場所ではないけれど、思い切って訪問してとても良かった、と思ったのでした。

「小田原紀行-石垣山一夜城、そして江之浦測候所へ-」_f0061531_08462258.jpg

# by maru33340 | 2023-11-20 08:44 | Trackback | Comments(2)

音楽・本・映画などについての私的な感想


by maru33340
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