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『良い居酒屋を訪ねることは少し旅に似ている』

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ぐっと冷え込んだ昨夜、居酒屋の名店として誉れ高い湯島の「シンスケ」を初めて訪問。

丁寧に作られた肴をつまみにサッポロビール赤星と旨い日本酒を熱燗で2合飲む。
評判に間違いはなかった。

良い居酒屋を訪ねるのは少し旅に似ているなどと思いながら吉田健一のこんな言葉を思い出す。

「寧ろ旅をなすものは夜通り掛つた横丁の石畳が放つ鈍い光とかホテルの窓から観た向う側の建物の屋根とかいふ自分が住み馴れた場所でも珍しいとは限らないものでただそれが旅で正確な働きを取り戻した眼に映って我々の記憶に残ることになる」
(吉田健一『思ひ出すままに』より)

しかし、あっという間に熱燗の旨い季節になりました。
# by maru33340 | 2019-10-16 05:36 | お勧めの本 | Trackback | Comments(0)

『冷たい朝のブラームスのバラード』

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今朝洗い物をしていて久しぶりに水が冷たいと感じた。
淹れたての珈琲の温もりを嬉しいと感じるのも久々の感覚。

台風の後、秋を通りすぎて一気に冬が訪れたような朝にふさわしいのはやはりブラームスの音楽。

グレゴリー・ソコロフの弾く《バラード》は、重心の低いずっしりした温もりのある彼のピアノの音質がいかにもブラームスにふさわしく、一音一音が胸の奥に沁みてくるようです。
# by maru33340 | 2019-10-15 08:21 | お勧めの本 | Trackback | Comments(3)

ただ悼むことしか…

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台風19号のもたらした水害の傷痕のあまりの酷さに言葉を失う朝。

これだけの被害を前に「まずまずの被害でおさまった」と語るこの国の為政者の言葉を知りまた絶句する。

しかし、では自分に何か出来るのかと自問してそのあまりの無力に愕然とするばかり。

せめて今はデュリュフレの《レクイエム》を聴いて亡くなられた方々を悼むことしか出来ないけれど…
# by maru33340 | 2019-10-14 17:22 | お勧めの本 | Trackback | Comments(2)

『台風の夜、セザール・フランクのヴァイオリン・ソナタを』

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昨日から台風のため終日家に引きこもり、フランクのヴァイオリン・ソナタを聴き続けている。

演奏はイザベル・ファウストのヴァイオリン、アレクサンドル・メルニコフのピアノによる2016年の録音。
素晴らしい演奏だ。

この曲は学生時代から好きだったけど、長い間聴かない時期が続き、最近ふとしたきっかけでフランクの弦楽四重奏曲を聴き返してから再びフランク熱が甦ってきてヴァイオリン・ソナタにも手が伸びた。

貴婦人がそっと部屋に入ってくるような冒頭部分に引き込まれ、少し暗い情熱を感じる2楽章に胸を焦がし、瞑想的な3楽章に泣きそうになり、終楽章の透明な色彩に救われる。

フランクの音楽を聴いていると僕はいつもセザンヌの風景画を思い出していたけれど、最近ポール・ゴーギャンがこんなことを書いていると知った。

「セザンヌは、セザール・フランクの弟子である。いつも古風な大オルガンを鳴らしている」

確かにフランクの音楽にはオルガンの響きを感じ、その響きはセザンヌの色彩のサクサクとした重なりにとても良く似ているようだ。

このフランクのヴァイオリン・ソナタのアルバムジャケットにはモーリス・ドニの絵画が使われているけれど、ドニには《セザンヌ礼賛》という代表作がありここでもフランクとセザンヌが繋がっているのが嬉しい。
# by maru33340 | 2019-10-13 10:31 | お勧めの本 | Trackback | Comments(3)

『台風の午後に聴く「主題と変奏」』

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関東地方は台風の影響で雨はかなり激しくなってきた。

交通機関はほぼ運転を取り止めほとんどの施設は休館し、近くのスーパーも今日は臨時休業。
必然的に家に引きこもるしかなく朝から音楽を聴いて過ごす。

今朝はアンジェラ・ヒューイットの弾くフォーレの「主題と変奏」を聴き始めた。

僕はフォーレのピアノ曲では「夜想曲」が好きで、時に晩年の内へ内へと沈積していき闇の中で沈黙の華が咲いているような世界が好きだから「主題と変奏」のダイナミックな世界には少し距離を置いてきた。
ところが今回の台風による激しい雨風の下では「主題と変奏」の感情の高ぶりがしっくり来る。

アルフレッド・コルトーはこの曲についてこんな風に語ったそう。
「この作品の音楽的な豊かさ、表現の深さ、器楽的内容の質の高さは、あらゆる時代のピアノ音楽のうち、最も希有で最も高貴な記念碑のひとつであることは、まったく疑う余地がない」

なるほど、と思えてきました。
# by maru33340 | 2019-10-12 12:57 | お勧めの本 | Trackback | Comments(2)

『遠い夢の中の響きに』

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今朝はひんやりとした朝になった。

こうした肌寒い空気にはフォーレの音楽が良く似合う。

学生時代、まだ渋谷に「らんぶる」という名曲喫茶があった頃、店内でかかっている音楽がまるで自分の心の中から聴こえてくるような気がして身体が震えるような気がした。

それがフォーレの弦楽四重奏曲だった。

以来、遠い日の夢のように儚く、淡い(時に深い)哀しみに満ちたフォーレの音楽に夢中になり、朝から晩までフォーレを聴き続けたから、音楽を聴いていない時でも頭の中でその音楽が聴こえてくるような気がしていた…

今朝はフォーレのピアノ五重奏曲を聴きながら40年以上前のそんな出会いを思い出していた。

ようやく秋、でしょうか。
# by maru33340 | 2019-10-10 07:45 | お勧めの本 | Trackback | Comments(4)

『ほんとのピアニストの物語』

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今日は久しぶりの快晴。

出張先のホテルの朝陽が射し込む部屋で、入手したばかりの吉田秀和さんの新刊文庫本を眺める時間は僕には小さな至福の時間。

河出文庫の吉田秀和さんの文庫はテーマ毎に纏められていて読みやすい。
既に読んだ文章も含まれているけど、その時の自分の関心に応じて新たな発見がある。

最近観たピアニスト達をテーマにした映画が少々不完全燃焼だったので、ホロヴィッツ、ルービンシュタイン、リヒテル、ミケランジェリらの一時代を築いた巨匠ピアニスト達の物語を読み、気持ちも新たに音楽に対峙したい朝です。
# by maru33340 | 2019-10-09 07:47 | お勧めの本 | Trackback | Comments(1)

『秋のフランク』

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秋が深まると弦楽四重奏曲が聴きたくなるのは毎年のことだけど今年はいつまでも暑いからなかなかそんな気分にならない。

果たしていつになったらあの物寂しい秋になるのだろう、などと思いながら東京での仕事を終え出張のため西に向かう新幹線に乗りこみふとフランクの弦楽四重奏曲を聴いてみようかなと思い立った。

演奏はゲヴァントハウス弦楽四重奏団。

フランク特有の息が長く渋い旋律が続くのを聴きながら炉部の暖炉の残り火が微かに光を感じさせるような第三楽章を迎えて次第に良い気持ちになってきた。

そろそろほんとうの秋になって弦楽四重奏曲三昧の日々を過ごしたいな、と思うのですが…
# by maru33340 | 2019-10-08 18:21 | お勧めの本 | Trackback | Comments(3)

『偶然には意味がある』

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「シンクロニシティ」(共時性)という現象に時折遭遇する。
この言葉の定義は難しいけれどWikipediaではこんな風に言っている。
「虫の知らせのようなもので因果関係がない2つの事象が、類似性と近接性を持つこと」。
平たく言えば「偶然の出会い」か。

僕にシンクロニシティがおきる確率は低く、せいぜい半年に2~3回程度だった。
しかし昨日は3つのシンクロニシティに立て続けに出会い驚いてしまった。

1つ目は仕事の関係で日本橋の老舗画廊に行った時、旧知の(クラシック音楽好きの)画商さんと何年ぶりかにばったり出会い「最近どんな音楽聴いてますか?」と聞かれ「ジュリーニ指揮のブルックナーにはまってます」と答えたら「え、私も昨日久しぶりにジュリーニのブルックナーを聴いて、やはり良い演奏だと思ってたんですよ!」との答え。
その偶然にお互いに驚きながら別れた。

2つ目は、夜、知人のご家族が営む四谷の名曲喫茶で開催される「武満徹とジョン・ケージの文章を読む読書会」に初めて参加した時、最初に挨拶した若い男性が「私は水墨画家で、今度個展を開くので良かったらお越しください」と挨拶されたこと。

つい最近『線が、僕を描く』という水墨画家を目指す青年が主人公の小説を読んで感動的したばかり。
人生で初めて会った水墨画家とこんなタイミングで出会ったことにびっくり。

3つ目は、その読書会で「吃音宣言」という武満徹の初期のエッセイを読んだのだけど、帰りの電車の中で本屋でもらったばかりの岩波書店のPR誌『図書』を何気なく開いたら、そこには片山杜秀さんのエッセイがあり、そのテーマがまさに武満の「吃音宣言」だったのだ。

3つの出会いはそれぞれ決してメジャーとは言えないジャンルにおけるピンポイントの出来事だけに、同じ日にそれが重なったことにはさすがに驚いてしまった。

シンクロニシティという概念を提唱した心理学者のユングは「偶然の出会いには意味がある」という内容の事を書いているけれど、昨日の3つの出会いはこれからの僕の人生にどんな意味をもたらすのだろうか?
# by maru33340 | 2019-10-04 08:23 | お勧めの本 | Trackback | Comments(4)

生涯、非政治的人間でありたいと思っていたけれど…

渡された菓子折の下に小判が隠されている。それをチラリと見たお代官が「越後屋、お主も悪よのう」と片頬でニンマリと笑うシーンはいまどき二流時代劇のパロディでさえ見られない、と思っていた。

しかしそれが今の令和の日本で(当たり前のように)行われていたと、知りたくはなかった。

日本というシステムが機能不全に陥っていることには(随分前から)気づいてはいたけれど、僕のような非政治的な人間が世界の片隅で叫んだ所でどうにもなるまいと、少し見ない振りをしていたかも知れない。

ナチスが権力を握るのを見ながら「あれは一部の暴徒のやっていること。私には関係がない」と思っていたドイツの牧師がSSに捕まった時「その時既に誰も私を助けなかった」と語ったという記事を今朝読んだ。

今、流れを止めなくてはとんでもないことになる、それだけは間違いない。

生涯非政治的人間でありたいと思っていたけれど、この惨状を前にして心揺らぐ朝です…


# by maru33340 | 2019-10-03 08:46 | お勧めの本 | Trackback | Comments(3)

音楽・本・映画などについての私的な感想


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