2009年 05月 06日
雨の日のフーガ
少し喉も痛むので、今日は家で音楽でも聴いてゆっくり過ごす事にしよう。
今聴いているのはピエール=ロラン・エマールの弾くバッハ「フーガの技法」。
この曲は数あるバッハの曲の中でも、最も抽象的で取り付きにくい曲だ。
およそ人間的感情からは遠い所にあり、しばらく聴いていると自分が天空の彼方に一人取り残されて、そこから地球を眺めているような、なんとも心細いような心地よいような不思議な気持ちになる。
このエマールの演奏はその抽象度を更に純化したような清潔な美しさに満ちている。
この曲の、例えばニコラーエワの演奏に聞けるような人間的な悲劇性(この演奏を聴いていると、いつもロシアの荒野にある苔むした聖堂に座っているような気持ちになる)は感じられず、あまりに晴れ渡った空の青さの持つ非人間的な哀しみのようなものを感じる。
(この感じは少しブーレーズの演奏するマーラー「大地の歌」を聴いているときに感じる涼しさに似ている。)
しかしバッハは最後に何と言う境地に達してしまったのだろう!