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ゴッホの「蟹」

先日、新国立美術館で開催されている「ゴッホ展」に出かけた。

天候不順の朝一番で出かけたせいか、思ったより人出が少なくゆっくり見る事が出来た。

僕は展覧会を見る時は、まず足速に最後まで眺めて、これはジックリ見ようという絵の場所を確認してから、最初に戻るという見方をしているけれど、今回は一枚の絵に引き付けられてしばらく動けなかった。

それは深い緑色を背景に、逆さまにされた蟹が左側に配置された絵だった。

僕は、今までゴッホの画集などでも見たことのない絵だ。

ハイデッガーはゴッホの「靴」の絵に「実存」を見たらしいが、この「蟹」の絵もまた「実存」そのものだ。

リアルなんてものじゃない、ただもう「蟹がそこにある」という迫力に圧倒されてしまう。

背景の深い緑色もまたじっと見ていると、心の奥底がざわざわとうごめくような怪しさがある。

今回の「ゴッホ展」には他にも見るべき絵は数多いけれど、僕にはもう「蟹」の絵だけで十分堪能出来、足速に帰宅したが、家でぼんやり椅子に座っている時も脳裏にあの緑色に包まれた「蟹」の姿が何度も蘇ってきたのだった。
Tracked from 新・はんきちのつぶやき at 2010-11-27 21:27
タイトル : 再訪したいクレーラー・ミュラー美術館
いま開催されているゴッホ展で、友人は、蟹が裏返しになった絵に感銘したと言っていた。後ろ向きざまに種をまく人や屈んだ姿や、ねじった体位の美しさに魅せられた画家からすれば、蟹に内在する本質は、まさにその裏側にあるグロテスクさと複雑さにある、と見抜いたのだろうか。その裏に息を殺しながら内在する秘密や企み。潜む陰謀のようにねじれた心と生きざま。 自分の生きる意味を求めながら20歳台の半ばに画家をこころざし、ミレーの一連の「種まく人」を見習いながら、来る日も来る日も写実を練習した。印象派からのエネルギーも...... more
Commented by saheizi-inokori at 2010-11-11 09:25
この展覧会は世上ゴッホらしいとされている有名な作品以外に面白いものがありましたね。
私は彼の無名時代の習作が気にいりました。
Commented by k_hankichi at 2010-11-13 09:35
蟹、見てみたいですねえ。ざわざわするうごめき、なんだかわかります。実存に触れるとき、人は不安にさせるほどの怪奇な気持ちを感じるのでしょうね。
Commented by maru33340 at 2010-11-13 13:41
今回のゴッホ展はいろいろな楽しみがある良い展覧会でした。
Commented by Ich at 2010-12-01 13:24 x
Ichも先日観てきました。蟹の絵をみていて、ゴッホのその時の心情が伝わってくるような感じ!ゴーギャンと共同生活を始めて、喜びできっとマルシェから新鮮な蟹を・・・。逆さまにして描くところがゴッホですねー!その向かえにあった高台から描いたブドウ畑の景色は懐かしさが蘇えってきました。人間ゴッホを垣間見れました。それにしましても、これからのEUは大変ですねー!
by maru33340 | 2010-11-11 08:33 | お勧めの本 | Trackback(1) | Comments(4)

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by maru33340
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