2010年 11月 29日
デュプレのベートーベン/チェロ・ソナタ
二重奏はいわば二つの楽器の「対話」から成り立っている音楽かと思うけれど、演奏している二人が熱心に対話するにつれ、それを聴いている自分は対話の「かやの外」にいるような疎外感に襲われ、いつもなんとなく所在無い心持ちになる。
しかし、今日デュプレの演奏するベートーベンのチェロ・ソナタを聴いていて、デュプレ渾身のチェロに肩入れし、自分自身がチェロを弾いているようで、とても心地良かったのだ。
そこで、はたと気がついたのは、そういえば独奏曲を聴いている時は独奏者の気持ちになり、オーケストラを聴いている時は指揮者の気持ちになって音楽を聴いているという事だった。
つまりは二重奏を聴いている時は「自我」が音楽の外側にあるけれど、独奏曲やオーケストラを聴いている時は「自我」が消えて音楽の内側に吸収されており、僕にとっては、「自我」が消えている時に音楽はとても気持ち良いものになっているという事だ。
これは「唯識」で考えると、自我の捕われから開放された時、僕にとって音楽は幸福な時間をもたらしてくれるという事にも繋がるのかも知れない。
http://www.youtube.com/watch?v=YSLun3TqE08&feature=related