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『叫び声』(大江健三郎著、講談社文芸文庫)

今年は大江健三郎を読もうと年頭に心に決めて、『芽むしり仔撃ち』を通勤電車で読み始めたが、その濃密な世界とサラリーマンの日常はあまりに遠く、途中で読む事をやめてしまった。

その時、僕には大江の描く小説の中の虚構の方がリアリティがあり、現実の方があまりにペラペラの書き割りのようで、心の持って行き処がないような気持ちになったのだ。

今、また彼の『叫び声』という小説を読み始めて、冒頭の文章に既に圧倒されている。

「ひとつの恐怖の時代を生きたフランスの哲学者の回想によれば、人間みなが遅すぎる救助をまちこがれている恐怖の時代には、誰かひとり遥かな救いを求めて叫び声をあげる時、それを聞く者はみな、その叫びが自分自身の声でなかったかと、わが耳を疑うということだ。」

なんと決然としてパセティックな美しい文章だろうか。
Commented by k_hankichi at 2011-02-13 18:20
大江さんの本、僕も読みかけのものがあり、でも、ぜんぜん進んでいませんでした。読み進めない理由は、なあるほど、maruさんの言うとおり確かにそうです。『叫び声』というのもなんだか、その内容を知るのが怖くなるようなところがあります。

このようなひとが書いたものを、ちゃんと読める状態になりたい。でも・・・。言い訳をいっている時間はほんとはないのですけども・・・。
Commented by maru33340 at 2011-02-13 21:09
いつかは読まなくては、直面しなくてはとは思いつつ、ついつい敵前逃亡してしまうのだが、そろそろ観念する時も近いようでありますな
by maru33340 | 2011-02-13 15:57 | お勧めの本 | Trackback | Comments(2)

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by maru33340
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