2011年 05月 19日
『キネマの神様』(原田マハ著、文春文庫)
横になりながらこの『キネマの神様』という小説を読み始めた。
原田マハという作者のことも全く知らなかったけれど読み始めてあまりに面白く、
久しぶりに一気に読了した。
3.11以来、映画や本の世界に没頭することが出来ず、この2ヶ月漫然と過ごしていた。
考えることをやめようと始めた自転車が唯一の救いかと思われた。
しかしこの本に出会って、物語には人を再生させる力があると改めて思い出した。
物語は・・・
39歳独身の歩は突然会社を辞める。
折しも趣味は映画とギャンブルという父が倒れ、多額の借金が発覚した。
ある日、父が雑誌「映友」に歩の文章を投稿したのをきっかけに歩は編集部に採用され、
ひょんなことから父の映画ブログをスタートさせることに。
“映画の神様”が壊れかけた家族を救う・・・
というもの。
こうしてストーリーだけを書いてしまうと、少しステレオタイプの感動物語のように思えて
しまうけれど、ストーリー展開の妙、登場人物の造形の確かさ、そして作中で描かれる
映画評論の面白さに惹かれてあっというまにラストまで引き込まれていく。
何より作者の(様々な人生経験に裏打ちされた末の)人間肯定の姿勢が胸を打つ。
(この人の作家デビューまでのプロフィールも凄い!)ココ⇒
この本を読んで、無性にもう一度映画館で映画を見たくなってきた。
やはり物語には、弱った心を鼓舞し、人を再び立ち上がせる力があるようだ。
友人の薦めで読み始めたらぐいぐいと引き込まれ、一気に読了してしまった。『キネマの神様』(原田マハ、文春文庫)。 以前、同氏のデビュー作『カフーを待ちわびて』を読んで、なんとまあ新鮮な感性だろうと驚いたものだったが、この『キネマの神様』は、小説としてさらにそこから何段階も上の域に高まっていると思う。登場するひとたちは、それぞれが何か心に負い目や隙間がある。そしてそれをちょっと恥じながら生きている。しかしその一人ひとりがそれぞれの人生の主人公だということが伝わってくる。 そのような人たちが「映...... more