2012年 01月 05日
村上春樹とハルキムラカミ
今から30年前、僕が就職した年のことだ。
風邪をこじらせ仕事を休み、独身寮で横になっていた僕に同期の友人が貸してくれたのが、村上春樹の『風の歌を聴け』の文庫本だった。
それまで読んだ事がなかった、全く新しい感覚と文体に魅了された。
それ以来30年間、途中に何度か、もう村上春樹を読むことはないだろうと思いながら、やはり気がつけば最新作の『1Q84』にいたるまで、ほとんどの作品を読んできた。
そんな話になると時々、「村上春樹の何処にひかれるの?」と聞かれる事がある。
これは全く困った質問で、自分でも何故30年も彼の作品を読み続けてきたのか、上手く説明する事が出来ない。
村上春樹を論じた評論も何冊か読んだけれど、残念ながら「何故僕はこんなに彼の作品にひかれるのか」という問いに対する答えには、今まで出会えなかった。
しかし昨日から読み始めた芳川泰久著『村上春樹とハルキムラカミ』(ミネルヴァ書房)という評論は、もしかするとその問いに対しての答えを見つける事が出来るかも知れないという予感を感じさせる本だった。
まだ読み始めだけれど「ふたたび」という言葉と「切断」という言葉をキーワードに彼の作品を読み解く手際は鮮やかでスリリングであり、眼から鱗が落ちるような気がする。
2012年の読み初めは、この本になりました。