2012年 05月 24日
北のバッハ
こんな時は本を読んでも、もひとつ入り込めない。
こんな時は音楽、それもバッハだと思い至り、以前購入していたミカ・ウ゛ァユリネンというフィンランドのアコーディオン奏者によるバッハを聴きはじめた。
アコーディオンによる、何とも哀愁を帯びたバッハのシャコンヌを聴いていると、北欧のひなびた港町を一人歩いているような気分になる。
曇り空の下、うつきながら歩き、ふと顔をあげると鴎が一羽、風に煽られるようにゆらゆらと飛んでいる。
ちらほらと雪が降りはじめ、コートの襟を立て急ぎ、行きつけの裏町のスタンドバーに立ち寄り、強いウイスキーをあおる。
窓の外の灰色の猫と目が合うが、挨拶を送るとふっと姿を消した。
北の国の風景には、アコーディオンによるバッハが良く似合う。