2014年 11月 27日
こわがらない
探していた茨木のり子の詩集が見つかったので、夕食後眺めていたら「こわがらない」という詩に出会った。
その詩の冒頭はこんな言葉で始まる。
一芸にたけた人は
物をこわがらない
老練の仕立屋は
おそれげもなく高価な布をザキザキ切る
突き抜けた画家は
純白の画布の前でたじろがない
鼻息まじりの落書きにみえる
すぐれた外科医のメスは
静かにすばやく暗がりのお医者さんごっこのように何気ない
フルートの名人の
無造作な第一音 霞くうほどの
魅力的な俳優は
空間をこわがらない むしろ空間が俳優に吸いこまれ
一点の火となって燃える
おそるべき慎重さは消されたように見えず
大胆不敵さばかりが
さっと波立ってみえるのだ
ちょうどセルゲイ・ハチャトリアンのバッハのシャコンヌを聴いていて、最初の一音がいかにもさりげなく始まるのを聴いていた所だったので、「ああ、なるほど」と合点がいったのだ。
叔父様のご逝去、はんきちさんのコメントへので知りました。ご冥福をお祈り申し上げます。