2015年 11月 11日
朝のマタイ
最近はこの演奏が気に入っていて、家でも繰り返し聴く。
古楽器による演奏で、テンポは早く、余計な感傷は廃したスッキリした演奏だけど、柔らかな情感に満ちたとても美しい響きが、まるで上質の陶磁器を見るような味わい。
独唱もコーラスも、イエスの受難を静かに受けとめ、声高になることなく、しかし深い共感を持って歌われる。
リヒターの峻厳、クレンペラーの孤高、レオンハルトの清潔とはまた違った、親しみがあり優しく聴くものの心に静かに寄りそうようなこの演奏は、聴き終えたとたんにもう一度聴き返したくなる魅力に満ちている。
日々の現実のなかで、何ともやりきれぬ苦い思いで胸が塞がるような夜は、この演奏に慰められ、また頭を上げて 歩き出さなくてはという気持ちになれるようだ。