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丸山健二の文章

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「日本経済新聞」に連載中の丸山健二のコラム「生きる命 十選」は毎回その硬質で息の長い文章に圧倒されながらも、はたしてこれは美術評論としてはいかがなものか、と当惑しながら読んでいる。

しかし、今日の熊谷守一「蒲公英(たんぽぽ)に母子草」について書かれた文章の後半には心打たれるものがあった。

「そしていつしか、時の力でうがたれた魂の空洞に怯え、おのれもまた消散してゆく存在のひとつにすぎないことを悟るのだが、しかし、ある日、ふと足もとに落とした目がありふれた草花を捉えた刹那、終日のらくらして過ごしながら老いの道行きに耐える余生が別に悲しいことではないとわかり、さらには、低劣で卑しい結末を迎えつつあるのでもないと理会され、結局のところ、単純で、地味なものにこそ、あらゆる疑問から救ってくれる答えが隠され、それに過ぎたるものはないことを知り、長寿と息災を素直に享受できる、悠然たる生き方に到達する。」

ここには、いつになく素直な丸山健二の述懐が披露されていると同時に、良質の熊谷守一評になっていて、少し安心するのだ。
Commented by k_hankichi at 2016-01-21 07:40
maruさん、この新聞の丸山コラムは、いつも何かこう切迫感と同時に、我々に生きる意味を詰問されているかのようで辛かったです。今日の記事、読んでみます。
Commented by およう at 2016-01-21 08:38 x
こちらの作品と丸山健二氏独特の言い回し純粋文とマッチしてますね(^_^)v 
Commented by saheizi-inokori at 2016-01-21 10:20
いいですね。
丸山健二にはご無沙汰してましたが健在でした!
Commented by maru33340 at 2016-01-22 06:48
はんきちさん
おようさん
さへいじさん
丸山健二はいつもは力が入って、叱られているような文章ですが、この文章は素直に読めました。
by maru33340 | 2016-01-21 07:05 | 未分類 | Trackback | Comments(4)

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by maru33340
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