過日、友人からもらったオイストラフとクリュイタンスによるベートーヴェンのバイオリン協奏曲(フランス国立放送管弦楽団、1958年録音)を繰り返し聴き返している。
これは本当に、深々として懐が深い堂々たる音楽で、音楽とはこうでなくては、という安心感に満ちている。
オイストラフの朗々と歌う豊穣なバイオリンに、クリュイタンス指揮によるオーケストラが優雅に寄り添う様子は、自己主張の強い、丁々発止という演奏ではなく、独奏者とオケが、お互いを信頼し、聴き手のために最上のベートーヴェンを届けようという想いが伝わってくる。
まさに大人による大人のための極上のベートーヴェン演奏がここにある。