40年前。
『白い巨塔』という稀有の傑作ドラマを残して一人の俳優が逝った。
田宮二郎、享年43歳。
僕はその時19歳。
シャープで陰影の深い彼のシルエットにひかれた。
先日、彼の最後の日々を、女優であり妻である幸子夫人の証言を元に描いたノンフィクション『田宮二郎の真相』を読了した。
苦しかった。
しかしそれ以上に苦しかったのは田宮二郎自身だっただろう。
クールな2枚目という虚像を生きながら、過剰なまでの上昇志向と自らの置かれた現実のギャップに苛まれ、次第に精神のバランスを失っていく、早すぎる晩年の日々は想像を絶する凄絶なものだった…