2019年 07月 11日
僕の「阪神タイガース詩集」
僕は京都生まれの大阪育ち。
父は熱烈な阪神タイガースファンだったから物心ついた時にはいつの間にか僕も阪神ファンになっていた。
(縦縞のユニフォームを着て眼鏡をかけた小学生の頃の写真が実家に残っている。背番号は28。当時の僕のヒーロー江夏豊の背番号だ)
そんなことを思い出したのは『文學界』(8月号)に掲載された村上春樹のもう一つの短編小説「ヤクルトスワローズ詩集」を読んだから。
これは村上春樹のヤクルトスワローズと神宮球場への偏愛に溢れたとても楽しい短編小説だった。
この小説で村上春樹が京都生まれで直ぐに阪神間にうつり18歳までそこに暮らしていたことを知った。
(おまけに彼の父親が「筋金入りの阪神ファン」だったことも)
この小説の中に甲子園球場について書かれたこんな文章がある。
「甲子園球場は誰がなんと言おうと、日本でいちばん美しい球場だ。入場券を手に握りしめ、蔦の絡まる入場口から中に入り、薄暗いコンクリートの階段を足早に上がっていく。そして外野の天然芝が目に飛び込んでくるとき、その鮮やかな緑の海を唐突に前にするとき、少年である僕の胸は音を立てて震えた。まるで一群の元気なこびとたちが、僕のささやかな肋骨の中でバンジージャンプの練習をしているみたいに」
少年の頃の僕も甲子園球場の階段を出てグランドに出た時、村上春樹のこの文章とまったく同じ気持ちになった。
(こびとのバンジージャンプはなかったけれど)
僕の父は人混みが嫌いだったから遊園地や動物園にはめったに一緒に行ったことはなかったけれど、甲子園だけは何度か一緒に訪れた。
父は普段は厳しい人だったけれど、甲子園球場でビールを旨そうに飲みながら選手のひとつひとつのプレーに喜んだりがっかりしたりしている姿はとても親しみやすく、そんな時の父を僕はとても好きだった。
久しぶりに甲子園球場に行きたくなりました。