2021年 12月 26日
嵐の夜に…
激しく吹きすさぶ風に向かって、深く降り積もった重たい雪に足を取られながら、ゆっくりと一歩一歩雪を踏みしめながら歩く全身黒ずくめの一人の年老いた男の姿があった。
よく見るとそれはあのヴァレリー・アフェナシェフの姿だった。
僕は部屋にいて彼の弾くベートーヴェンのピアノ・ソナタ31番を聴いている内に、いつの間にかその事を忘れ、嵐の中を歩くアフェナシェフの幻影を見ていたのだ。
極端に遅いテンポで弾かれる彼の重厚なベートーヴェンは、数年に一度という寒波が押し寄せる2021年の年の暮れにふさわしいような気がするのだった。
最近はバッハとベートーヴェン三昧の私です。