2010年 07月 11日 ( 1 )

『ためいき― フォン・オッター、フランス歌曲集』による幻想

先日、新国立美術館でアンリ・ルソーの「蛇遣いの女」を見て以来、頭のどこか片隅に南国の幻想がちらついている。

フォン・オッターによるフランス歌曲集のアルバムの最初に収められた、ラヴェル作曲の「ステファーヌ・マラルメの3つの詩」を聴きながら、「ああ、僕がルソーの絵の前から動けないほど引き付けられた時、音は鳴っていないと思っていたけれど、あの時、聞こえていたのはこの音楽かも知れぬ。」と感じた。

マラルメの詩は難解で僕の理解からは遠い遠い所にあるけれど、ラヴェルの音楽は、まるで武満徹の音楽のように静謐でためらいがちに響く。

あたりは、官能の香に満ち、いたる所に未知の南洋の植物が生い茂る。

「空は、淡く透明な十月色に染まり
限りなきそのけだるさを、
大きな池に映し
死に行く木の葉が水面で
風に舞い、冷たい螺旋を描き、
黄色い陽の光が長い尾を引く。」

フォン・オッターの声は柔らかく静かに心の襞に染み込み、いつのまにかあたりはしっとりと潤い、室内楽伴奏はひかえめに沈黙の歌を奏でる…

気がつけば、すぐそこに蛇遣いの女がいて、低い音で笛を吹いているのだった…
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by maru33340 | 2010-07-11 23:33 | お勧めの本 | Trackback | Comments(3)

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