新・クラシック音楽と本さえあれば

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2018年 05月 31日

ホロヴィッツの弾くスカルラッティは

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久しぶりにホロヴィッツの弾くスカルラッティのソナタを聴く。

学生の頃はその魅力に気づかなかったスカルラッティやラモーの音楽の面白さに目覚めたのは10年程前のこと。
確か小川洋子さんの小説『やさしい訴え』で語られていたラモーの音楽に興味を持ったから。

一見軽やかなその音楽に潜むどこか不穏で深い湖の底を覗きこむような深淵がふいに現れるのを感じてから、折に触れてその音楽を聴くようになった。

それはホロヴィッツがスカルラッティの音楽について語ったこんな言葉からも感じることが出来る。

「この音楽は、宮廷的なものから粗野なものまで、甘い優美さから苦い厳しさまでを含んでいる。その陽気さは、一抹の悲劇的な気分の低流のために一層激しいものになる。瞑想的なメランコリーを打ち破って、時折オペラ的な情熱の外交的な気分が押し出してくる」

スカルラッティの音楽の複雑な味わいをとても良く表現した言葉だし、彼の弾くスカルラッティはまさに上の言葉を体現しているようです。
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by maru33340 | 2018-05-31 06:59 | お勧めの本 | Trackback | Comments(3)
2018年 05月 27日

驚くべき「ダフニスとクロエ」

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最近クリュイタンス指揮によるラヴェルの「ダフニスとクロエ」全曲を聴き、組曲ではない全曲版を聴く喜びに目覚め、フランスの指揮者フランソワ=グザヴィエ・ロト指揮レ・シエクルによる新しい演奏を聴く。

これは驚くべき演奏だった。

冒頭極めて微かな響きの中、フルートによる旋律が聴こえ、遥か彼方から合唱の声が聴こえてくる瞬間身体は遠い古代に連れ去られる。
その幻想的なこと。(録音も素晴らしい)

初演時の楽器による演奏は透明な空気感を持つと共に、力に満ちた激しい推進力も備えて、まるで初めてこの曲が演奏される瞬間に立ち会っているような新鮮な喜びを感じる。

しばらくフランソワ=グザヴィエ・ロト(発音しにくい)という指揮者の演奏を追いかけることになりそうです。
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by maru33340 | 2018-05-27 07:33 | お勧めの本 | Trackback | Comments(4)
2018年 05月 22日

バッハに目覚めた頃

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先日CDを積み上げた棚が崩れた時にマレイ・ペライアの演奏するバッハのパルティータを収めたアルバムも久しぶりに見つかった。

学生の頃バッハの音楽の良さをあまりわかっていなかった僕が、初めて雷に打たれるように突然バッハが好きになったのは、10年程前銀座の山野楽器の視聴機でこのペライアによるバッハのアルバムを聴いてからだった。

最初の音が響き始めた瞬間周りの物音が消え、それまでどこか取っ付きにくい存在だったバッハの音楽が乾いた砂に水が沁みこむように僕の心に沁み渡った。

ペライアのバッハはたっぷりと豊かで柔らかく美しい歌に満ちていていわゆるバッハのイメーとは違うけれど、当時の僕にはそこが良かった。

この演奏でバッハに目覚めた僕は、以来バッハを終生の友として生きようと思ったのでした。
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by maru33340 | 2018-05-22 05:35 | お勧めの本 | Trackback | Comments(4)
2018年 05月 20日

大人のためのラヴェル

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このところラヴェルの音楽にはまり朝晩聴いている。

昨夜ふとラヴェルのピアノ協奏曲も聴きたいと思い「そういえばサンソン・フランソワがピアノを弾いている演奏を持っていたはず」と棚や隠し部屋の山を捜索しても見つからず諦めかけていた時にアンドレ・クリュイタンス指揮パリ音楽院管弦楽団によるラヴェル管弦楽曲全集を見つけた。
「そういえばこれも名演だったなあ」とジャケットの裏を見たら(なんと)そこにフランソワによるピアノ協奏曲も含まれていた。

狐につままれたような気持ちでピアノ協奏曲を聴き始めながら、それがあまりに独特な名演だったことを思い出しグイグイ引き込まれていった。

オーケストラによる生気に満ちた冒頭部分にフランソワのピアノが入ってくる瞬間は、ざわざわしたパリの下町の酒場に、長身長髪でひどく色気のある男がふらりと入ってくる姿を店の他の客が息を飲んで見つめている映画のワンシーンを見ているよう。

そこからは彼の独壇場だ。

激しい憧れ、突然の狂気、孤独と鎮静、そして変転してやまない遊び心…

クリュイタンスのニュアンスに満ちた指揮によるパリ管弦楽団のキラキラした音楽の上を、フランソワはスウィングしながら自由自在に飛び回る。

クラシックやジャズの区別はここにはない。
ここには心の底から歌われた本物の音楽だけがあるのだ。

ただあまりに独特で強烈な毒を持った演奏であるが故に、これを聴いてしまうと他のどんな演奏でも満足出来なくなってしまうのが唯一にして最大の問題ではあるけれど…
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by maru33340 | 2018-05-20 06:58 | お勧めの本 | Trackback | Comments(4)
2018年 05月 19日

目には青葉 山ほととぎす 初鰹

昨夜から吹いていた強い風は収まり雨もやんだよう。

少し窓を開ければひんやりとした空気の中、鶯や雀の鳴き声に交じり、ふいに「テッペンカケタカ」という一際高い鳥の鳴き声が聞こえた。

この鳴き声は何だったかとしばし考えホトトギスだったと思い出した。

「目には青葉 山ほととぎす 初鰹」
(山口素堂)

という俳句があるようにホトトギスは初夏を象徴する鳥だったことを久しぶりに思い出しながらも、先日食べた旨い鰹のことが頭に浮かび「今夜は鰹をつまみながらハイボールを飲もう」と(朝から)心に決めた。
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by maru33340 | 2018-05-19 07:27 | お勧めの本 | Trackback | Comments(4)
2018年 05月 17日

ラヴェルの弦楽四重奏曲あれこれ

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最近再びラヴェルの弦楽四重奏曲にはまっていていくつかの演奏を聴き比べている。

パレナン、イタリア、ブダペスト…
「どれが一番好きか」と聞かれても「いずれの地もそれぞれ」と『ローマの休日』のオードリー・ヘップバーンのように答えるしかないほど、その味わいは違えどもそれぞれ楽しめる。

学生時代から長く聴いてきたパレナン弦楽四重奏団の演奏は、今聴くとそのポルタメントの使い方など少し一時代前の演奏かなぁと思うけれど、逆にそれがセピア色の写真を眺めるようなノスタルジーを感じさせてくれる。
全体から立ち上る陽炎のような香りはこの団体独特のものでうっとりしてしまう。

イタリア弦楽四重奏団の演奏は何よりその艶やかな音色と歌心が楽しく、音楽を聴くことの喜びを心から感じることが出来る。

そして最近坂本龍一の番組で知り最近入手したブダペスト弦楽四重奏団の演奏は、個性的な四人のロシア人が丁々発止のやり取りを繰り広げて緊張感に満ち、パレナン、イタリアとは全く違う曲のように聴こえる。
しかし、随所にふいに滴るようなポルタメントが聴こえ「そうかこの演奏には苦いだけじゃなく甘味もあったのだ」と思い出すあたりの味わいが楽しい。

最近入手した変わり種はオルランド木管五重奏団による演奏。
フルート、オーボエ、クラリネット、バスーン、ホルンによるラヴェル弦楽四重奏曲は、聴き返す度に随所に新鮮な発見があり、限りなく面白い。
木管楽器の特性からシャープな鋭さという点ではさすがに弦楽四重奏団による演奏にはかなわないけれど、その優しい味わいは聴けば聴くほど気持ち良く癖になってくる。
アレンジの天才だったラヴェルもこの編曲と演奏にはきっと満足するだろうなあ。
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by maru33340 | 2018-05-17 05:50 | お勧めの本 | Trackback | Comments(2)
2018年 05月 11日

「フーガの技法」を聴く夢

こんな夢を見た。

新幹線に乗っていると乗務員が慌てた様子で「お客さまの中に「フーガの技法」を聴いている方はいらっしゃいませんか?いらっしゃいませんか?」と乗客に呼びかけている。

「そんな人は普通は電車の中にはいないだろうなあ」と思いながら、ふと自分が今ウォークマンで聴いているのがまさにバッハの「フーガの技法」だったことに気がついた。

思わす立ち上がり「あの、今私は「フーガの技法」を聴いていますが…」と声をかけると乗務員は「直ぐにこちらにいらしてください」と僕の手を引くようにして運転席の方に僕を連れていく。

そこにはぐったりした運転手が目を閉じて運転席に座っていた。
乗務員が運転手に「佐藤さん、佐藤さん、大丈夫ですか?「フーガの技法」聴いている人がいましたよ」と語りかけると運転手はふいに目を開き「聴かせてください」と僕に言うのでウォークマンを手渡した。

しばらく「フーガの技法」を聴いていた運転手は「もう大丈夫です。ありがとう」と言いながら僕にウォークマンを返し、何事もなかったかのように運転を始めた。

席に戻った僕は「「フーガの技法」がたくさんの人の命を救ったのかも知れない」とぼんやりと思った。
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by maru33340 | 2018-05-11 08:43 | お勧めの本 | Trackback | Comments(4)
2018年 05月 08日

Valse triste

ほんとうにほんの少し前までご一緒に仕事をさせていただいていた会社の尊敬する大先輩であり、大学の先輩でもあった方の急逝の知らせを受け呆然として何も手につかず3日間を過ごしました。

真摯に仕事に向き合いながらも病と闘い、プライベートも家族も大切に生きられたその人生の最後の数年間を共に過ごしながら、もっと教えてもらわなければならないことがたくさんあったのではないかと深く自戒しても時は戻りません。

残されたものがなすべきことは、出来ることは何なのかと自問することしか今出来ることはなく…

せめて追悼の思いを込めてシベリウスの「Valse triste」を聴きそのご逝去を悼みたいと思います。
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by maru33340 | 2018-05-08 20:32 | お勧めの本 | Trackback | Comments(2)
2018年 05月 05日

編集者坂本一亀のこと

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先日NHKの「ファミリーヒストリー」で坂本龍一の父である編集者の坂本一亀の事を知り、彼の事を持っと知りたいと思って河出文庫の新刊『伝説の編集者 坂本一亀とその時代』(田邊園子著)を一気に読んだ。

面白かった。

敗戦後すぐという熱い(熱すぎる)時代の中、野間宏や椎名麟三、三島由紀夫、高橋和巳等らを見いだし、作家を激励し、威嚇し、叱咤しながら何度も書き直させ厳しく原稿を督促する坂本の激しさは、恐らく今では通用しないだろう。

河出書房新社で坂本の部下だった著者の田邊園子は坂本について「彼は私心のない純朴な人柄であり、野放図であったが、繊細であり、几帳面であり、潔癖であった」と語りながらも、そのあまりの頑迷な仕事ぶりに「坂本一亀を押し入れに閉じ込めて外から心張り棒をかいたい、と何度か思った」と書いている。

1921年生まれで戦争体験のある坂本は「僕にとって戦後は余命だった。もう戦争で死んだという感じがあって、戦後は余命にすぎなかった。でも、多くの同世代の仲間が死んで、その余命は彼らのためにもがんばらねばならないと思った。それで河出に入って同世代の若者を育てたいと思った」と語っている。

時代は大きく変わってしまったけれど、今は失われてしまった熱量に圧倒されながら読了した。
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by maru33340 | 2018-05-05 21:36 | お勧めの本 | Trackback | Comments(4)
2018年 05月 02日

ブダペスト弦楽四重奏団のドビュッシー・ラヴェル

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先日見た、NHKの「ファミリーヒストリー」という番組で坂本龍一を取り上げていて、彼が音楽家になるきっかけはブダペスト弦楽四重奏団の演奏するドビュッシー・ラヴェルの弦楽四重奏曲のアルバムを聴いたからだと知った。

ブダペスト弦楽四重奏団はベートーヴェンの弦楽四重奏曲のイメージが強いから「え、ドビュッシー・ラヴェルのアルバムがあったのか!」と驚き彼らが1957年に録音したドビュッシーとラヴェルの弦楽四重奏曲を収録したCDを入手した。

これは大変な名盤だった。

ドビュッシーは緊迫感のある密度の濃い演奏でムードに流されない構成力が素晴らしく、ラヴェルもまた知的で清潔でありながら艶やかな美しさに満ちている。

ブダペスト弦楽四重奏団は1917年から1969年にわたる(弦楽四重奏団としては異例とも言える)52年という長い期間にわたり活動した。

その理由の一端がライナーノーツに書かれていた。

彼らはリハーサルと公演を除いては個人に徹して別々に暮らしたから、演奏旅行に出る際でも同じ車に乗らなかった。
彼ら四人のお気に入りのマンハッタンのロシアン・ティールームで食事するときでも、めいめい別のテーブルに座った。
メンバーの1人いわく「われわれはリハーサルの時何でも話し合う―政治、人間性、世界情勢に至るまで、反面、われわれにはできるだけ離れていることが大切だ。それによって、われわれはまったく別個のパーソナリティを維持できるからだ。ホモジーニティー(同質・均質)とは音楽でもっとも悪いことだ」

この言葉には、彼らが長い活動期間を保った理由があると共に、そのベートーヴェン弦楽四重奏曲の演奏に聴くことができる、神秘的で高貴な精神性の秘密もまた垣間見ることができるようだ。
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by maru33340 | 2018-05-02 20:23 | お勧めの本 | Trackback | Comments(7)