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ショーケンからイブ・モンタンへ

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萩原健一の映画『約束』を撮った映画監督斎藤耕一は「日本のクロード・ルルーシュ」といわれていたこともあるそうで、確かにこの映画はそのセピア色の映像が古いフランス映画を思わせるし、岸惠子にはどこかジャンヌ・モローの面影がある。

では萩原健一は誰に似ているかと、あれこれ考えていてふとイブ・モンタンの名前を思い出した。

イタリア出身でエディット・ピアフに見いだされシャンソン歌手として有名になり、一時は彼女の恋人でもあったイブ・モンタンは映画俳優として数々のフランス映画に出演。
女優のシモーヌ・シニョレと結婚し、彼女が亡くなるまで34年添い遂げたけれど、マリリン・モンローら多くの女性と浮き名を流し、1985年64歳の時には38歳年下の女性と結婚して一児をもうけ1991年に70歳で亡くなる…

今風のイケメンという感じではないけど、どこか拗ねた子どもがそのまま大人になったような色気がある所がなんとなくショーケンを思わせるのかも知れない。

少しイブ・モンタンの歌うシャンソンが聴きたくなってきました。
by maru33340 | 2019-03-31 20:56 | お勧めの本 | Trackback | Comments(5)

またひとつ昭和が去って…

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昨夜。
萩原健一さんの訃報に接し言葉を失う。
68歳の若すぎる死だった。

役者として数多くの出演作品があるけれど、僕が特に印象深い作品は2つ。

ひとつは、1972年の映画『約束』。
岸惠子主演の映画で役者萩原健一の出世作と言われている。
ヨーロッパ映画を思わせる渋い映画で、決して華やかな作品ではないけれど、暗い過去を持つ謎めいた女性を演じる岸惠子の品のある美しさと共に、萩原健一演じる若い男の一見軽薄な外見の中にある一途な純粋さが心に残る佳作だった。

もうひとつは2016年のテレビドラマ『鴨川食堂』での演技。
元刑事で今は京都鴨川沿いの小さな食堂の主人(実は娘の受けた依頼により思い出の食探しも引き受ける)を、渋く飄々と演じていてとても良い味わいを出していた。
(この時既に彼は闘病中だったと初めて知り、信じられない思いだけれど…)

何度も事件を起こしその言動で世間を騒がせることも多かったけれど、2011年に3度めの結婚をした時に語った「ジェットコースターのような人生だったけども、後は2人でメリーゴーラウンドのようなゆっくりした人生を歩みたい」という言葉が忘れられない。

またひとつ昭和が遠くなった思いです。

by maru33340 | 2019-03-29 06:16 | お勧めの本 | Trackback | Comments(6)

Ich habe genug

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少し仕事で忙しい日々が続き、この何日か集中して音楽を聴くことが出来なかったけど、今朝は朝早く目覚めたので、久しぶりにバッハのバス独唱のためのカンタータBWV82「 Ich habe genug( 我は満ち足れり)」を聴く。
演奏はフィリップ・ヘレヴェッヘ指揮コレギウム・ヴォカーレ、バスはペーター・コーイ。
(1991年録音)

バッハのカンタータの中でも屈指の名曲として有名なこの曲は、冒頭のオーボエの響きが美しく、幼子キリストに出会い「もうこれで満足してこの世から去ることが出来る」と語る老人の安らかな心境が心に深く沁みる。

今は各地から桜の便りが届き始めたけれど、ここ数年桜の散る季節にはらはらと舞う花びら下を歩きながら「ああ、今自分は生きているなあ」という悦びと一抹の哀愁に満たされる時、このバッハのカンタータのオーボエの旋律が聴こえるような気がします。
by maru33340 | 2019-03-28 06:56 | お勧めの本 | Trackback | Comments(2)

クリント・イーストウッドの新たな名作『運び屋』

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今日は冬のような寒さ。
咲き始めたばかりの桜も身を縮めているよう。

そんな日だったけれど、朝からクリント・イーストウッド監督・主演による映画『運び屋』を観に出かけた。

これは見終わってとても気持ちの良くなる素敵な映画だった。

物語は…

90歳になろうとするアール・ストーン(クリント・イーストウッド)は金もなく、ないがしろにした家族からも見放され、孤独な日々を送っていた。ある日、男から「車の運転さえすれば金をやる」と話を持ちかけられる。なんなく仕事をこなすが、それはメキシコ犯罪組織によるドラッグの運び屋。気ままな安全運転で大量のドラッグを運び出すが、麻薬取締局の捜査官の手が迫る…

物語から想像するような重たい映画ではなく、どこか軽やかな飄々としたユーモアとペーソスが漂うのは、やはりイーストウッドの演技のたまもの。

危険な仕事をしながらも、車を運転しながら鼻歌混じりでアメリカのポップスを歌うイーストウッドは人生を楽しんでいるように見え、男の艶やかさも失っていない。

ラストシーンも、泣かせようと力を入れず淡々と運命を受け入れるイーストウッドの姿がとても良く、歳を重ねるのも悪くないなあと思わせてくれる。

名作『グラン・トリノ』から10年。
88歳のクリント・イーストウッド、まだまだ現役ですね。

by maru33340 | 2019-03-23 15:39 | お勧めの本 | Trackback | Comments(4)

グルダのバッハは

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CDを整理していてフリードリッヒ・グルダの弾くバッハの「平均律クラヴィーア曲集(第一巻)」を見つけた。

長く探していたアルバムだったので片付けの手を止めて聴き始め「いかにもグルダらしい演奏だなあ」と思いながら、ふと「では、グルダらしいとはどういうことなのか?」と考えはじめてしまった。

そして、こんな時は吉田秀和さんの言葉が頼りになるはずと文庫本の『バッハ』を眺めたら、このアルバムについての文章があり、グルダの演奏の特徴についてこんな風に書かれていた。

「彼は、自分の演奏に対し、いつもある距離をおいて眺めることの出来る冷静さ、それも、単に客観的なというだけでなく、アイロニカルな―つまり、二重の眼でもってものごとを評価できる、そういう知性と感情のタイプの持ち主である」

なるほど、グルダの演奏を聴いているといつも頭の風通しが良くなるような気がするのは、グルダの演奏のそうした特徴から来るのかと、はたと気がついたのでした。
by maru33340 | 2019-03-22 07:23 | お勧めの本 | Trackback | Comments(3)

一つの区切りの証として

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四月の還暦、定年を機に「何か自分が生きてきた証のようなものを形に残したい」という気持ちが日に日に高まり、ブログ等に書いた文章(書評や音楽、映画の感想など)を本の形にまとめようと思いたちました。

幸いアートハウスのカタログを一緒に作ってきた印刷屋さんも協力してくれ、周りの人も「それは是非やるべき!」と後押ししてくれ気持ちが固まりました。

母にそのことを報告したら「何より本が好きだったお父さんも喜んでくれることでしょう」と返事がきて、少し胸が熱くなった。

今日は雨の休日。

終日、出来上がってきた原稿のゲラ刷りに赤を入れながら過ごしたいと思います。
by maru33340 | 2019-03-21 09:48 | お勧めの本 | Trackback | Comments(4)

フランスからの声が

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若くして亡くなった母方の伯父さんはシャンソンが好きで、奥さんと一緒に先生について歌っていたという。

その伯父さんの兄は高名な競馬評論家だったこともあり、彼も何となく遊び人風の少し不思議な雰囲気を持った人だった。

彼がカセットテープに残したシャンソンの名曲「パダン パダン」を聴いたことがあり、その軽妙な歌いっぷりにちょっと感心した。
彼はその歌について前説も語っていて「「パダン パダン」いう言葉は運命を表しているけど、私にはこの音は心臓の鼓動の音のように聴こえるんです」などと話している。

今朝、アンネ・ゾフィー・フォン・オッターによる『優しきフランス』というフランス歌曲とシャンソンを収めた2枚組のアルバムでその「パダン パダン」を聴いて、久しぶりに伯父さんのことを思い出した。

そして、60歳を迎える4月に何か新しい勉強を始めたいと思っていた所だったから、ふと「フランス語の勉強を始めようかな」と思った。
伯父さんみたいにシャンソンまでは歌わないけど。
by maru33340 | 2019-03-20 07:27 | お勧めの本 | Trackback | Comments(4)

わすれなぐさのはなし

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昨夜。

東京出張の帰りに、銀座一丁目のGalerie SOLで昨日から始まった中根秀夫さんの個展「うつくしいくにのはなしⅡ」を見に行く。

深い青色が印象的なわすれなぐさの写真21点と絵画9点が展示された空間には清潔で透明な光が射し込むようで、周囲の喧騒を忘れてしまう。

写真の中の美しい花を見ていると、微かな哀しみが降り積もるようで心がしんと静まってくる。

部屋の一角に飾られた震災後の福島の風景の写真は、息を飲むように美しいけれど、左に写る瓦礫を集める施設を見るとまだあの震災の傷痕は癒えてはいないのだと気づく。

ギャラリーを出て少し夜の銀座の街を歩きながら、ふと「わすれなぐさの持つはかなさと静けさが、このくにの未来のための小さな希望になれば良いなあ」などと考えていたのでした。
by maru33340 | 2019-03-19 06:30 | お勧めの本 | Trackback | Comments(2)

「感ビジネス」とは何か?

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僕は大学では経済学部に所属していたけれど、経済学という学問との相性が誠によくなくて、なんとか及第ギリギリの成績で卒業した。

以来、会社員生活を(これまたなんとか青息吐息で)続けてきて間もなく卒業という所までたどり着いたけど、まさか定年まで辞めずにサラリーマンを続けるとは思わなかった。

そんな訳でいわゆるビジネス書と呼ばれるような本は(恥ずかしながら)数える程しか読んでこなかった。

だから本屋さんで、松岡正剛さんの「千夜千冊」を再編集した文庫本の新刊『感ビジネス』を見た時は「まあ今回はパスしようかな」と思ったけど「感ビジネス」という言葉にひかれて入手し、何気なく「あとがき」を読んでいたら「本書のタイトルに選んだ「感ビジネス」という言葉は、資生堂の福原義春さんと話しているときに思いついた」と書いてあり驚いてしまった。

また、この本には福原さんの『猫と小石とディアギレフ』という本の書評も掲載されていて、その中にこんな言葉があった。

「資生堂のような文化遺伝子を継承発信しつづけている日本企業があることが、日本の誇りと香りであってほしい。(中略)企業の営業成績や自己資本比率や株価なんてものは、まあ三十年くらいの単位で見ればいい。二十世紀後半からの企業の価値は五十年単位くらいで見ればいい。企業を語るときはその文化をこそ知りたい。それでいけば資生堂は日本の近現代史では十指に入る企業文化の体現者だったということになる」

この松岡さんの言葉を読んで、経済学の劣等生だった僕が、社会人としてのキャリアの後半戦に、資生堂の文化の(ささやかな)語り部としての仕事に出会えたのはとても幸せなことだったなあと思えたのでした。
by maru33340 | 2019-03-17 19:50 | お勧めの本 | Trackback | Comments(4)

「山本直純がやってきた」

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先日から聴き続けているジョージ・セル指揮によるウィンナ・ワルツ集には、ヨハン・シュトラウス2世による「常動曲」が収められている。

毎年恒例のニューイヤーコンサートでもお馴染みのこの曲は、また(ある程度以上の年齢の方にはお馴染みの)山本直純司会・指揮による番組『オーケストラがやってきた』のテーマ曲としても有名だから、あのサビの部分に来ると山本直純がダミ声で歌う「オーケストラがやってきた~」という声が聞こえてきてしまい、何となく彼の赤いジャケットを思い出していた。

そして今夜、彼を取り上げた『山本直純 音楽の底辺を広げた男』という2時間のドキュメンタリー番組があると偶然知り、見終わった僕は山本直純という人のことを何も知らなかったなあとため息をついた。

若くから天才の名をほしいままにし、小澤征爾や岩城宏之と深い友情で結ばれ、海外のオーケストラを指揮することを夢見た彼は、視力の低下によりその夢を諦めざるを得なくなる。

海外に向かう小澤征爾に彼は「お前はピラミッドの頂点を行け。俺は音楽の底辺を広げる」と語ったという。

その後の彼は、時には自ら道化となることも厭わず「男はつらいよ」などの数々の映画音楽や童謡の作曲も手がけ、クラシック音楽の普及に生涯を捧げた。

69歳という若すぎる最後は悲しいけれど、(山本直純に風貌がそっくりな)二人の息子さんが、父の後を継ぎ音楽家となっていると知り、自分のことのように嬉しくなったのでした。
by maru33340 | 2019-03-16 21:29 | お勧めの本 | Trackback | Comments(4)

音楽・本・映画などについての私的な感想


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