冷たい雨の降る日曜日。
週に1回は街に出て映画や展覧会に足を運ぶという習慣を続けることが難しくなってきてしまった。
政府は2月24日に新型コロナウイルスの流行について「これから1~2週間が瀬戸際」と発表したけれど、3月9日の「瀬戸際」を前に「今が正念場」と表現を変えた。2週間後には「今は我慢の時」と語るのだろうか…
多くの美術館は臨時休館となり、演奏会はほぼ中止か延期。
映画館にも臨時休館する所が出てきた。
それでも自宅近く映画館はまだ営業しているので、以前予告編を見てこれは必ず見たいと思っていた映画《ジュディ 虹の彼方に》を見に行った。
☆☆☆
1939年の映画《オズの魔法使い》に17歳でデビューし一躍スターとなったジュディ・ガーランドはその後1955年の映画《スター誕生》でアカデミー賞主演女優賞に選ばれる。
しかし、その栄光の影で体型をスリムに保つために映画会社から与えられた薬の影響で不眠症と不安神経症に悩まされる。
この映画は、何度かの結婚に失敗し、仕事を求め47歳の若さで早世する半年前の1967年ロンドンに渡った(心身共にボロボロになった)ジュディ・ガーランドの姿を容赦なく(しかし最大の愛を込めて)描く。
☆☆☆
ジュディを演じ今年のアカデミー賞最優秀主演女優賞を受賞したレニー・ゼルウィガーは(あの《ブリジット・ジョーンズの日記》での若々しくはち切れんばかりの姿とは売って代わり)、ガリガリに痩せた47歳とは思えないほど老いたジュディの孤独を身体全体で残酷なまでに表現する。
正直前半は見ていてとても辛かった。
けれども、一度彼女がステージに立ち歌い始めると次第に生気を帯び観客を引き込んでいく姿に鳥肌が立ち心奪われてしまう。
そして、ロンドンでの最後のステージであの名曲「虹の彼方に」を歌うラストシーンで、僕は涙が止まらずスクリーンが見えなくなってしまった。
ジュディの人生はその華やかな栄光とは裏腹に決して成功したものとは言えないだろう。
しかし、この映画はすべてを失ったように見えるジュディの人生に微かな光が射し込むような奇跡の時を描くことに成功している。
ほんとうに未来が見えなくなっているこんな時代だからこそ尚更、この映画のラストで描かれる「希望」が一際眩しく見える。
3月7日に封切られたばかりのアカデミー主演女優賞を受賞したこの映画だけど、僕が見た時は観客は10名程度だった。
やむを得ないことだけど、今この時だからこそ(もちろん万全の備えをして)是非劇場で見て欲しい映画でした。